第47話 豊作の領地を夢見て
王都に呼び出されて以来、久しぶりにゆっくりと辺境伯領に戻った。
「おくさまあ」
「アーナ久しぶりね、この前は慌ただしかったけど久しぶりにゆっくりするつもりよ」
「はい、お話いろいろお聞きしたいです。それと、ご結婚おめでとうございます。式も早くあげましょうね」
「そうね、やるべきこと済ませたらね。まずは領地の生活水準向上よ」
アーナが目を見開いた。
「まだ結婚式より先にやることがあるのですか? 旦那様に文句言ってきます」
「ま、待ってアーナ、それは私が旦那様にお願いしたの。とにかく作物を、特にムーギの収穫量を10倍にしたいわ」
「倍ではなくて、10倍ですか。いや、まあきっと奥様ならできるんでしょうね。これまで不可能だったことを次々簡単に解決していますから。あ、奥様は聖女様だったというのも本当ですか?」
「それは違うわ。確かにスキルは聖属性だったけど。聖女様は心も綺麗なのよ」
「なるほど、聖女様になったのは本当だったんですね」
「アーナ?」
リアルくんの近況も嬉しそうに教えてくれた。
「はい奥様、もうリアルは元気っぱい、いつもどこかを擦りむいて帰ってきますが全く気にしていなくて困っています」
「あらあら、きっと大きくなったんでしょうね」
「うーん? もちろん背も少し伸びましたが、こうですね」
アーナが自分の顔、頬のところに手を持っていって少し指先を丸めた。
「太ったの?」
「はい、別人のようです。困ったものです」
そう言いながらも、アーナはとても楽しそうだった。
私もなんだか幸せな気分になるわ。
ーーー
領内を回る、その出発準備はできた。
思いの外時間がかかり、領地に戻ってから2週間が過ぎている。
「ではいくぞ、アーナも忘れ物はないな」
「はい、昨日から5回確認しました」
「そ、そうか。では大丈夫だな。アーナ、本当に子供を置いていっていいのだな?」
「はい、これ以上奥様に置いて行かれていては専属侍女の名がすたります」
「……そうか。ローザ、ではいこうか」
旦那様はいつもに増してお優しい。
昨夜の旦那様とのやり取りがそうさせているのだろう。
「はい」
騎士服に身を包んだ私は変身したフェルミナにまたがる。
「出発!」
これから向かうのは領都から最も近い集落、ミハタ村だ。
ここは人口はそれほど多くないが気候には恵まれ畑が多い。
ただ、瘴気の影響で反収は非常に低かった。
これから村の人々の怪我や病気の治癒と畑の改善を行う。
メンバーは私と旦那様と辺境騎士団10名。加えて、いつものコーネル、フェルミナ、エル、ミル。
さらにアーナが私のお世話で来てくれる。
辺境騎士団にはコルがどうしても行くと言ってついてきている。
妹さんのことでさらに私に恩ができたというのだけど、約束通りにしただけなのに。
律儀な人だわ。
魔獣を全て討伐した現在、街道は以前に比べてとても安全になった。
しかしその分、盗賊が現れ出した。
そのため、護衛を完全に無くすまでには至っていない。
そのため一応、エルが索敵を索敵をしながら進む。
今回の17名、正直このメンバーを相手にできる敵は領内にはまずいない。
ミハタ村にはその日の午後には到着した。
「領主さまようこそいらっしゃいました」
村長さんとの挨拶も簡単に済ませ、さっそく畑に向かう。
「ミル、お願いね」
「うん」
ミルはおとなしくて可愛い。
でも魔法はすごい。
「では、※$&〒々&€※£$」
呪文を唱えると見渡す限りの畑の土がゆっくりと持ち上がる。
「おおお、なんですかこれは」
村長さんが腰を抜かしそうなほど驚いている。
「ムーギなどの作物の根が伸びて土を少しだけ持ち上げています。ここに浄化魔法を入れます」
私は両手をあわせる。
「浄化」
地面を這うように魔法が行き渡る。
「もういいわよミル」
「うん」
ミルが魔法を解くとゆっくり地面が元に戻る。
「これで地中の瘴気も綺麗になったはずです」
「これだけ? 一瞬ですね」
「そうね、見た目はそうなのだけれど、ミルが、あ、この子、が土を持ち上げてくれてるおかげなの」
「はあ? ちょっと私にはわかりかねます」
「村長、大丈夫だ、俺にもよくはわからん」
旦那様?
ちょっと不満だけど、旦那様がすごく楽しそう。
だからまあいいかな。




