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ブレイクギア ー荒野を駆ける巨大な蒸気工房ー  作者: すのもとまさお
第7章 王都とクロノスとベルゼの罪

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第87話 卑怯者ですね、彼は


-王都ルティユシア城 客室-


「ごちそうさまでした」

しっかり平らげるイリア。


「美味しいけど、普段のご飯の方が好きだなぁ」

平らげといて文句を言う。


「よし!早くここから出ないと!」

腹をさすりながら決意する。


その時だった――


「失礼致します」

「!?」


騎士が入ってきた。


「ルーカス様がお呼びです」

「ご準備が出来たら、ご同行ください」

「それでは」


騎士が部屋を出ようとした時、テーブルの食器を見た。


「……………………」

「……………………!!?」

二度見していた。


直後、イリアを見る。


「な…何よ!?」

「い、いえ…扉の前で待ってますので」

「ご準備が出来たらお呼びください」

バタン


「アタシが魔族だから…警戒されてる…?」


持ってるレンチに魔力を流す。

何も起きない。


「……やっぱダメか……魔法潰しが発動してる」

「…………今のところ、危害は加えてこないし」

「…………ついていくしかないか」


イリアは扉を開け、騎士についていく。


-王都ルティユシア城 玉座の間-


「ルーカス様。お連れいたしました」

「ご苦労。下がって良いぞ」

「はっ!失礼致します」


騎士が部屋から出る。


奥へと長く伸びる部屋。

そこには、イリアともう一人しかいなかった。

部屋の最奥。 玉座には一人の男が座っていた。


王……という割には若く見える。

どう見ても20代前半の男。

長い黒髪で精悍な顔つきだった。



「はじめまして。イリアさん」

「この国を統べる王、ルーカス………いえ………」

「…………あなたには本名をお教えします」

「…………え?」

(…………本名?)




「…………本当の名はクロノスと申します」




「以後、お見知りおきを………」

穏やかな表情で挨拶をする。


「あ………!こちらこそ!」

お互い頭を下げる。



「お食事、いかがでしたか?緊張で喉を通らなかったと思いましたが………」


「あ、ごちそうさまでした。美味しかったです」

ペコリ



「……………え?」

「え?」


「………食べられたんですか?」

「??はい。お腹が空いてたので」

「そ、そうですか………」

額に汗を流すクロノス。



「あ!!食べちゃまずかったですか!??」

「ごめんなさい!全部食べちゃいました!!」

「………」


スッ…………

「お金、払います………」

そう言いながら財布を取り出すイリア。


「い、いえ!!大丈夫です」


頭を抱えるクロノス。

深呼吸をする。


「………面白い方ですね………」

そう言って、クロノスは玉座から立ち上がり、イリアに近づく。


「!!?」

イリアは身構える。


……しかし。



「!!?」

あろうことか、王であるクロノスがイリアに対して頭を下げた。


「まず、突然お連れして申し訳ありませんでした」

「用が済みましたら、すぐにお帰しいたします」

「………もう少しだけ、お付き合いいただけると助かります」

頭を下げながら話すクロノス。


「あ……いえ!!そんな!!顔をあげてください!!」

「……寛大なお心遣い、感謝いたします」

クロノスはゆっくりと顔を上げる。


「……」

イリアは呆然としていた。


「……私は魔族を迫害している側……いわば、あなた方にとっては敵になります」

「ですが今、あなたに危害を加えるつもりはございません」

「もちろん、お仲間もです」

「………どうか、いつも通りでお願いします」

にっこりとイリアに笑いかける。


「じゃあ…………聞きたいんだけど…………」

「なんでしょう?」



「どうして、アタシたち魔族を差別するの?」

「……………」

「アタシたちは魔法が使えるだけのただの人間だよ?」

少しの沈黙。


クロノスは顎に手をあて、考えていた。


「ただの人間………本当にそうでしょうか?」

「え?」


「人間は未知なるものに対して強い恐怖を感じます」

「その未知なる恐怖を排除する……民を守るためには、当然の行いだと思いませんか?」

「そ、そんな………!!?」


「それに恐怖の対象は魔法だけではありません」

「例えば………蒸気機関」

「これだってあなた方にとっては、恐怖の対象です」

「………何言ってるの?今の時代、蒸気機関なんて、目にしないほうが珍しいじゃない」

「………アタシの村にはなかったけど」

「たしかに、一見、恐怖の対象ではありませんね」

「ですが………オートナイツ、そして蒸気騎士」

「!!?」

「これも恐怖の対象ではないと?」

「…………」

「……あなた方は、これらを排除していないとでも……?」

「そ、それは…………」


「申し訳ありません。別に責めるつもりはありません」

「ですが………」



「理解できないものは、時に人より恐ろしい……それはお互い様、というわけです」

「…………」


「それだけではありません」

「……?」


「………ベルゼ」

「……っ!?」

(なんで……ここでベルゼが出てくるの!?)


「あなたは…彼の事をどれだけ知っていますか?」

「え……なんであなたがベルゼを……?」

「…………」

クロノスはイリアを睨む。


「……っ!!?」

「……どこまで知っていますか?」

口調は丁寧なのに、どこか怒りを感じる。


「………機械オタクの……無神経で、手のかかる弟みたいな……そんな奴……」



「……なるほど………あなたにはそう見えているんですね」




「では、過去の彼やあの力の事をあなたはご存じでしょうか?」

「え…何それ…?」

「……やはり知りませんか………」



「卑怯者ですね、彼は」

「!!?何言ってるのよ!!なんであんたなんかに!!」






「黙れ」






「…………っ!!!?」

…………ただ静かにたった一言。

それがイリアの恐怖をかき立てた。



「おっと、申し訳ありません」

顔を隠し、息を深く吸う。


「大変失礼いたしました」

再び笑顔で話し続ける。


「………」

(……なんなの?この人……)


「………………詳しくは」

「後ほど彼がここに来た時にでもお教えいたします」

「………え!?」

「………」


クロノスは玉座に戻る。


「………ヤツは今、あなたを助けにここに向かってます」

「ベルゼが………!?」


「ええ」

「ですが…」

「今のヤツは…焦っているでしょう」

「大切なものを失う恐怖は、何事にも耐えがたい」

「…彼は今、その胸中にいるはずです」


「な、なんであなたにそんな事が分かるのよ!!」

「…」

「…ヤツの事は分かります…」

「なんせ…ヤツとは…」

「…かつての仲間であり…」






「………元………親友………」

聞き覚えのある声。


「…そう言いてえのか?…クロノス」

「!!」

イリアが勢いよく振り返る。

そこに立っていたのは――

「ベルゼ!!」


「…来たか…」

クロノスの眉間にシワが出来る。

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