第92話 当然よ
―ガラクタ丸 ベルゼの自室―
「はぁ……はぁ……」
ベルゼは胸を押さえ、肩で息をしていた。
「落ち着いたかしら?」
ラグネスがベルゼに問いかける。
「………ああ……すまねえな」
「いいのよ。ま、初めて見たけどね。あんたのその状態は」
「………」
ベルゼは下を向いたまま黙る。
「対処が分かるなんてカッコつけたけど、ハッキリ言ってどうして良いか分かんなかったわよ」
「……どうしようも出来ねえだろ……こればっかりは……」
「それもそうね」
ふふっと笑うラグネス。
「……ベルゼちゃん」
「ん?」
「……分かってるわよね?もう逃げられないって……」
「……そうだな……こんな早く話すことになるとは思わなかったが……」
静かに答えるベルゼ。
「……ま、あたしも詳しい事情、知らないからちょうど良いわ」
「あんたのその体質も、原因も……」
「過去に何があったのか、洗いざらい話しちゃいなさい」
「………」
ベルゼは黙ってしまう。
「安心しなさい」
「え?」
「あんたがどんなに重いもん背負ってても、態度なんて変える気はないわ」
「ラグネス……」
「あんたが面倒な人間なんて、今に始まった話じゃないもの」
「………そうかい」
「ま、とりあえずは」
「?」
「二人を安心させてきなさい」
-ガラクタ丸 リビング-
ガチャ
「!!ベルゼ!!」
エリーネが駆け寄る。
「…………エリーネ…………」
「ベルゼ!!」
ぎゅっ
ベルゼに抱きつく。
「…………よかった………本当に………よかった………」
「…………あの、さっきは――」
「いいの!」
「え?」
「今は………いいの………」
顔を埋めたまま、震える声。
「今は………実感させて………」
「あんたが………ちゃんと生きてるって………」
「………お願い………だから………」
「…」
ぽんぽん
「…心配かけたな」
「…」
フルフル
「ふふ…」
少し離れたところで見守るラグネス。
-数分後-
「ごめんなさい。恥ずかしい所見せちゃったわね」
「お互い様だろ」
「え?」
ベルゼが気まずそうにする。
「………俺だって泣いてる所、見られちまったしな」
目を逸らすベルゼ。
「……………」
(そういえば、男の人が泣いてる所……初めて見たかも…)
「エリーネ?」
「な、なに??」
「顔赤いぞ?」
「!!?」
「大丈夫か?」
「な…」
「な?」
「なんでもないっ!!!」
「何で怒ってんの!?」
「…そういえばこいつ鈍かったの忘れてたわ」
呆れるラグネス。
「…………イリアは?」
辺りを見回すベルゼ。
「今は寝てるわ。さっきは大変だったんだから!」
「そうか………あいつ怪我とかしてねえか?」
イリアのことを尋ねるベルゼ。
「一応見たけど、大した傷は無いわよ」
「寝てる間に私の魔法もかけたから大丈夫よ」
ラグネスが答える。
「そうか………良かった………」
ベルゼの表情が、ようやく和らいだ。
「…………二人とも」
「?」
「………すまねえ」
「!?」
頭を下げるベルゼ。
「今回のこと、俺が原因だ」
「お前たちを巻き込んじまった…」
「本当にすまない…」
「…………はぁ」
ベルゼに近づくエリーネ。
「え、エリーネ……?」
「歯……食いしばりなさい」
「……っ!」
目をぎゅっと閉じるベルゼ。
「せい!」
「うっ…!」
腹を軽く殴るエリーネ。
「………へ?」
拍子抜けするベルゼ。
「…これでチャラにしてあげるわ」
「これからの分もね」
フフっと笑うエリーネ。
「……すまねえな」
頭をポリポリ掻いて謝る。
「それで、話したいことが…」
ベルゼが切り出そうとしたとき
「ストップ」
「は?」
エリーネが止める。
「あんたさっきまで瀕死だったんだから、今日くらいは休みなさい」
「いや、でも………」
「あんたの話なら、イリアと一緒に聞いてあげるから」
「…………」
「…………昨日言ってた話でしょ?」
「…………ああ」
「なら、2度も話すくらいなら、一気に話して楽になりなさい」
「というか」
「?」
「普通に二度手間じゃない」
「……………」
「くくく。確かにそうだな」
「……エリーネ」
「何?」
「………悪いな」
バタン……
ベルゼは自室へ。
「そうそう……あんたはそれくらいで良いのよ」
椅子に腰かけるエリーネ。
わずかに口が緩んでいる。
「エリーネちゃん」
ラグネスが声をかける。
「なに?」
「………あんた………マジでいい女ね………」
「さっきから私の中の評価がうなぎ上りよ………」
「………なによ、今知ったの?」
「当然よ」




