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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第262話新装開店

 月読さんが夏休みの間売店に入り浸っていたらサプライズは成功しなかったに違いない。


 ガチャ禁止の効果もあって月読さんは少しだけ立派になった店の外観を見て、驚いてくれたみたいだった。


「なんか……店が綺麗になってる!」


「そうなんですよ。すごいでしょ?」


「いらっしゃいませー! ようこそいらっしゃいました!」


 そして、何時ものちょっと気の抜けた挨拶とは違うずいぶんハキハキした挨拶が飛んできた。


 声の主は松林君で、僕は妙な様子のクラスメイトを奇妙に感じてなんとなく身構えた。


「……どうしたの松林君。やたら元気じゃない?」


「いやそれが聞いて? さっきすごいでっかい圧のある美女が色々商品持って来たんだ! なんか緊張しちゃって!」


 いやぁお恥ずかしいと顔を赤らめる松林君の言う美人はおそらくヴァルキリーの事に違いない。


 ヴァルキリー達の主な役割は商品搬入と整理である。


「松林君ってそういうの緊張するんだなぁ」


「いややっぱ……大人のお姉さんってそれだけで緊張するじゃん? 美人ならなおさらじゃない?」


「……の割に中位の天使には大して緊張してなかったような?」


「したとも! だけど羽生えてたしな! 天使のモンスターとか言われたら実感が追っつかなかったの! オレの事なんだと思ってるの!? まだまだ思春期の男の子ですよ!?」


 そんなものかな? そんなものかも?


 だけどそんなに大声で主張しなくてもいいだろうに。


 お客さんの月読さんが大層微妙な表情をされているよ?


 視線に気が付いてしまった松林君は浮足立った表情から急に引き締まったキメ顔になって、特別接客モードに移行していた。


「……どうも月読さん。貴女の松林 太陽です。本日はどのようなご用件で?」


「……」


 まぁ、ともかく。


 僕はコホンと咳払いして、本日のおすすめアイテムを月読さんに披露することに集中した。


 しかしおそらく今回のおすすめは意外性は少ないだろう。


 それどころかむしろガッカリされる可能性は大いにあったが、だからって最初の一歩だからこそ宣伝が必要だった。


「松林君。食材あるよね? アレ出して?」


「ああ。任された! っていってもオレちゃんと覚えてないけどな?」


 奥に引っ込んだ松林君はパック詰めされた魚の切り身を持ってくると月読さんにキメ顔で差し出していた。


「ハイ。お待ちどうさま! 貴女のために急ぎました!」


「ありがとう。え? 鮭? いえ、鮭っぽいモンスター……? の切り身かしら?」


 さらっと流した月読さんはスーパーから持って来たとしか思えないそれを見て、しっかり魔力を感じ取ったようである。


 さすが月読さん。感覚が鋭い。


 まさしくそれはモンスターを捌いて加工した魚の切り身で、見た目は本当に普通に売っているものにしか見えない。


 僕は深く頷いて極めて重要な今回の核心に触れた。


「そう―――実はモンスターにも好物があるって知ってた?」


「……それは、人間の味に好みがあるとかそういう話?」


「違いますよ? モンスターに食べさせると喜ぶ素材があるって話。この切り身だとネコ科のモンスターには大抵喜んでもらえる」


「……? モンスターを喜ばせてどうするの?」


「そんなの仲間にするに決まってるでしょ」


 お手軽戦力増強に最も冴えたやり方は100階層でも大活躍だった。


 そしてこの画期的な情報開示は生徒を次のステージに推し進める可能性がある。


 我らが部長。浦島先輩だって通った、テイマーへの入り口だった。


「……仲間にするって、手懐けるってこと? それはできないって……」


 月読さんは教科書でも否定されている事柄だけに懐疑的な視線を切り身に向けていたけど、すでにモンスターをテイム自体はしているんだから、柔らかく受け入れて欲しい。


「普通に餌を持って行ってもダメだよ? ダンジョン産の適切な餌じゃないと。だけど知っていれば結構高確率で仲間になってくれる」


「本当それ?」


「もちろん。精霊だって仲間になるんだから、他のモンスターだって仲間にする方法があるって考える方が自然だと思わない?」


「……」


 モンスターは手順を踏めば仲間になってくれるあたりが野生動物と違うところだ。


 そして食事は最もメジャーな方法だと言えた。


「ちなみに精霊は、条件を整えても仲間になる確率は低い方のモンスターだよ。だから月読さんに是が非でも貸し出しを頼みたい生徒が集まっちゃうわけだけど……自力で仲間にできるなら少しはマシになるんじゃない?」


 唯一無二の存在ならそこを崩すに足る一手だ。


 こいつが流行ればいくらか月読さんへの負担も緩和できるはず。


 モンスターのテイムはダンジョン攻略の強力な足掛かりとなることは浦島先輩が証明してくれていた。


「それはいいかもしれないけど……そんなにうまくいくかしら?」


「まぁ本来ならそもそも食べさせるのが大変だったりはある。でも精霊持ちの生徒は増えているわけだし、テイムするまではどうにかなるはず」


「それはそうよね……」


「まずは月読さんを女王と持ち上げている何人かに教えればいいんじゃないかな? ちなみに売店で扱っている食材と仲間にできる20階までのモンスター一覧は売店で無料配布中みたいですよ?」


 この至れり尽くせりの情報は、きっと有効に使えば生徒の戦闘力を飛躍的に向上してくれるはずである。


 レベルは低くなるだろうから精霊ほど劇的ではないけれど手堅いし、順当なレベルアップ方法は新しいアプローチになるはず。


 しかしモンスターを引きつれているクラスメイトを想像したのか、月読さんの表情はどこか嫌そうだった。


「そ、それは……大丈夫な奴なの?」


「精霊と同じくらいには仲良くなってくれるらしいよ?」


「ああ、このモンスターの一覧そういうやつだったんだ」


「松林君?」


 そして君も驚くのかい松林君? 


 これは近いうちにモンスター狩り研修も追加しなければならないみたいだった。


「まぁ騙されたと思って参考にしても面白いと思うよ? ちなみに―――味にも興味あったりしない?」


 そしてもう一つ、せっかくだからモンスターの素材について楽しんでいってもらいたい。


 何もモンスターの肉はモンスターをテイムするためだけにあるわけじゃないのだ。


 適切に処理すれば、魔力をふんだんに含んだダンジョン産素材は自身を強化することさえ可能とするのだ。


 ここ、大事なポイントのつもりだったんだけど、僕は少し提案を間違えてしまったみたいだった。


「…………本当にモンスターを……食べる……。いえ、興味がないことはないけれど」


「ああ! 引かないで! ちゃんと無毒だからね! 松林君もどう?」


 ついでに巻き添えにすると、こっちはこっちで嫌そうだった。


「えぇ? オレも? …………まぁモンスターって言われると、好んで食べようとは思わんけどー」


「……さては自分が何売ってるのか自覚ないね? いいでしょう。まずは試してもらわないと始まりません。じゃあ僕が料理して振舞おうじゃないか」


「ええっと……いざモンスターだと断言されるとちょっと怖いというか……」


「うーん……よし! いただきます!」


「!」


 素晴らしい即断即決。松林君ならそう言ってくれると思っていたよ。


「任せておいてよ! 実はモンスター食にはちょっと自信があるから!」


 僕は軽いノリに思い切り乗っかる。


 最初は誰もが通るもの。


 それに、魔力がたっぷり詰まった料理の力は探索者ならぜひ体験しておくべきだろう。


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます∠(`・ω・´) 猫型モンスターを雇うもといテイムして某狩りゲーのアイル◯キッチンみたくしたらモンスター食流行ったりしてね|д゜)チラッ
お調子者がこんなに輝くとは…
勧誘文句が悪魔のソレ まぁ魔王なんですけど
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