第78話 ……しっぽ巻いて逃げる気か?
-マイエル ラグネスのバー-
「ラグネスさん!!」
「イリアちゃん!!」
ぎゅうううううううう!!
お互いハグしあう。
はたから見れば、屈強なオカマと美少女。
「…………………」
「ベルゼちゃんも、珍しいじゃない!いつもより来るのが早くないかしら?」
「…ああ。ちょっと用があってな」
「用?」
「そうだ!ラグネスさん!ベルゼの傷を見て欲しいんです!」
「………傷?………こいつの??」
ラグネスがベルゼを指さす。
「…………………」
「うん。また無茶して、すごい火傷してます!見てもらっていいですか?」
「………それっていつ?」
「2日前の昼です」
「………結構経っちゃってるわね、ベルゼちゃん」
ベルゼに視線を向けるラグネス。
「………」
ベルゼは目を合わさない。
「…………………」
「イリアちゃん」
「はい!」
「こいつ下に連れて治療するわ」
「………お願いします!」
頭を下げるイリア。
「その間、その子連れて、街を案内してあげなさい」
エリーネを指さす。
「……っ!!??」
ビクッとするエリーネ。
「ねっ!」
エリーネにさらにウィンク。
「…………………!!!??」
さらに固まるエリーネ。
「じゃ、下に行くわよ」
「……二人とも、また後でな」
「うん。ちゃんと治してもらってね!」
「………ああ」
二人は下に降りていく。
「……イリア……」
「ん?なに?」
「………ぐす」
「!!??」
案内どころじゃなくなったイリアだった。
-バー地下訓練場-
「ベルゼちゃん………あんた……まだ話してないのね……」
「…話せるようなもんじゃねえだろ」
「ま、それもそうね………」
「包帯………もう取っちゃうわよ」
「………ああ」
ラグネスは包帯を取る。
その腕には火傷がない。
跡すらも…………
「まぁ、でもあんたさ………このままだといつバレてもおかしくないわよ……?」
「……分かってる」
「………」
「ベルゼちゃん?」
「ん?」
「………何があったの?」
「………」
「………分からねえ」
「え?」
「最近、イリアと話すと変になる」
「………どういうこと?」
「………イリアとあいつが被る」
「性格も、顔も、何一つ似てねえ」
「それなのに、出てきやがる………」
「………」
「それだけじゃねえ」
「あいつの何かが入ってきやがる」
「『何か』って………何よ………?」
「分からねえ………」
「でも、そいつが………」
「邪魔して来やがる」
「ああちくしょう…………!!」
右手で頭をかきむしる。
「訳が分からねえよ…………!!」
「………」
「そのせいか、最近、弱くなってきてやがる」
「………弱くなってきてる?」
「昔ならこんなこと気にもしなかった」
「その場で何とかすりゃ良いだけだ」
「………なのに」
「怖え」
ベルゼは震える腕を組む。
「何かが起きるのが怖え………」
「俺………何が起きてる?」
「教えてくれ……ラグネス………」
「…………」
ラグネスは目を閉じ、腕を組んで黙ってる。
「お前でも………分からねえか………?」
「あんたバカね」
ため息をつく。
「…………」
「私はあんたじゃない」
「あんた本人が分かってないものを私に分かると思う?」
「………」
「ただね」
「?」
「全部が全部、悪い変化じゃない………きっとね」
ラグネスの口が緩む。
「……どういうことだ?邪魔して来やがるんだぞ……」
「こうは考えられない?」
「??」
「傷が癒え始めてる」
「………はぁ?」
「でも、それが元にもどる」
「………」
「だからパニックになってる」
「そんなところかしらね」
「………」
「ま、これは私の推測だから、自分で納得できる答えを見つけなさい」
「………」
「あと」
「?」
「あんたのこと、仲間にちゃんと話しなさい」
「………は?」
「このまま隠し通すなんて、無理よ」
「………」
「それに……」
「??」
「……話すべきよ。あんたにとって、あの二人はもうそういう存在なのよ。きっと」
「だから………それは………」
視線を逸らすベルゼ。
ラグネスが胸倉を掴んで持ち上げる。
「てめえ、甘ったれてんじゃねえぞ」
「………」
「あいつら仲間だろ?」
「ホントは信じてえんだろ?」
「その気持ちに…………しっぽ巻いて逃げる気か?」
「………」
ベルゼを降ろす。
「もう一人の子はまだ分かんないけど、イリアちゃんなら大丈夫よ」
「あの子、あんたが思ってるより、ずっと強いわよ」
「………」
「仲間なんだから、一緒に背負って貰いなさい」
「ちゃんと頼りなさい」
「もちろん、私にもよ」
「…………ま、ここでしばらく考えてればいいわ」
階段の方へ向かうラグネス。
「じゃ、息苦しい場所だけど、ごゆっくりー」
タッタッタ
ラグネスは階段を上がっていった。
………………あるわけねえだろ。
………………俺に。
………………そんな資格がよ。




