第267話かわいい天使のお店
「桃山氏……どう思う?」
「うむ……いい仕事でござる」
とある売店の店舗前で僕ら二人は数体のキューピッドと一緒にとあるヴァルキリー達を眺めていた。
白く統一された店員さん衣装一式を身に着けたヴァルキリーは非常に美しい仕上がりに満足そうである。
実際完成度がとても高い。
ヴァルキリー達の数は多く、クオリティを落とすことなくその制服をこれほど迅速に人数分量産できたのは城の設備あってこそだった。
しかし完成版をアイテムとして登録、量産が効率的極まりない。
その結果出来上がったのが、みんなでバッチリ制服完全装備の素敵な天使のお店だった。
その上付与できる効果は大幅に増えているんだからまさしくアイテム生産工場である。
「制服にはうってつけでござるな。というかこれ……モンスターに専用装備を作るためにあるんじゃないでござるか? それこそ……ドロップ品みたいな」
「……その可能性、全然あるね」
さしずめドロップアイテム製造機能ってところか。
……まぁ元の役割が何であれ、使い勝手がいいことに間違いはない。
そしてプロの仕事の衣装がズラリと並ぶと一気に店舗としてのクオリティが上がる、その一点が重要である。
「やっぱり店員とわかる服装を揃えると、一気に店感出るなぁ」
「そうでござるなぁ。でもヴァルキリーってしゃべれないんでござろう? 大丈夫なんでござるか?」
「とりあえずキューピッドと一緒にやってもらってるんだけど……」
「……仲悪かったんじゃ?」
「……そこは、まぁ、ギリギリOKってかんじ? レベル上げ上手くいってから少しはマシになったかな?」
「中々脳筋でござるな、天使型モンスター……」
「とにかく僕らが出会った中だと、しゃべる方がモンスターとしては珍しいんだよ。性格は若干ヴァルキリーの方が大人っぽいんだけどねー……たぶん」
「そうでござるなぁ……」
問題はあるけど、仲良く一緒にが一番だと思うんだ。
キューピットほど感情的なわけではないが、ヴァルキリーも感情がなくはなく、店員がまったく出来ない訳でもない。
全くコミュニケーションができない訳でもないようで、身振り手振りでもそこそこ意思疎通は可能だ。
だがまぁ客がどの程度来るかもわからないのにそんなこと気にしすぎてもしょうがない。
そんなことより、今は新制服を存分に愛でるべきだろう。
白いパンツとジャケットは、背丈の高いヴァルキリーによく似合う。
それに合わせる白い革靴や、手袋なんかのこまごまとしたアイテムも上品で、ヴァルキリーだとは言っていないのに、純白の色合いをチョイスしてくる辺りあの店員さんは、いい目をお持ちの様である。
「よし! じゃあ、頑張ってもらおうかな!」
準備はできた! そう思ったのも束の間の事だった。
不満の声を上げたのはコミュニケーションでは上、キューピット達である。
「こいつらだけ新しい服はおーぼーでち!」
「ボクらにもなんかよこすでち!」
「えぇ? 欲しい?」
「当然でち!」
「こいつらだけずるいでち! お店の顔はボクらでち!」
「これこれ、こいつらとか言わないの。 仲良くね? 仲良く」
得意のトークでストレートに要望を伝えてくるこいつらは情け容赦ないな。
だが僕は、ちらりと見たヴァルキリーズが腕を組み、どこか勝ち誇った笑みを浮かべているところを見てしまった。
「うーむ……さっそくか」
「問題ありそうでござるなぁ」
「みたいだねぇ。どうしたもんか……」
最初だし、なるべくもめごとの芽は少ない方がいい。
僕はため息を吐くと、肩を落として今回は譲歩することにした。
「……すまん桃山氏。こいつらにも新品のエプロンとかお願いできる?」
「そうでござるな……5分待つでござるよ。いい生地があるんでござる」
「……桃山君も最近は腕上がって来てるよね?」
本当に申し訳ないやらありがたいやら。
最初から躓いてしまったが、クオリティ自体は上がることになるだろう。
桃山くんばかりに作業させるのもアレなので、僕からも城の設備を使って、特製ファイアーボール缶バッジでも作ってあげようかな?
ちょっとステッカーがかっこよかったから、自分でも何か作ってみたくなったのは内緒である。
先行き不安だけど、天使の売店全店開店の準備完了は近い。客もいないのにね。
せっかくだから、ぱっちり着飾ったキューピッツとヴァルキリーズの画像を添えて、例の店員さんにお礼と一緒に送っておいてあげようかな? なんて考えつつ僕はステッカーのデザインを流用して缶バッジ製造を開始した。




