天秤
取り調べが始まる少し前、龍信を迎えに来ていた浩の前に、とある男が現れた。
男「あんたか、川根浩は。」
浩「誰だ、なぜ俺を知っている。」
男「俺は室井幸治、真田龍信に言われてここに来た。」
浩「兄貴が…。で、何をしに来たんだ。」
幸治「さあな。ただ、俺は元刑事で、彼に恩がある。どうやら、何か探してほしいらしい。」
浩「探し物…。はぁ、たく、兄貴は言葉が足らねぇからな。」
浩は頭を搔きながら、龍信の性格を思い出した。
浩「わかった。兄貴が探してほしいものが何か、俺は心当たりがある。ついてきてくれ。」
そういうと、浩は幸治を車に乗せ、龍信の隠れ家に連れて行った。
到着すると、幸治はすぐに中を探索し始めた。
幸治「随分とものが散乱しているな。何かあったのか?」
浩「兄貴はここをただの物置に使ってる。片付ける気にもなんねぇんだろ。」
幸治「そうか。でもなんで、こんなにビデオテープやアルバムみたいなのが多いんだ?誰かを監視してんのか?」
浩「兄貴は元殺し屋だ。ただ、日本じゃなくロシアのな。あっちにいってから、ずいぶんと周りを警戒するようになった。ここにいた時からそうだったが、向こうに行ってから余計にな。」
幸治「う~ん…。ん?これは何だ?」
幸治は、机の引き出しの中にあった、USBを取り出した。
浩「これは…、うちの事務所のカメラの映像を抜き出したものかもしれん。」
幸治「なぜそんなことを。」
浩「おそらくこうなることを予見して、兄貴が不利にならないよう、重要な証拠でも隠してんだろう。なんにせよ、中身を確認してみねぇことにはわからんな。」
幸治「そうだな。」
2人は、そのUSBをパソコンに差し込み、中のデータを確認した。
中には、龍信を取り調べていた刑事2人が映っていた。
浩「やはりな、奴らこそこそと何か企んでやがったからな、兄貴はこれを見越してたんだろ。」
幸治は、刑事の顔を見ると考えこんだ。
浩「どうした、こいつらのこと知ってんのか?」
幸治「…ああ。こいつら、数年前に俺が刑事を辞めるきっかけになった奴らだ。」
浩「どういうことだ、お前が刑事をやめるきっかけ…?」
幸治「俺は捜査1課で、お前たちのような反社の捜査を担当していた。その時、あることに巻き込まれ、こいつらに俺はやめさせられた。それがきっかけで、お前の兄貴に助けられたんだ。」
浩「兄貴はいろいろと面倒ごとに巻き込まれやすいからな。さて、これでどうにかなるってわけじゃねぇだろうが、兄貴の疑いは少しは晴れるだろ。」
幸治「いや、どうやらお前の兄貴はずいぶんと、用意周到らしい。」
そういうと、幸治はUSBの中にある、もう一つのデータを指さした。
浩「こいつは…。」
幸治「不審な金の流れがわかるな。これはおそらく、奴らがお前たちの組長から得ていた闇金らしい。それに、ここ最近それが少なくなっている。」
浩「なるほど、ということはつまり…。」
幸治「金の出が悪くなって、それが不満で事件を起こしたか、あるいは、この情報が外部に漏れ出るのを防ぐ、口封じのために殺したかの二択になる。つまり、どちらにせよ、奴らに容疑を吹っ掛けられるってわけだ。」
その時、浩の携帯が鳴った。相手は龍信だった。
龍信「終わったぞ、迎えに来てくれ。」




