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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第263話ダンジョン食材の可能性

 僕らは手短な階層にあるセーフルームに移動した。


 聞いていた通りそこにはキッチンが設置してあって、本当でよかったと安堵した一方、真新しいキッチンはかなりの存在感があった。


「めっちゃピカピカだなぁ」


 言ってしまえばちょっと浮き気味ではあったが、インパクト抜群なキッチンを見て月読さんは本日のサプライズ第二段を喰らっていた。


「……キッチンが出来てる! なぜ?」


「なぜなんだろうねぇ……」


 訳が分からないと月読さんが訴えていたけど、水回りはトイレの応用。


 そしてクオリティの高さは様々な試行錯誤の末、浦島工務店の企業努力のなせる業である。


「まぁそういうこともあるよ。進歩は日進月歩だし?」


「……なんにも疑問に思わないの?」


「疑問に思わないことはないけど?」


 いよいよ困惑交じりに訊ねられてしまったが、すべてはダンジョンの仕様内という話である。


「ダンジョンならしかたなくない? キッチンが出来たくらい便利なだけだよ」


「……うーん。否定はできないけど、それでいいの?」


「いいのでは? どうせダンジョンには潜るんだし? まぁ、ちょっと待っていてよ」


 ああ……何だか月読さんとの会話は懐かしささえ感じるね。


 こういう感覚が常識を取り戻すという事なのかもしれないなと僕はしみじみ感傷的な気分を噛みしめた。


 ただし納得がいかずともキッチンはそこにあるのだから便利に使わせていただこう。


 料理に関しては例外なくうまいと言わせたこの手腕、信用していただきたい。


「よし! やりますか!」


『サポートしよう』


 では攻略君も、よろしくお願いします。


 ちなみに店舗で販売している素材はすでに毒抜きは済ませているので安心して欲しい。


 今日のメニューは天ぷらだ。


 まず粉を混ぜて衣の準備。


 用意する素材はダンジョンで育つニンジンと歩きキノコ、そして巨大エビ型モンスターの剥き身で行ってみよう。


 持って来た調理器具一式をキッチンに準備して油を温める。


 そして手早く混ぜた衣に素材をくぐらせると、油に投入した。


 てんぷらは温度管理が命! キッチンでなければ手を出す気にはならないね。


 僕は油の跳ねるカラカラという音を聴きつつ、慎重にその瞬間を見極め―――。


『「……ここ!」』


 そして上げる!


 油をきりつつ、温かいうちに提供する。


 様々なコツは数あるだろうが、なにより食べるタイミングこそ一番天ぷらをうまく食べるコツではないだろうか?


「さぁ食べて!」


「……天ぷらだぁ」


「いや、コレテンプラだわ。すげぇなてん……ワタヌキ君」


 月読さんは若干考えるのをやめて子供っぽいコメントを残し。


 松林君は普通に驚いている。


 後は食べてもらうだけなんだけど、こうして料理を目の前で振舞うとちょっと気負いが入ってしまうよね。


 ダンジョン直送料理に、月読さんも松林君も戦慄を覚えているようだったが、揚げたての揚げ物の魔力に勝てる奴なんてそういないのである。


「まずは毒見を兼ねて……」


 僕はすさまじい大きさの化け物エビの天ぷらを手に取ると、ザクリと衣に歯を立てた。


 サクサクした食感の中には、今まで体験したことがないほどのブリンとした弾力が隠されていて、噛めば噛むほどに甘みが舌の上に広がって行く。


 僕はホゥ……っと熱を帯びた溜息を一つ零した。


「……うまい」


「「じゅるり」」


 そしてうまい物を前にした時の人間の反応なんておおよそ決まっていた。


 あふれ出た唾液に促されるように二人は目の前に用意された自分の天ぷらに手を伸ばす。


 まず最初に松林君は豪快にがぶりと、そして月読さんは上品に少しだけてんぷらに口を付け、表情が変わった。


「なんだこりゃ! うまっ! つうかこんなでかいエビ初めて食ったんだけど!」


「そりゃあ、モンスターサイズだからねぇ」


「味が……上品というか濃厚というか……でもそれ以上に、体に何か漲るものがあるというか」


「魔力が豊富に含まれてるからね。力が沸き上がって来るのを自覚できない?」


「言われてみれば……」


 不思議と料理して、他の素材とあわせることでより効果が倍増するのは攻略君レシピのなせる業だった。


「……このニンジンはモンスターなの?」


「モンスターではないが……」


 おお月読さん。ニンジンのかき揚げに目を付けるとはお目が高い。


 僕は分かっていると頷き、解説をした。


「それは、白玉用の料理だよ」


「白玉? ってひょっとして私の精霊のことをいっているの? それとも料理の話かしら?」


「精霊の話です」


「でも精霊が食事をするところなんて見たことないけれど?」


「まぁしなくても大丈夫なんだけど……でもそれは何も食べられないってわけじゃない。精霊って変化したら外見に引きずられるところがあって」


「そうなんだ……それでニンジン?」


「そう。ニンジン」


「……ニンジンかぁ」


 月読さんはそんなバカなことが……と呟きながら半信半疑で兎の姿をした光の精霊、白玉君を呼び出した。


 ポコンと空中に出て来た真っ白な兎は、差し出されたニンジンのかき揚げをしばらく鼻で突いて匂いを嗅いでいたが、ニンジンに歯を立てると耳をピンと立て宙を駆け上がってめっちゃ光っていた。


「し、白玉が……! とても喜んでいるっ……!」


「でしょう?」


 うんうん、白玉君も喜んでくれて何よりだ。


 もしこれで月読さんと契約していなかったら、テイムが成立していたかもしれないくらいには喜んでいるようだった。


「このようにモンスターに合った適切な素材を見極めることで、テイム……仲間にすることができるというわけなのです。冒険の最中にいいなと思ったモンスターは覚えておくといいよ。売店で聞いてくれたら、松林君が教えてくれるから」


「え? オレ?……おうとも! 何でも相談してくれよな☆」


「……」


 可愛い女の子の前で見栄を張る性格を利用してしまった松林君にはすまないことをしたと思っている。


 だがよくぞ即言い切ってくれたとむしろ僕は賞賛したい。


 おそらくは今後の目玉商品だからがんばって覚えてね?


 武器防具以上に平和的かつ実用的だから広がり始めたらアッというま……いや、食品としてのうまさとバフの有用性が知れ渡ればどんどん需要が増すに違いないと素人なりに思うので。


 そして僕の心の中の独り言だが―――クイーンの力があればそれはもうきっと爆売れするに違いないとそう確信していた。

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― 新着の感想 ―
攻略君とハモるって天ぷらのタイミング完璧って事じゃん…料理スキル高いなぁ
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