第50話 南部平原地帯の希望
一旦の屋敷に戻り、残りの集落を回るため補給作業を始めた。
「この地はこれまで瘴気に包まれていたため人口も、村の数も多くはない」
旦那様は少し悔しそうに言う。
「はい。それでも、まだ回りきれていないです」
残りは集落の数では5箇所ほど。
でも領地の面積は広大であり、移動距離はどうにもならない。
「全て回って収量が上がれば。これからですよ、人も呼べます、商業も産業も。この領地はもっと良くなります」
私は旦那様の左腕に自分の両腕を巻きつけた。
ーーー
再出発までの時間を有効に使う。
「まずはキャトルレアでできることをしましょう」
丸一日の完全休暇を挟んで私たちは領都キャトルレアを訪れた。
コーネルとフェルミナ、ダートウェルとコルの4人を伴っている。
旦那様は“どうしてもはずせない仕事”だけでもかなり溜まっており泣く泣く屋敷で仕事をしている。
「空気よし、水の浄化よし、街の様子も活気があってよし」
私は元気に歩き回る。
食料の絶対的な不足はあるものの、活気は戻って来ている。
私たちは孤児院を訪れて、子どもたちとの交流、院長様に子供達へ教育を施したい旨と、将来の僻地支援の先頭に立つ人材にしたいことなどを伝えた。
週に5回、屋敷からニア先生を派遣する。ガンダルクから間者として送り込まれていた彼女だが、円初便を使っていたくらいだ。当然読み書きはできるし、計算もできる。
さらに子供も好きだと言うことなので子供達に教えるにはちょうどいいと旦那様に判断された。
その後、村長を訪ねたり、瘴気中毒者の一覧作りでお世話になった娘のカトリーナさんにお土産を渡したりとせわしなく動き回って屋敷へと戻った。
村長さんとカトリーナさんにはまた新たなお願い、『瘴気中毒以外の病気や怪我の人がいたら教えてほしい』ことを伝えておいた。
ーーー
領内の作物生育環境改善のための巡回は補給も済んで後半の日程をこなす。
メンバーは変わらないが、移動には慣れたので少し気持ちに余裕ができている。
ただ今回残した地域は領地の南側、いわゆる南部平原地帯を含む平地の多い地域だ。
新たな農地もまずはここを開発し、確保したい。
つまり、
「集落周辺以外の土地、その地中の瘴気濃度を確認しておきたい」
ということだ。
各集落や村ではこれまで同様、食料に配布と周辺農地地下部分の瘴気浄化、病人がいればその治療などをこなし、要望なども聞いて行く。
そしてその集落間の移動の際に、平原などで地中の瘴気の状況を確認した。
「ミル、お願い」
「では行きます」
ミルの植物魔法で草や木の根を使って土を持ち上げ、私の浄化魔法の手応えを感じ取る。
「ここも大丈夫そうね。一応浄化はしておいたけど、そのままでも大丈夫なくらい」
幸いなことに、地中では瘴気が溜まっているところは少ない。
「やはり畑では耕したことで地中にまで瘴気が入り込んだ、手付かずの地は一部を除いて地中まで酷く汚染されているのは少ないということのようだな」
旦那様も同じ結論に達したようだ。
もちろんひび割れから少し侵入していたり、もともと瘴気の発生している土壌の場所はダメだ。
「人さえ呼び入れられればさらなる増産ができそうです」
私は嬉しくて仕方がない。
食料が豊かになること、それが領民のために一番にしたいことだから。
ーーー
“領内を回り終えたことで天候などの問題がなければ例年より収量が増えるはず。
新規の開墾も立ちはだかる障害は少なそう”
屋敷のソファーでそんな考え事をしている時、気になっていたケイトさんから手紙が届いた。
「とても元気ですので安心して欲しい」
といった趣旨だった。
「それならケイト嬢も呼べそうだ、よかったな」
旦那様が嬉しそう。
私たちの結婚式。
領都キャトルレアの中央教会で行う準備をしているが、アーキリム兄さんは当然呼ぶとして、ケイトさんなど王都の人たちを招待するかが悩みの種だ。
王族にも一応招待状は送るが、当然ここまできてくれない。
これまでも、ほんの少しずつ準備は進めてきた。
でも領内の巡回が終わったことでやっと本格的に始めた式の準備。
色々悩むことはあるけど、忙しい中でも多くの時間をさいてくれる旦那様がありがたい。
だからこそ、私はなるべく楽しみながら準備しようと決めている。
この時は、まさかこの結婚式が王国を揺るがす大事件が起こるなんて知る由もなかった。




