第49話 盗賊の襲撃
「もう明日には次の村に着く。今だけでも休んでおけ」
ミハタ村の村長さんには引き留められたけどその日のうちに隣接する集落へ向けて出発した。
さすがに疲れたので、今日は馬車で横になって移動している。
ただ、変身していないフェルミナの膝枕で寝ている。
「フェルミナ、ありがとう」
「奥様は気にせずゆっくりしてくださいね」
やっぱりかわいいなあ、フェルミナ。
ーーー
出発してひと月が過ぎていた。
すでに多くの集落を回り、人々の治癒と土地の浄化を済ませた。
次は今回の行程では最後となる、そして規模としては最大のマルミブの街に向かっている。
集落同士が離れ、途中やむなく野宿をしてもアーナが私たちには温かい食事を作ってくれるので、食べ物は問題ない。
寝床も実家での生活であまり気にならない。
それでも最長でひと月ごとには屋敷に戻るという約束にした。
まもなくマルビムに着こうかという時、周囲が慌ただしくなった。
「盗賊団です。一旦向かってきたのですが辺境騎士団とわかりあわてて逃げ出しました。数名とらえましたがどうしますか」
コルが報告をしてきた。
「盗賊は処刑が前提だ」
「はい。ただ、おそらくあの装備は近隣の村人かと思われますが」
「そうか、……わかった。一応話を聞こうか」
旦那様が縛り上げられた盗賊の前に出た。私もついていく。
「確かにな。お前たち、近隣の村のものか?」
「……」
「辺境伯様の質問に答えられないのか」
コルが盗賊を威嚇する。
「へ、辺境伯様?」
1人が小さく呟くと、隣の男だひじで小突く。
「喋るな、死ぬのは俺たちだけでいい」
「ふん、なるほど、やはり近隣の村のものだな。生活が苦しいからか?」
「はい」
先ほど小さく呟いた男が答えると、
「こら、黙れ!」
隣の男が怒鳴った。
「さっさと首と切ってくれ。村は関係ねえ、俺たちが勝手にやったんだ」
「そうか。では仕方あるまい」
「旦那様!」
旦那様はこちらをチラッと見てウィンクした。
「では、罰として働いてもらう。もちろん給金は出すがな」
「は? いや、俺たちは盗賊だぞ、何を企んでいる?」
「お前失礼だな、本当に首を切るぞ! いや、まあいい、俺は何も企んでいない。今はまだ領地の環境が改善されただけだ。食料は今から増産するので間に合わない。申し訳ないことだと思っている」
周りを見回すと、
「この領地、まだまだ土地はある。耕せる土地がたくさんだ。種もみもある。あと足りないのは労働力だ。お前たちにそれを頼みたい。どうだ、お前の村にも食料を配る予定なのだが?」
「へ? へへえ」
急に皆でひれ伏した。日本の土下座みたいになっている。
「本当なのでございますか、信じろと言うのが無理なほどいい話なんですが? 人殺しはしていないが盗賊してたんですよ?」
「お前が豊かな土地になっても盗賊をやると言うなら容赦はしない。しかし改心して働くのなら罪は問わない。どうだ?」
「ははあ、やらせてください、お願いします、どうかお願いします」
実はこれはここだけの話じゃない。
これまでの村でも新規開拓と食料支援は行ってきた。
今回は盗賊相手なのでちょっと条件をキツくしただけ。
村に案内させると他の逃げた盗賊の仲間もいたが、それ以外は普通に家族がいるただの集落だ。
かなり寂れているが。
「お前ら、裏切ったな、辺境騎士団を案内しやがって!」
はじめは荒れていたが、なんとか事情を説明し、疑心暗鬼を残しながらも納得をさせた。
「じゃあ、俺たちはまず何をすればいいんだ?」
それはもう!
「まずは食料を運んでちょうだい!」
「うおー」
「きゃー」
悲鳴とも歓声ともつかない声が村に溢れる。
やはり腹が減っては、だ。
これで信頼も増す。
「辺境伯様自らお越しとは、お見それしました。奥様もご同伴? 俺らが言うのもなんですが危なすぎます、それはダメですよ!」
領地のことを心配してくれているのか注意までしてくれた。
本当はみんないい人たち。
「私も必要だから来ているのですよ。病気や怪我をしている人を集めてください」
それからはいつものように治癒、畑の改善、水の浄化と、ひと通り済ませた。
「まさか、英雄様と聖女様がこんな村までお越しになるなんて。死ぬ前に奇跡が見られました。もう思い残すことはありません」
「なに言っているの! これからよ、これから私たちも豊かになるの。もっと今より幸せになるからね」




