間話 出発前夜、私と旦那様のやり取り
第47話の文中「昨夜の旦那様とのやり取り」です。
今日は夕食も終え、あとは明日の出発に備えて早めに寝るだけだ。
寝る前に旦那様の執務室で旦那様と私で最後の打ち合わせをした。
「よし、それでいいだろう。では明日は少し早いが、皆が遅れないように徹底しよう」
「はい」
これで一区切りがついた。
すると旦那様がアーナたち側近も人払いをした。
旦那様と私、2人きり。
「ところでローザ、王都に行く前の話を覚えているか」
「はい、覚えています」
ノル様が辺境伯様だと打ち明けられ、手放したくないともいってくれた。その際に正式に婚約者として婚約指輪を渡してくれようとした。
それを私が王太子妃候補になった問題を解決してから返事すると言った。
ぜったい忘れるはずがない。
旦那様が静かに私の横でひざまづく。
「落ち着いてからと思っていたら、今日になってしまった。色々あってすでに婚姻届は提出されているが婚約指輪だ」
「ありがとうございます。謹んでお受けします。元は王命により押し付けられた結婚ですが、旦那様にご迷惑がかからないよう、できれば少しでも妻として好きになっていただけるよう頑張ります」
「ん……ローザ? 以前話したつもりだったが」
旦那様は不思議そうに私を見るとあの時のように指先を大きな手で包んでくれる。
「私はローザのことがすでに大好きだ、努力が必要なのは私のほうだろう」
「あ、それは主に人として好きと言うことかと。もっと妻として好きになっていただけるよう頑張ります」
「いや、当然女性として、妻としてと言う意味だったが。気持ちを伝えると言うのは難しいものだな」
だめ、また胸の奥で鼓動が痛い。
「え、えっと、そうなのですね。嬉しいです」
なんだろう、ちょっと息が苦しい。一旦深呼吸した。
「わ、私もはじめは命の恩人のノル様が、そして領地領民のため、いつも誠実に働いている旦那様が大好きです」
自分の顔がほてっているのがわかる。恥ずかしい。
「では今日はこれで失礼します。明日、いえ今後ともよろしくお願いします」
私は形ばかりのお辞儀をすると、返事も聞かずに部屋を飛び出した。
後ろから何か聞こえた気がしたがよくわからない。
「おーい!」
「……指輪、忘れていったな」
うん、今日は部屋に持っていくのはやめた方が良いな。明日もう一度渡そう。
俺は鼻歌を歌いながら自室に戻った。




