第34話 王都へ
本日2話目です。
旦那様が上着のポケットに手を入れ、綺麗な箱を取り出した。
「もし良ければだが、これを受け取ってほしい」
小さな箱を開けると緑に輝く石のついた指輪がある。
「これは?」
「いまさらだが婚約指輪だ。この石を探すのに時間がかかってしまった。瞳の色と同じ緑のダイヤストーン。結婚指輪は別に準備するつもりだ」
「きれい! 緑のダイヤストーンって初めて見ました。いえ、聞いたのも今回が初めてと思います」
「そうかもしれない。世界に数個しかないからな」
「う、受け取れません」
「やはり結婚は嫌か?」
旦那様がひどく落ち込んでいる、そうではなくて!
「王家との話が先です。王太子妃候補なんて困ります。そちらが済んだら……」
「済んだら?」
「もう一度、今の言葉をお願いします。その時にお答えします」
「なるほど。そうか……わかった」
旦那様は大切そうに箱をポケットに入れると、気持ちを切り替えたように私に真剣な眼差しを向けた。
ーーー
今回の王都には旦那様の他、コーネル、フェルミナ、エル、ミル、辺境騎士団およそ半分に当たる50人という大集団で向かっている。
ちなみに今回の瘴気清浄化と魔物討伐を成功するに当たって大きな貢献をした、フェルミナ、エル、ミルの奴隷契約を解除し、自由の身とした。
3人に希望を聞いたら「お願いですから追い出さないで!」と変なことを言われたので、私は喜んで護衛として雇い、働いてもらっている。
馬約50騎、馬車10台の大名行列のようなこの一行は、瘴気の清浄化で出た領地中に散乱している青い鉱石、スカイノ鉱を荷馬車二台満載で運んであるのもあるが、なんか私の着替えも馬車2台あるらしい。王宮に行くというのはそんなに何回も着替えないとんでしょうか。
それにしても王命で私が初めて辺境に行く時とは違いすぎて。
たっぷり時間をかけ、出発から1週間かけて王都に入った。
王都の辺境伯邸に王宮からの使いが訪れた。王都に着いたと連絡をしたその日にというのは異例だ。
最近の王宮の辺境伯家の扱いは異例づくめだ。
「本日、と言いたいところですが明日王宮を訪問ください。国王陛下がローザフラウ様にお会いするのを楽しみにされています」
「ずいぶん焦っているな。まあ明日午後訪問しよう」
「朝イチでお願いします」
「……ローザも疲れているのだぞ」
私は旦那様に小さく横に首を振る。
「ああ、わかった。そのようにしよう。明日朝に行く」
「ご配慮感謝します」
心のこもっていない感謝の言葉を残して王宮の使いは帰っていった。
「さてどうしたものか」
「旦那様、私に考えがあります。今の状況では王太子候補になる話、一旦受けざるを得ません。そこで……」




