第3話 辺境伯視点(辺境伯の戸惑い)
ここは辺境伯の視点です。読み飛ばしも可です。
辺境伯ノーブル・レアブラック(=辺境騎士団長)視点
今日も魔獣の討伐のため領界近くまで来ている。
ひと通り討伐を終え残党狩りをしている時だった。
「団長、林むこうの街道に盗賊です。女を1人連れています」
「女?」
「ドレスを着ているので貴族ではないでしょうか」
「よし、気づかれぬよう慎重に近づけ」
「はっ」
ーーー
「盗賊団か。この領地に入ってくるとは命知らずなことだ」
「やべえ、辺境騎士団だ」
魔獣や魔物に比べたら盗賊団など赤子に等しい。
団員たちが次々と倒していく。
「団長、あのご令嬢は」
「ああ、分かっている」
こんな所であの格好をしているのは我が花嫁といったところだろう。
こんな辺境に追放された上に盗賊に襲われるとはつくづくツイていない御仁だ。
「おい!」
最後に残った盗賊の頭がこちらを向く、その瞬間、部下が首を取った。
「あ、しまった。刺激強すぎたな」
馬の上の令嬢は気を失った。
「よし、魔獣の討伐も一区切りついている。今日は彼女を連れ帰る必要があるからな。久しぶりに屋敷で休むぞ」
(まあ形だけとはいえ妻になるのだ。仕方あるまい)
俺の馬に乗せていくことにした。
ーーー
屋敷では、用意してあった彼女の部屋に寝かせる。専属になるアーナにせめて体くらいは拭いてやるように頼む。
メアリーがローザフラウと思われる彼女が目を覚さないと報告してきた。
俺は明日、新たな討伐の地に向かわなければならない。
「最後に顔でも見ておくか」
次いつ帰るかわからんからな。
「団長!」
騎士団のダートウェルが声をかけてきた。
「あの侯爵令嬢に会いにいくんですか。あまり心を許さないでくださいよ。この地に流されてきた、つまり何かやらかしたか、よっぽどの嫌われ者です」
「ああ、そうだな。まあ顔を見にいくだけだ」
「そうですか。王命ですから無碍にはできませんが何か理由をつけて早く王都に追い返しましょう」
「ああ、ローザフラウ嬢もこんなところには来たくはなかっただろうからな」
自分の屋敷とはいえ婚姻前の令嬢の部屋に1人で入るわけにもいかないのでメアリーとアーナに付き添ってもらう。
あまり明るいと寝ずらいだろうと薄明かりになっている。
長旅と盗賊に攫われたことで本当に疲れたのだろう。
身動きもせずよく眠っている。
俺は起こさないようにそっとベットの横に立つ。
顔を見ようとしたがふと彼女の手元に目がいった。
痩せ細り肌荒れた手で、小さな傷もいくつか見える。
(少なくとも王都の貴族令嬢という感じではないな。どちらかというと使用人か…)
彼女の顔を覗き込んだ。
顔も少し痩せこけた感じだが、薄茶色の綺麗な髪が柔らかそうだ。
(連れ帰った時は気付かなかったが)
「……思いの外やさしい顔をしている。奇抜な化粧でもない。事前に聞いた話とは随分違うな」
思わずひとりつぶやく。
「かわいそうにな。おそらく王都でも辛い思いをしていたのだろうが、それでもこんな辺境には来たくはなかったに違いあるまい」
軽く、一度だけ髪を撫でた。
この時俺は、後ろでメアリーとアーナが見ていることをすっかり忘れていた。




