番外編2ー2 変わっていく領地
本日2話目です。
どうしても気になることが、もうひとつだけあった。
いや、ひとつだけというには、あまりにも大きな問題だろう。
領地の今後を左右する、とても重要な方針。
旦那様と奥様が打ち出された、あの決定。
――犯罪奴隷も含めて、有用な人材はすべて受け入れる。
もちろん、重犯罪者は除外される。
それでも、犯罪奴隷たちまで対象に含めるというのは、相当に思い切った方針だと思う。
「今、この領地には圧倒的に人手が足りないわ」
働き手を確保し、能力のある者に活躍の場を与え、これまで埋もれていた人材を有効に活用する。
その考え方は理解できる。
罪を償い、新たな場所で生き直す機会を与えることにも、きっと意味があるのだろう。
実際、領地にとっても大きな利点があるはず。
けれど。
「でもやっぱり怖いと思ってしまう」
頭では理解できても、心のどこかに不安が残ってしまう。
反省している者ばかりとは限らない。
受け入れた者たちが領民と共に暮らすようになれば、思いもよらない問題が起こる可能性だってある。
怖くないと言えば、嘘になる。
私は、自分の中にあるその感情を、無理に打ち消そうとは思わなかった。
だからこそ、旦那様と奥様も、きっと何度も考えられたのだろう。
どのような者を受け入れるのか。受け入れた者たちを、どのように管理するのか。
そうしたことを、十分に検討されたうえでの決断なのだと思いたかった。
「あのお二人が、何の対策も考えずにこのような方針を打ち出すとは思えない」
大切なものを守るために、何を優先すべきなのか。
きっと今も真剣に考えていらっしゃるのだろう。
「私は私にできることをやろう。今はそれだけ」
ただ遠くから眺めているだけではなく、自分にできる仕事を、ひとつずつ丁寧にこなしていく。
新しくやってくる者たちがどのような人間であっても、よく周囲に気を配り、何かあればすぐに報告できるようにしておこう。
私は小さく頷いた。
人は変わる、領地も変わる。良い方向にも、悪い方向にも。
旦那様と奥様が選ばれた道が正しかったのかどうか。それは、これから少しずつ明らかになっていく。
ならば、自分もその行く末を見守りたい。
いつか、この決断が領地にとって大きな実りをもたらしたとき
『あの時は不安だったけれど、信じてよかった』
そう笑って振り返ることができたら、それはきっと素敵なことに違いない。
私は窓の向こうに広がる領地の景色を眺めた。
人も、街も、そして領地そのものも少しずつ変わろうとしている。
その変化が、これからも良い方向へと続いていくことを願いながら。
私は「パチン」と自分の頬を両手で挟むようにたたくと、再び自分の仕事へと戻っていった。
ーーー
「シュー」
「ボフッボフッ」
……大地の不吉な変化は……そんな私の切実な願いとは裏腹に、不気味な音を立てながらゆっくりと、そして着実に忍び寄っていた。
これで番外編は終了です。
この物語、多くの人にお読みいただいており、感謝のあまり画面に向かって手を合わせてしまいました。
(客観的に見ると変なやつです)
でも本当に、本当にありがとうございます。
そんな状況もあり、予定していた番外編2の内容を全体的に変更して、領地や辺境伯家の変化をこのあと物語が続けられるようにしてみました。
まだ全く手をつけられていませんが、できれば第4章を書きたいと思っています。
今の想定ではローザの聖魔法の変化に新たな住民たちの悲喜交々も絡みながら進めたいと思っています。
書いているうちに全く違うものになるかもしれませんが、それも含めて応援どうぞよろしくお願いします。




