第82話 来たらぶっ殺すわよ!!!
-バー 店内-
「イリアちゃん!2番テーブルお願い!」
「はい!」
「エリーネちゃん!笑顔が硬いわ!ソフトよソフト!!」
「…………」
「エリーネ?」
「何してんのワタシ!??」
フリフリの衣装を身にまとい、店内で叫ぶエリーネ。
-数時間前-
「お店の手伝いは助かるけど、特訓はなしよ」
「え!?」
「今のあんたは色んな相手と戦って経験を積むこと。私ばっか相手にしてたら、変な癖ついちゃうわ」
「そ、そうですか…」
「だから…励みなさい。それでもっと強くなったら、今度は手合わせお願いするわ」
「!!…はい!」
「で、そこの小娘」
エリーネを指さす。
「わ、ワタシ!?」
「あんた、名前は?」
「え………エリーネです………」
「ふむ」
エリーネを見渡すラグネス。
「うん。ちんちくりんだけど良いじゃない」
「ち………ちんちくりん………」
「イリアちゃん」
「はい?」
「この子もいいかしら?」
「もちろん!」
「…………え?ワタシの選択権は?」
-そして現在-
「はぁあああ………」
椅子にぐったりするエリーネ。
「あんたと同じ反応してるわね。イリアちゃん」
「まぁ最初は大変ですからね…」
「もう無理もう無理もう無理もう無理もう無理……………」
虚ろな目でぶつぶつ言っているエリーネ。
「……あんたの時よりダメージ受けてるわこの子……」
「ははは……」
「エリーネ、大丈夫?」
「あんま大丈夫じゃないわね……接客業なんて初めてよ……」
「ごめん」
「え?」
「アタシが無理に誘っちゃったのがダメだったね」
「誘ったっていうか、強制だけどね」
「エリーネ、可愛いから、きっと向いてるかなって思ったんだけど……」
「………」
「仕方ないわね!」
「!?」
「明日もあるんでしょ!付き合ってあげる!感謝なさい!」
「うん!!」
ぱぁっとイリアの顔が明るくなる。
「エリーネちゃん……あんた、意外と苦労人ね……」
「そういえば、アイツは?」
「ベルゼちゃんは別の仕事してもらってるわ」
「別の仕事?」
「この店の設備の点検してもらってるわ」
「……ワタシもそっちが良かったかも……」
「いつもは娘にやってもらってたんだけど」
「そっか…シャロンさん、今は旅に出てるんですもんね」
「ええ。ま、あの子の事だから心配ないけどね」
「イリア」
「どしたの?エリーネ」
「シャロンさんって?」
「ラグネスさんのお子さんでアタシの友達だよ」
「!!?」
「アンタの…友達!?」
「うん!あとベルゼの弟子って言ってたなぁ」
「!!?」
「あいつの…弟子!?」
「うん。アタシの今の戦い方のヒントをくれた人でもあるんだ」
「…」
「エリーネ?」
「…負けてられないわ」
「!!?」
「いくらキャラポジが被ってても!」
「イリアの友達としても、あいつの弟子としても!」
「絶対に負けないわよ!!」
エリーネの目に炎が宿り、背後にもメラメラと炎が燃え上がる。
「いや、それ何の戦いよ…」
呆れるラグネス。
-バー 設備室-
「…」
今見てたけど、あんま問題ねえな。
まぁ、この前からそんなに経ってねえから、こんなもんか。
それに
多分、シャロンが最後見てるなこれ。
…あいつどうしてっかなぁ…?
…最近、エリーネと比べちまうことがあるが
やっぱタイプ違うな。
シャロンは俺と同じ、現場たたき上げだが
エリーネはまず、理論から入るからな。
頭使う仕事してたから、当然ちゃあ当然だが…
「くくく」
昔のシャロンも理屈っぽいとこがあったな。
そういう意味だとエリーネに少し似てるな。
だが、タイプが全然違うから、おもしれえもんだ。
「あれ…?俺、育てるの、結構好きなのか?」
今までは機械に関係あるから良いと思ってたが
こうやって、比較して、育つ姿を見るのも良いのかもしれねえ………
「………気持ち悪っ!」
「やめだやめだ!」
必死に頭を振る。
-ガラクタ丸 リビング-
「帰ったぞー」
「おかえりー」
「………」
「うぉ!見事に死んでるな」
「うっさいわね…」
「どうする?明日は俺に付くか?」
「え!?」
目を輝かせるエリーネ。
「………やめとくわ」
すぐ伏せるエリーネ。
「お、珍しいな」
「明日もこの子と一緒に仕事するわ」
「エリーネ。無理しなくても…」
心配そうにするイリア。
「無理じゃないわ」
「………ワタシがあんたと一緒にいたいのよ………」
「………察しなさい」
顔を伏せるエリーネ。
耳が赤くなっている。
「エリーネ………」
「お前…いつか身を滅ぼすぞ………」
「………あの子の顔見てたらそんなことも言えないわよ………」
「………」
「めっちゃ納得してるわね」
「………うるせえ」
「そういえばベルゼ」
「ん?どした?イリア」
「ベルゼって明日はどうしてるの?」
「別に壊れたところねえし、明日は工房でなにかいじってるかな」
「あ、それならお店に来てよ!」
「!!??」
エリーネがガバっと起きる。
「え、いや、俺、あそこで働きたくないんだけど」
「そうじゃなくて、お客さん!」
「………ああ………」
「ラグネスさんも寂しがってたよ?」
「いや、あの………お前は良いの?」
「何が?」
「あの恰好、俺に見られるんだぞ?」
「…………??なんで?可愛いじゃん」
「………え?」
固まるベルゼとエリーネ。
「まぁ………お前がそう言うなら――」
「ダメ!!」
エリーネが割って入る。
「絶対に来るんじゃないわよ!!」
「来たらぶっ殺すわよ!!!」
「え、エリーネ………?」
目を見開いてエリーネを見るイリア。
ふぅふぅと息が荒いエリーネ。
「お、おう、分かったよ」
結構引いてるベルゼ。
「俺、ちょっと工房に行ってるわ」
「はいはい」
ドアの前で立ち止まる。
「イリア、エリーネ」
「なに?」
「なによ?」
「…」
「近いうちに話したいことがある」
「?」
「…」
「今はまだ話せねえが」
「そん時は聞いてくれるか?」
「当たり前でしょ?」
「当然よ」
「…わりいな」
ベルゼは工房へ向かった。




