第8話 瘴気中毒って?
「奥様どうぞ」
お茶の時間、領外から輸入しているハーブ茶をアーナさんが淹れてくれた。
「ありがとうアーナさん」
「あ、“さん”は不要ですよ奥様、はあ」
ため息?
「ご、ごめんなさい、私が不甲斐なくて」
「え?、いえ違うんです。申し訳ありません、ため息なんかついて。実はうちの子が瘴気中毒で」
「瘴気中毒?何それ」
「ああ、普通は知りませんよね。王国の中でも瘴気が発生する地だけを切り取ってできたのがこの辺境伯領ですからね。えっと、瘴気を少しづつ吸っていると徐々に体が蝕まれて体力が落ちていくんです。寝ているうちに体力が戻れば助かるし、でもそのまま死んでしまう子供がほとんどです」
「ちょっ、死んでしまう?」
瘴気が体から少しでも減れば良くなるはずね?
「アーナの子供、今どこにいるの、連れて行ってちょうだい」
「え、え、使用人棟にいますが、え、でもお連れできませんあんな所。怒られてしまいます」
「アーナ!そんな、怒られるのと子供の命どっちが大事なの。いいから連れて行って。これは命令です」
「はい。えー」
渋々アーナが使用人棟に案内してくれる。
ーーー
まあ、使用人棟にしては随分と外見は立派じゃないの。侯爵家のに比べたら豪邸よ。
「早く中に案内してちょうだい」
「えー、はーい、えー」
すごい、2LDKマンションレベルよ。
侯爵家の使用人部屋は掃除道具部屋よりマシだったけど、1Kに家族4人とか。
「さすが辺境伯家ね。使用人部屋も綺麗で立派よ。じゃあ子供はどこかしら」
アーナが子供のベットまで案内してくれた。
「あの、この子です」
うん、まだ2、3歳かな。可愛い男の子だ
(ええと、この建物、立派だけど空気の汚れがすごいわ。まずは)
ささっと手を振ってこの建物の空気汚れを清浄化する。
「あ、やっぱり奥様が」
アーナが何か言ったけど気にしない。
この子の体内に溜まった瘴気という汚れを綺麗にするイメージで
(清掃!)
心の中で唱える。
なんとなく、この子の肺と体内に手応えが感じられる。
他のいろいろな汚れも一緒に取れたのかもしれない。
どうかしら?
「少し呼吸が楽になったように見えますが、まだ意識は朦朧としています」
そうよね。いきなりは治らないわよね。
「ちょっと何日か様子を見ましょう。また何日かしたら清浄魔法使ってみるから」
「ありがとうございます」
「今日はいったん戻りましょう。寝ている邪魔はしたくないわ」
「はい、じゃあリアル、お母さんまた行ってきますね」
「うん、行ってらっしゃい」
アーナと2人で部屋を出る。
「アーナ、ごめんなさい。もう少しは効果あると思ったのに」
「いえ、いいんです。呼吸が少し落ち着きました。それだけでも? あれ??」
アーナが首をかしげている。
「どうしたの?」
「リアルが…ちょっと戻ります」
アーナが走ってリアルくんの元に戻って行った。
「キャー大変ですうー、奥さま!」
まずい! 何も考えずに子供に魔法かけたけど体に負担だった?
「アーナ、ごめんなさい。リアルくんに何かあったら私…」
私もリアルくんの元に向かった。けど、
あれ?
「リアルー」
「あ…母ちゃん?」
「リアル、大丈夫なの?」
「うん、なんか苦しくない」
「リアルー!」
「ぐ、苦じい」
アーナがリアルをぐりぐりと抱きしめながら私をみて言った。
「奥さまあ、すごいですう、一生ついて行きますう」
「そ、そう?ただ清掃しただけだから。ところでどういうこと?」
「リアルが“行ってらっしゃい”って言ったのに気づいて」
なるほど!
「そうか!よかったわね。うふふ、リアルくん苦しそうだからあまり抱き締めすぎないでね」
年上のアーナの頭を撫でてあげた。
でもね、旦那様に愛されていない私はいつかこの屋敷から追い出されると思うの。一生は無理よアーナ。
ーーー
アーナ視点
その日は奥様が配慮してくださって、子供と過ごせるように早めに上がらせてもらった。
「母ちゃん、一緒に寝てよ!」
「あらあら、リアル、赤ちゃんみたいね」
「えー。母ちゃんお願い」
「はいはい、今日だけよ」
ちょっと嫌そうに言っちゃったわ。
でも本当はそのために早上がりしたんだから、私も嬉しい。
「母ちゃん、なんで泣いてるの?」
「泣いてないわよ。あくびしたから涙が出たの!」
本当は元気なリアルが嬉しくて涙が出たんだけれど。




