第86話 頼りにしてるぜ
-荒野-
3人を乗せたガラクタ丸は荒野を走る。
運転はエリーネに任せていた。
ベルゼは運転席の隣に立っていた。
二人から少し離れたところに、ラグネスは腕を組んで壁にもたれかかっていた。
「ルティユシアってさ…」
「ああ。王都ルティユシア…………騎士様の本拠地だな」
「まさか、そんなところにあたしが向かうなんてね」
ラグネスがぼやく。
「ああ。だが、俺たちには危害を加えないよう、騎士に伝えてるらしい……そうだよな?」
「ええ……イリアを連れていくとき、ワタシ達に危害は加えないって言ってたわ……」
「………ずいぶんなVIP対応だな。こんな魔族と犯罪者共に」
「………」
エリーネの口数がいつもよりも少なかった。
「エリーネ」
「な、なによ」
「…怖いか?」
「な、何言ってんのよ!!そんな訳ないじゃない!!」
前を向いたまま、返事をするエリーネ。
「そっか…頼りになる」
「え…?」
「俺は…怖い」
「!!?」
エリーネは目を見開いた。
「今から会う相手は俺と因縁のあるやつなんだ」
「………正直、かなりビビってるぜ………」
…わずかに、ベルゼの手が再び震える。
「あいつがまさか生きてたなんてな………そら、こうもなるか………」
(………くそ。近づくにつれてまた震えてやがる…情けねえ……)
キキー!
ガラクタ丸は停止した。
「エリーネ?どした?」
不思議そうにエリーネの顔を覗き込んだ。
「ベルゼ」
パシッ!!
「!!」
エリーネがベルゼの震える手を握る。
「………大丈夫よワタシ達がいる」
「エリーネ………」
「あんたは大船に乗った気持ちで、イリアを連れて帰って来なさい!」
「………ああ」
「頼りにしてるぜ」
「相棒!」
「!!」
「任せなさい!!」
「この子………やるじゃないの………」
ラグネスは少し離れたところで二人をそっと見守る。
-王都ルティユシア 城下町 正門-
「………ルーカス様の客人か」
「客人…………ねぇ………」
ベルゼは正門の騎士と話すためにベランダに立っていた。
「通れ」
「こいつも入れて良いのか?」
ガラクタ丸を指す。
「……その蒸気車を通すことは許さん」
「そうか…」
ベルゼはそう言い、運転室にいったん戻った。
「二人とも、悪いがここまでだ……待っててくれるか?」
「はぁ……何言ってんのよ……当然でしょ」
拳を突き出すエリーネ。
「二人が帰ってくるの、待ってるわよ!」
ウィンクするラグネス。
「………イリアの事は任せろ………必ず連れて帰る」
「………あんたも無事にね」
コツン……
二人は拳を突き合わせる。
「………行ってくる」
ベルゼは運転室からベランダに出る。
ダッ!!
スタッ!!
ベルゼはガラクタ丸から飛び降り、石畳に着地した。
スッ…
ブレイクギアを装着。
ベルトをいつも以上にきつく締める。
「……フゥ………」
静かに息を吐く。
「……約束は守れよ。こいつらの分もな」
ベルゼが騎士に忠告する。
「ルーカス様には魔族だろうと何だろうと手を出すなと言われている」
「………通れ」
「………よし」
ベルゼは城へまっすぐ向かう。
「………ベルゼ」
エリーネは運転室から出た。
城に向かって城下町を歩くベルゼ。
エリーネは、その後ろ姿をじっと見つめていた。
「……あいつなら大丈夫よ。イリアちゃんと一緒に絶対に帰ってくるわ」
「……ええ」
エリーネは声を絞り出して返事をする。
-王都ルティユシア城 客室-
「zzzzzうへええ………もう食べられないよ………」
「zzzzzzz…ん‥‥」
イリアが起き上がる。
「んーーー!!よく寝たぁ!」
「…………って、あれ?」
「ここどこ?」
辺りを見回すと全く見覚えのない部屋。
壁や天井には豪華な装飾が施されている。
「!!そうだ………アタシ………あの後、眠らされて………」
その時だった――
「イリア様」
入ってきたのは騎士だった。
「!!??」
身構えるイリア。
「ご安心ください。危害を加えません」
「………え?」
「お食事をご用意いたしました」
「………何………?」
カラカラと運ばれる料理。
今まで食べたことのないような豪華な食事だ。
「それではごゆっくり」
バタン…
「え………?何これ………?」
背筋がぞっとする。
運ばれた料理を見つめる。
「毒はないよね………?」
ぐうううううう………
「……………………」
「いただきます」
パクッ
「あ、美味しい」




