第36話 フローレンス公爵令嬢の暴走
今日は1話だけ早めに投稿します。
合わせて登場人物紹介も投稿しました。
1週間かけた同じ道を帰りは2日で駆け抜けた。
王都に向かう時はあまり気が進まないのであえてゆっくり進んだ。
しかし今回辺境伯領の屋敷に戻るのは私の荷物をとりに行くという名目だが、本当は王太子妃候補になった対策を行うためだ。
私も馬を使ってとにかく急いだ。コーネルとフェルミナはついてきたが騎士はほとんど王都に残し10名ほどにした。
今は王宮から私たちの監視のためついてきた監視官を接待用の居間で待たせている。
つまりこの屋敷にあまり長居はできない。
我々は辺境伯執務室に集まっている。
「ローザ、本当にうまく行くだろうか」
「やるしかありません。まずはニアを誘き寄せます」
「いや、あちらから来たようですよ」
どうやら物陰から聞き耳を立てているらしい。チャンスだ。
ニアに聞こえる程度の小声で話をする。
「ですから、せっかく王太子妃候補となったのです。ガンダルフ侯爵令嬢に邪魔されたくありません。この瘴気毒で弱らせれば大丈夫です。殺しはしません。私に対抗できなくすればいいのです」
「これはなんなのですか?」
「今回瘴気を清浄化した際に集めた瘴気の塊です。これをフローレンスに飲ませます」
「どうやって?」
「フローレンスは甘い物好きと聞いています……」
その夜、ニアからの伝書便が王都に向けて放たれた。
ーーー
ガンダルク公爵家
「お父様、ローザに王太子妃正室候補の座を奪われました」
「ああ、宰相のルイードから報告があった。フローレンス安心しろ。もう一度あいつのローザフラウを陥れてみせる。ニアに至急連絡を取れ」
今に見ておれ、ローザフラウめ。
2日後、伝書便が届いた。
「毒殺だと」
「いえ、死なない程度の毒だそうです」
「そんなことはどうでもいい。あのローザ如きが我々を害しようなどと。いや待てよ、これは使えるな」
堪えきれず顔がニヤける。
「ニアよくやった」
フローレンスが呼ばれて執務室に入る。
「何ですって、菓子に毒を入れて私を弱らせる。許せないわ」
「これはチャンスだ。菓子の検査をさせ、毒が含まれれば王太子妃候補ところではない」
「なるほど、それはいいわね」
見てなさいローザ。でも、それだけじゃやっぱり許せないわ、ローザフラウ。
フローレンス自室
「フローレンス様、どのようなご用件でしょう。あまり今は動くなと公爵様から指示されております」
「いいから聞いて、秘密裏にローザを殺して。どんな手を使ってもいいわ」
「しかし今は」
「私に逆らうの? ローザは向こうから攻撃してきたの。仕返しするだけよ問題ないわ」
「……公爵様の命に逆らうことになりますが」
「一年前、ローザが辺境伯領に着く前に殺れていればこんなことにならなかったわ。あの時誰が失敗したの?」
「それは……わかりました。仰せのままに」
「……」
風のない部屋のカーテンが揺れた。
ーーー
王宮での謁見後、私は実家の侯爵家に、旦那様は王都の辺境伯邸に滞在している。
今は2人が別に暮らしているので監視官も王宮に帰ったが、領地では監視の目が厳しく長居できなかった。
私たちの男女関係だけを警戒していただけなので、計画には気付かれてはいないだろう。
レアブラック辺境伯屋敷
「旦那様」
「影か、どうした」
「フローレンスが……ご注意ください」
「そうか、予定外に大物が釣れそうだ。引き続き頼む」
「はっ」
気配が消えた。
「さて、どうくるか楽しみだ」
私はすぐに探知能力が得意エルを呼んだ。
ハーナス公爵邸
「ローザ、元気そうで何よりだ」
アーキリムお兄様が迎えてくれる。
「それにしてもまた王太子妃候補になるとは大変なことだ」
「はい、何とか逃れたいのですが。ところでお父様とお母様は?」
「ローザが帰ってくるというので隠居願ったよ。家督は僕が継いだ」
「それってもしかして?」
「うん、追い出した。王太子妃候補になったと言って手のひらを返したようにローザを利用しようとしていたから許せなくてね。いま王宮に家督相続を申請しているが近々認められそうだ」
「それはよかったです。それに気楽に滞在できます。ところでメイドのミリーは?」
「なぜか急に辞めてしまった」
「それはよかったです」
私は彼女がおそらくガンダルク公爵家の間者であることをお兄様に話した。
そして私は今一番大事な作業、“クッキー作り”を始めた。
20:30にもう1話投稿します。




