第7話 辺境伯様からの手紙
旦那様から手紙が届いた。
といっても、先日私はまだ見ぬ旦那様に手紙を書いた、その返事だ。
実は護衛のコーネルさんが
「魔法が得意な辺境伯様に手紙で聞いてみたら?」と提案してくれた。
郵便事情はあまり良くないが、この世界、伝書便というものがある。
魔法付与した鳥や動物を使って物を送る手段でそういう魔法が得意な人が一定程度いる。
送った内容は「空気の清浄魔法で瘴気を取り除く方法と作物と雑草の魔法の効き方の違いについて思い当たることがないか」という2点のもの。
早速読んでみる。
「へえ、そうなの?」
興味深いことが書いてある。
“おそらく空気の清浄で瘴気はほぼ消えており、薔薇のような香りは“魔法臭”という強い魔法が使われた後に残る残り香ではないか”とのこと。
「瘴気が取れるなら、わたし役に立てるチャンスじゃないかしら」
つい嬉しくなってアーナさんに聞いてみた。
「奥様はすでに十分お役に立っておられます」
(ああ、私専属の侍女さんですものそう言うわよね)
「作物と雑草の違いは」
“特にないはず”
「やっぱりそうよね」
“あるとすれば、土だ“
(土?畑の土ということね)
“辺境伯ノーブル・レアブラックより”
思ったよりしっかり書いてくれた。
領地のためとはいえ本当は優しい人なのだろうな。
私が押し付けられた存在でなければ少しは優しくしてもらえたのかも。
ーーー
再び敷地内の畑にやってきた。
今日は畑を管理してくれているアスカルさんにも来てもらった。
アーナさんとコーネルさんはもちろん一緒だ。
この前摘み取ったムーギと畑周辺の雑草との違いはわからなかった。
だったら辺境伯様のいう通り、土の違いではないか。
まずは土の成分や肥料について聞いてみた。
「ひりょう?」
「え?」
「ああ、栄養のことですか。王都周辺は知りませんがここでは効果がないので特に与えていません。ですので基本的な土の素性は周囲のそれと変わらないと思いますよ」
(ダメか)
土の面から攻めるのを諦めかけた時、護衛のコーネルさんが言った。
「耕してありますね。土を起こすとよく育つのかしら」
「ああ、土が柔らかい方が根の張りがよく、栄養を吸収する”根”がよく育ちます」
「ふーん」
はは、それは私も知ってたわ。前世では学校でみんな習うものね。
「まって、よく吸収する。瘴気も?」
だったら。
「ねえ、畑の周りの土が硬いところにはムーギは生えていないの」
「あえて植えてはいませんが、野生化して少しはあるかもしれませんね」
周辺をさがしてみる。
「奥様これ違いますか?」
アーナさんが見つけてくれたようだ。
「これはそうですね。ムーギです。これをどうするんですか」
アスカルさんが不思議そうに聞いてきた。
「今から清掃魔法をかけてみます」
(空気清浄!)
周辺の空気が綺麗になっていく。
「おおー、これはすごい」
畔にあるムーギが瑞々しくなった。
「これはつまり、植物の種類ではなく生えている場所、その土の差の可能性が高いわ」
「それはどういうことでしょうか」
「ええ、検証は必要だけど、耕した時に土の中にまで入り込んだ空気、つまり瘴気が根の周りに多く存在するから魔法の効果が出にくいんじゃないかしら」
「ではどうすれば?」
「土の中まで清浄化するイメージね」
再び畑のムーギが植っている中心付近までやってきた。
まずはその近辺だけ土に手をかざしながら土の中の空気を綺麗にするイメージで魔法を発動する。
(空気清浄)
しばらくして、手をかざしている付近ほんの数メートルだけ作物に変化が現れる。
明らかに垂れていた葉が元気に、色も緑が濃くなっている。
清掃だけでなぜこんなにすぐに効果があるのか不思議だが事実は事実だ。
「よし、やり方はわかったわ。うまくいけば食料の増産につながるはず。でも、地中に魔力を浸透させるのは思ったより難しいわね」
次の課題はちょっと研究のやりがいがありそう。




