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ブレイクギア ー動く工房の破壊整備士と創造の魔族少女ー  作者: すのもとまさお


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第8話 とりあえず触れ。出来る出来ないはそれからだ

―ガラクタ丸 リビング―


「………」

イリアは椅子に座り、下を向いている。

手にはオルゴールが握られている。


「ごくごくごく…ふぅ。一仕事終えたのは良いが、タダ働きになっちまったなぁ」

「………」

「さっきの事、まだ気にしてんのか?」

「………」

ベルゼは頭を掻く。


「それ」

「………え?」

「見してみろ。頼まれたんだろ」

「あ…」

イリアはオルゴールを手渡す。


ベルゼは一通り確認する。


「やっぱりな。ここ見てみろ」

「え…?」

「ピンが折れてる。だから音が途切れるんだ」

「そうなんだ」

「…ってことで」

「??」

「これ、お前が直せ」

「…は?」

「のんびり行ってやるから、次の町までによろしく」

「ちょ!ちょっと!アタシの魔法じゃこんな細かい作業無理だって!」

「いつも部品生成してくれてるじゃん」

「物の形は変えられるけど、くっつけるのは無茶だよ!」

一瞬、沈黙。


ベルゼはオルゴールを軽く持ち上げて──

「とりあえず、触れ」

「え…」

「出来る出来ないは実際にやってから決めろ」

「話はそれからだ」

「ちょ…ちょっと!!」

「工房内の端材なら好きに使っていいぞ」


ベルゼはそう言って、運転席へ。


――残されたイリアは、しばらく動けなかった。

「……強引なんだから…」

小さくそう呟く。

けれど──

少しだけ、口角が上がっていた。


―ガラクタ丸 工房内―


「まずは…練習しないと…」

「いきなりは壊しちゃうから…」

イリアは端材を手に取り、向かい合わせる。

そっと魔力を流すと、

じわりと境目が溶けるように繋がっていく。


「……」

魔力を止める。

一見、くっついている。


だが――


「…やっぱり、弱いな…」


軽く力を加えると、あっさりと外れた。

「やっぱ難しいな…」

イリアは眉を寄せる。


それでも――

もう一度、端材を手に取った。


何度も

何度も

結合させる練習をした。


だが、一向に上手くいかない。


「…アタシじゃ…やっぱ無理なのかな…」

心が折れかけた時だった。


バァン!


工房のドアがいきなり開いた。

「ほいほい。ちょっと失礼」

「ベ、ベルゼ!?」

ズカズカと工房内に入ってくる。


「で、どうよ?」

「…やっぱアタシの魔法じゃ結合までは無理みたい」

「そっか。ま、時間あるんだし、もうちょいやってみ」

「…うん」

ベルゼは工房内の荷物を漁っていた。


「なにしてるの?」

「ん?溶接機出してんのよ」

「え?」

ベルゼが引っ張り出したのは背負い型の溶接機だった。


「それでこれ直せない?」

わずかな希望をベルゼに向ける。

「ん?無理」

「即答!?」

秒で却下された。


「そうじゃねえよ」

「え?」

「こいつじゃあこんな細かい部品、全部溶ける」

イリアはオルゴールを見る。

小さなピン。

繊細な歯車。

「……そっか」


イリアは深呼吸をする。


「…もう少し頑張ってみるよ」

「おう。じゃ、ちょっと客の相手してくるわ」

ベルゼはそう言って、外へ出ていった。


「溶ける…か…」

端材を手に取る。

(今までのやり方がダメなら…)

魔力を流す。


「……っ」

――外れない。

わずかに、手応えがあった。

だが、

「……まだ、甘い」


イリアはもう一度、魔力を流す。

何度も、何度も試す。



-夕方-


「おーい。飯だぞー」

「スースー…」

「…寝てるのか」

オルゴールをチラッと見る。


蓋を開け、中を見る。


ふっと、口の端を上げる。


「…上出来じゃねえか」

オルゴールのピンは、根元にまるで溶かしたような跡があった。

見た目は不格好。

だが――

触れても、びくともしない。



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