第90話 ベルゼ?
-王都ルティユシア付近-
「ちょっと!!話が違うじゃない!!」
「騎士が…なんで!?」
ガラクタ丸は騎士たちに包囲されていた。
「人間と魔族、いるのは分かっている!」
「大人しく投降しろ!」
外の騎士が叫んでいる。
「………」
ラグネスはガラクタ丸の窓から騎士たちを見回す。
騎士、騎士、騎士………
どこを見ても騎士たちが立ちふさがっていた。
「…………この人数じゃ、私でも無理ね…」
「そんな!何か方法があるはずよ!!」
「抵抗しても無駄死にするだけよ………そこでエリーネちゃん」
「な、何よ………」
「私の事、突き出してくれない?」
「………え?」
「この人数を相手にするのは無理」
「抵抗したら殺される」
「なら、人間のあんたが魔族を突き出せば、少なくともエリーネちゃんは殺されないわ」
「………そんな………」
「………人間…貴様が魔族を突き出せば、見逃してやる」
「………あいつらも同じことを言ってるわ」
「何言ってるのよ!!そんなの出来るわけないじゃない!!」
涙目で訴えるエリーネ。
「エリーネちゃん。あんたの仕事はベルゼちゃんとイリアちゃんを迎えてあげる事」
「そうじゃない?」
「……っ!!」
「……ふふ。大丈夫よ」
「…あんたの無事が確認出来たら、大暴れして何人か道連れにしてやるわ」
腕を鳴らすラグネス。
「エリーネちゃん」
「………なによ?」
「お願いがあるの」
「………お願い?」
「少し話したけど、私にはシャロンって娘がいるの」
「その子もあんたと同じで技術屋をやってるわ」
「だから、もし会うことがあったら友達になってくれない?」
「…………きっと、仲良くなれるわ」
「………………」
「………人間……魔族を突き出せ。そうすれば命だけは助けてやる」
「全く………せっかちさんね、向こうは………」
ため息をつくラグネス。
「さ、行くわよ。名演技、見せて頂戴」
「…………ベルゼちゃんとイリアちゃんによろしくね…」
(シャロン…………ごめんなさいね…………)
ラグネスがドアを開けようとした瞬間だった。
ドンッ!!
「!!??」
ラグネスが驚く。
見るとエリーネが拳を運転台に叩きつけていた。
俯いているため、表情は見えない。
しかし、台に叩きつけた拳は小刻みに震えている。
「…………ざけんな………どいつもこいつも好き勝手言いやがって……………」
低く、静かな声。
しかし、その声には怒りが滲んでいた。
「………え?え、エリーネちゃん?」
ラグネスの額に汗が流れる。
「ワタシはね…………」
「あの子たちが帰ってきたら…………」
「おかえりって言ってあげなきゃならないのよ…………」
「不安と恐怖でいっぱいのあの子たちを………」
「安心させなきゃいけないの…………」
「それなのに…………」
「アリみたいに群がってきやがって……」
「挙句の果てには」
「…………魔族を差し出せ?」
ドンッ!!
「ふざけんなあああああああ!!」
「そもそもあんた達がイリアを攫わなければねぇ!!」
「こんなことにはなってないのよ!!!」
「それなのに何上から目線で命令してんのよ!!何様!!?」
「…………邪魔なのよ」
エリーネは再びハンドルを握る。
「………ワタシは迎えに行かなきゃいけないの…………」
ぎゅう…………
ハンドルを握るエリーネの手に力がこもる。
「……………あの子たちを!!」
ブシュウウウウウウウウウウウウウ!!
シュ……シュシュシュシュシュ!!!
「そこをどきなさい!!」
「じゃないと!!」
「ぶっ壊す!!!」
ガラクタ丸が地響きを立てて動き出す。
-王都ルティユシア 城下町-
「いたか!?」
「いや、まだだ」
「探せ!逃がすな!」
「……………行ったみたい」
イリアは物陰から飛び出す。
「ベルゼ!がんばって!」
(今が夜で良かった……!)
ベルゼは自力で立つことも出来なくなった。
傷が深く、血も流れている。
今はイリアが背負って駆け抜けている。
「だい…じょ………だ…」
「ね…りゃ…なお…る…」
「そんな傷で意地張らないの!」
「絶対に助けるから!」
「…そ…と…に…」
「が…ら…く……ま」
「えり…ね…と…らぐ…ね…が…」
「分かった!それまで頑張って!」
イリアは街の外へ駆け出す。
「…………」
「…………」
「イ………イア………」
「なに?」
「もど…たあ…ど……する?」
「…………そうだね」
「まずは皆に謝らないとね」
イリアはベルゼを背負いなおし、足を速める。
「………はは」
かすかに口元が緩む。
「エリーネとラグネスさん、それにイリスちゃんにもね」
「あとはエリーネと仕事を手伝って、昼間はイリスちゃんや皆と遊ぶの」
「ベルゼもたまに一緒に遊ぼうよ!」
「工房が好きなのは分かるけどさ」
「……あぁ」
「それでまた、いつもの旅の日常に戻ってさ」
「ベルゼとエリーネが修理して、アタシが魔法で部品を加工して」
「お客さんの笑顔、また見たいな」
「……」
「そうだ!エリーネは頑張り屋だから、最後はちゃんと褒めてあげてよね!」
「あの子、意外と落ち込みやすいからね」
「慰めるの、けっこう大変なんだよ?」
「…」
「それで、直ったら皆でありがとうって言って」
「その後はリビングで皆と話したい!」
「‥」
「エリーネの機械話やベルゼのくだらない話」
「アタシが楽しかったこと」
「そんな毎日をずっと過ごしたい」
「ねえ?ベルゼはどうしたい?」
「ベルゼ?」




