第12話 辺境伯様の想い
「よし、ここはこれでいいだろう」
領都から西に2日ほどかかるこの場所も魔物の討伐は一通り落ち着いた。
「これで当面の安全は確保できたものと思われます」
副団長マッツガイからも太鼓判だ。
「思ったより時間がかかった。急ぎ領都の屋敷に戻る。我が婚約者ローザも待っているからな」
団員も帰還の準備を始める。
「団長!その勢いでローザフラウ嬢に正体明かしたらどうっすか」
ダートウェルが話しかけてきた。
「それは無理だ」
「即答っすか。なんでだめなんすか?」
「俺は随分と嫌われているみたいだからな」
「そうなんすか?」
「今のまま辺境伯として会ったら王都に帰られてしまうだろう」
「なんすかそれ?」
「王命で無理矢理連れて来れられたんだ。それだけでも俺を嫌いになる理由になるだろう」
「いや、それはないかと…」
「団長!帰還の準備完了しました!いつでも行けます」
「よし、マッツガイ、出発だ」
「…」
(団長……ヘタレっす)
ーーー
「奥様、明日の朝にも騎士団が戻られるそうです」
「では、団長さんにこのお礼が言えますね」
「はい、そうですね」
私は手元の薄緑色の宝石を見つめた。
次の日はいつもより少し早めに起きて朝食をとり騎士団の帰りを待った。
「辺境騎士団、ご帰還です」
私はメアリーとアーナ、コーネルと共に玄関先まで迎えにいく。
団長さん、颯爽と馬から降りてこちらに向かってきた。
「ローザ嬢、ただいま戻った」
「団長さん、おかえりなさい。領民のための魔物の討伐お疲れ様でした。それと、綺麗な宝石をありがとうございます」
「気に入ってもらえるとありがたいのだが」
「……後でお聞きしたいことがあります」
「ん? そうかわかった」
ーーー
次の討伐の依頼も来ているが、今回は東部で屋敷から日帰りできる距離だそうだ。
明後日から討伐に出るとのこと。団長さんに色々聞くチャンスだ。
団員の皆さんとの夕食会が終わるとすっかり夜も更けていた。
騎士団の皆さんはそれぞれの住居に戻ったので今この応接間にいるのはアーナも含めて3人だけだ。
「改めて討伐お疲れ様でした。お疲れなのに時間をいただきありがとうございます。団長さんに聞くよう皆に言われていますので教えていただきたいことがいくつかあります」
団長さんが無言で頷く。
「まずは旦那様の行先です。団長さんに助けていただいてここに来てから半月も経つのに一度もお会いしていません。どこで何をされているのでしょうか」
少し落ち着かない感じで考えている。
「そうだな、旦那様は隣国で魔物討伐支援の交渉中だ。思いの外時間がかかっているので申し訳なく思っているようだ。手紙のやり取りはしたそうだな」
「はい、事務的なやり取りでしたが、思ったより丁寧に教えていただきました」
「そうか、それは良かったな」
アーナが団長さんを睨んで口をパクパクしている。
「もう一点は団長さんにいただいた宝石の意味です。私の眼の色と同じです。深い意味を疑われかねません、お返しします」
「申し訳ない、ローザ嬢」
団長さんが頭を勢いよく下げた。
「私の名前で送ったのはまずかった。それは部下にも(別の意味で)怒られた」
ちょっと顔が引き攣っている。
「怒られた?」
「ああ、実は旦那様からの依頼で私が代理で送ったものだ。その時誤って俺の名前にしてしまった。それは旦那様からの贈り物だ。返されたら私が怒られてしまう」
「なるほど、お会いもしていないのにプレゼントをくださったのですか?」
「だからこそだろう。旦那様は会えずにいてすまないと思っている」
「そうなのですか。では有り難く頂きます。旦那様にお礼をお伝えください」
「……ああ、必ず」
団長さんがほっとしている。疑ってごめんなさい。
「それと最後にお願いがあります。旦那様を待っていてはいつまで経っても領都にいけません。領都へ行くことの許可を代わりに団長様にいただきたいです。だめでしょうか?」
「領都にくらい行けばいいではないか。アーナ、なぜだめなんだ?」
アーナも急に振られてびっくりしている。
「え、奥様は買い物に行くわけではないので許可が必要と考えました」
「買い物でなければなんなのだ?」
そこは私が答えねば。
「領都の掃除です」
「なに? 掃除?」




