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ブレイクギア ー荒野を駆ける巨大な蒸気工房ー  作者: すのもとまさお
第7章 王都とクロノスとベルゼの罪

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第80話 お姉ちゃんたちも好きでしょ?


-バー 地下訓練場-


「あいつはそろそろ落ち着いたかしら?」

階段を降りるラグネス。

「ベルゼちゃ――」

訓練場を見て、言葉が止まった。


周囲には誰もいない。

なのにベルゼは、そこに敵がいるみたいに拳を振るっていた。

踏み込み、避け、反撃する。

一人で戦っているはずなのに、確かに“相手”が見えているようだった。


「はぁ……はぁ……」


ベルゼは動きを止め、膝をついて荒く呼吸する。



「………あんた…ずっとやってたの…?」

「…ああ、ラグネスか…」

ようやく気付いたベルゼ。


「あんた何してんのよ……?」

ラグネスは怪訝そうに眉をひそめる。


「…中身が弱くなってんなら、せめて外だけでも強くなっておこうと思ってな…」

「…頭良い癖に…相変わらず、脳筋ね…」

呆れたようにため息をつくラグネス。

「………その頭がどうにかなりそうなんだよ………何かしてねえとな………」

その声には、いつもの威勢が感じられない。

「…………」

ラグネスはベルゼをじっと見る。

その表情はまだ硬く、眉間には深いしわが刻まれていた。


「……仕方ないわね」

パサ……


そう言うと、ラグネスは上着を脱ぎ、そのまま落とす。


「……んぁ?」

ベルゼがラグネスを珍しいものを見るかのよう目になる。


ラグネスはベルゼから数歩離れた距離まで歩み出し、くるりと振り返った。


そして――

「……かかってらっしゃい」

静かに構える。


「良いのか?いつもは嫌がるくせに」

心配そうにラグネスを見る。


「……ふふっ」

「?」


「今のあんたなら、私でもボコれるわよ」

不敵な笑みを浮かべるラグネス。


「……上等だ……あの時からどれだけ強くなったか見てやるよ」

ニヤリと笑い、ベルゼは再び構える。



「ええ」

ラグネスがベルゼをジッと見据える。




「行くわよ《《師匠》》」

「かかって来な」


次の瞬間。




ドゴォッ!!

地下訓練場に激しい衝撃音が響いた。





-マイエル 商店街-


「おっかいものー♪おっかいものー♪」

石畳の上を小さな体を弾ませながら、先へ先へと歩き出すイリス。


「こらこら。一人で行っちゃダメよ。ほら、手だしなさい」

エリーネがイリスに手を差し出す。


「うん!お姉ちゃんも!」

「はいはい」

イリアとも手を繋ぐ。


「へへへ!」

イリスは二人に手をつながれ、満面の笑みを浮かべていた。



「…イリア…」


「騎士の皆さん!こっちです!」

「まだ何言ってないわよ!!」

イリアに全力でツッコむエリーネ。


「にしても…ベルゼに花なんて似合わないと思うのだけど…」

エリーネは話題を変えるように口を開いた。


「まぁ、イリスちゃんがお見舞いの花が欲しいっていうから…」

「……イリスちゃんは優しいわね」

エリーネの隣を歩くイリスに視線を落とす。


「この子、あいつにも懐いてるのね…意外だわ…」

「お兄ちゃん、優しいよ?」

イリスがキョトンとした表情でエリーネを見上げる。


「………そ、そうね……」

なぜか苦虫を噛むような表情をするエリーネ。


「イリスね!お兄ちゃんも好きだよ!」

「お姉ちゃんたちも好きでしょ?」


「は、はぁ!!」

顔が赤くなるエリーネ。


「そうだね。手のかかる弟みたいだけど」

普通に答えるイリア。


「!!?」

エリーネは勢いよくイリアを見る。

(なんでこの子普通に答えられるの!?)


「えいーねお姉ちゃんは好きじゃないの?」

「…え?」

「嫌い?」

「…い、いや……嫌いじゃないわよ……?」

「……」

不安そうにエリーネをジーっと見るイリス。


「ああ……ええ……っとおお……」

しどろもどろになるエリーネ。

イリスの純粋な瞳が、彼女には妙に効いた。


「……むしろ……」

「??」

「そう!尊敬よ!尊敬!」

閃いたかのように答えるエリーネ。


「そんけー?」

「そうそう!」

エリーネはものすごい勢いで首を縦に振る。


「ベルゼはね!機械の事に詳しいのよ!ワタシに色々教えてくれるの!」

「ああ!お兄ちゃん、すごい頭良いもんね!」

「そ、そうよ!だから、好きというより、尊敬してるの!」

「そっかぁ!!」

パァッと笑顔になるイリス。

納得してくれたようだ。


「お姉ちゃん」

今度はイリアに向く。


「なぁに?」

「そんけーってなに?」

「……んー……そうだなー……」

イリアは唇の人差し指を添えて、目線を上に向ける。


「…その人の事、すごいって思うことだよ」

「そっかぁ!」

再び、パァっと笑顔になる。


「じゃあ、イリスもね!お姉ちゃんたちもお父さんも、お姐さんたちも尊敬してるよ!」


「……………お姐さん?」

エリーネは首をかしげる。


「バーの店員さんだよ」

「…まさかとは思うけど…」

「うん。全員オカマ」


「………………」





「さっきからキャラが濃い奴ばっか!!!!」

エリーネの悲痛な叫びが商店街中に響き渡った。



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