裏切り
この作品はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
雷雨が鳴り響く広島県広島市の東部、商店街の裏手にある、廣部組の事務所。その3階組長室にて、若頭真田龍信と川根浩が、組長廣部道隆を尋問していた。
龍信「おやじ、あんたが教えてくれたんだぜ、裏切りがどれだけやべぇことか。」
部屋の真ん中にある机に足を乗せ、ソファに深く腰掛けた龍信は、右手に拳銃をちらつかせながらそう言った。
廣部「お前らこそ、俺を殺せば光曹会が黙ってねぇぞ。」
龍信「ははは…何もわかってねぇなおやじ。」
廣部「は・・・?」
龍信「あんた、みんなから嫌われてんだぜ、そんな嫌われ者のあんたを、誰が助けてくれるんだ。」
廣部は言葉を失った。まさか、自分が幹部であるはずの光曹会の全員に、嫌われている。そんなわけがない、そう思いたかった。
龍信「おやじ、俺がいつから右手でタバコを吸い始めたと思う?」
質問の意図を、廣部は考えた。しかし、理解する間もなく、龍信は話した。
龍信「あんたが俺を売ったあの日から、あんたは俺の敵になり、俺もあんたの敵になった。会のみんな、俺がどこから帰ってきたか知ってる。だから、あんたはみんなの敵だ。」
廣部「待ってくれ、俺はお前に尽くしてやったんだ、そんな俺を殺すのか?」
龍信「尽くした?俺は何ももらっちゃいねぇよ。俺はずっと、あんたに裏切りの代償を払わせるために、自分で仲間を集め、この日を待ってた。若頭にしたぐらいで、その代償にはならねぇ。それに、あんたがそこにいられるのは、英さんの威厳のおかげだ。虎の威を借りたあんたに、恩は一切感じないね。」
廣部「浩、お前はどうなんだ。お前は俺を、慕ってくれてたよな。」
浩「俺はずっと、あんたを尊敬したことはないし、兄貴を売ったことも、許してねぇ。俺はここに入った時から、あんたじゃなく、兄貴を慕ってた。」
廣部「な…。」
龍信「じゃあなくそ野郎。あんたの仲間も、いずれそっちに行くさ。」
龍信と浩は、廣部に銃口を向け、雷鳴とともに引き金を引いた。
数日後、廣部組の事務所には、警察の捜査が入った。龍信は、容疑者として警察に連行され、浩は龍信の疑いを晴らすべく、証拠の偽装を図った。
県警の取調室、龍信は2人の刑事に尋問を受ける。
刑事A「お前が廣部道隆を殺したんだろ。」
龍信「だから言ってんだろ。俺はあの日、ずっと自宅にいたんだ、周りもそう言ってんだし、カメラの映像でもちゃんと確認取れてんだろ。」
刑事B「いや、あの日の映像は消されていたのか、残っていなかった。わざとお前が消したとしか思えん。」
龍信「映像が残っていないのは知らねぇ。停電でも起きたんじゃねぇのか?」
刑事A「いつまでしらを切るつもりだ。お前が光曹会と何か企んでんのは知ってんだぞ。」
龍信「へぇ。どこからその情報を手に入れたんだ?」
刑事A「警察はお前らが暴れねぇように、いつだってお前らを監視してんだ。そんなことだって「じゃあ、あんたらがおやじと秘密裏に話し合ってんのも、その一環てことか?」なっ・・・。」
刑事B「どういうことだ。俺たちがお前らのような人間と、つるむはずがないだろう。」
龍信「口だけなら誰だって偽善者になれる。だが、おどれらはそれ以下だよ。俺らを利用して、きたねぇ金を集めるおどれらはな。」
そういうと、龍信は立ち上がり、部屋を出ようと扉に向かって歩き出した。ドアノブに手をかけると、振り返り、
龍信「俺が何もしてねぇと思ったのか。残念だったな、俺はあんたらとは潜り抜けてきた死線の数が違う。なめてっと簡単に命取られるぞ。」
そう言い残し、去っていった。




