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ブレイクギア ー荒野を駆ける、破壊と創造の蒸気工房ー  作者: すのもとまさお
魔力切れとベルゼの異変と春美月の花畑

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第72話 ……あいつ使うか……


-ガラクタ丸 リビング-


「よし。今から向かうぞ」

「お前はイリアを見ててくれ」

「そうね。運転できないのは残念だけど、ワタシもあの子の傍にいたい」

「頼んだ」

「任せて」

エリーネはイリアの部屋へ向かう。


「……春美月……か」

「……あいつと……よく見てたっけな……」


-イリア 自室-


「スー……スー……」

「寝てるわね……」

(そういえば……こんな何もないのは初めてね……)


(王立でも図面ばっか書いてたし、ここだと機械ばっかいじってるし……)


「ど、どうしたら良いのかしら…?」

オロオロ。


(イリアが起きてたら、ワタシの理想の機械を話したりするんだけど…)


(流石に起こすわけにもいかないし……)

(っていうか、具合悪いのにこんな話するわけにもいかないわね……)


「あれ?ワタシ、本当に何したら良いのかしら??」

さらにオロオロ。


エリーネはかつてない困難に陥っていた。


「とりあえず、見てろって言われたから…」










「………見てれば良いのかしら……?」


じーーーーーーー


「……」

「……」


(…………ん…………???)




(なんか……すっごい見られてる……なんで???)

(……お…………起きれない……)


しばらく謎の攻防が続いた。




-荒野-


春美月の咲く場所までガラクタ丸を走らせるベルゼ。


-その時だった。


「そこの蒸気車!止まれええええ!!」

外から大声が聞こえる。


「……うるせえな……」

仕方なく、外へ出る。


「……なに?」

ベルゼが外に出る。


そこには騎士が2人いた。

「このやたらデカい蒸気車、以前、王立蒸気車研究所を襲撃した時もデカい蒸気車が目撃されているが……何か知ってるか?」

「……知らねえな」

「……」

「……」

沈黙が走る


「しらばっくれるな……こんなでけえ蒸気車、他にある訳ないだろ?」

「…貴様が襲撃者だな」



「……」








「だったらどうする?」


「貴様!!」

そう言って騎士二人は剣を構える。

シュウウウウ………

剣から蒸気音が鳴り響く。


「…………俺はなぁ……今急いでんだよ」



「………めんどくせぇ……」

ブシュウウウウウウ!!

ベルゼのブレイクギアから蒸気が激しく噴き出す。



-イリアの部屋-


数分後


「あら?ベルゼ…って、なんか汚れてない??」

「ああ。騎士ぶっ飛ばした」

「は?いつ?」

「ついさっき。5分もかかってねえな」

「ああ!もう!はたくからこっち来なさい」

「大丈夫だ。それより」

「?」

「もうすぐ着く。準備だけしてくれ」

「……だめよ。イリアを置いていけないわ」

「……まだ起きねえのか?」



「ええ。もしかして……体壊したのかしら……?」


「魔力切れなら安心しろ。身体が重くなるだけだ。死ぬことはねえ」


「でも、さっきから起きないのよ……」

「……マジか」

「ええ…いくら死なないと言っても……さすがに心配よ……」

「相当魔力使いやがったな、この馬鹿」

イリアを見るベルゼ。


「言い過ぎよ…この子はあの人たちのためにやってたんだから……」

「……正直、あの人たちにまだ腹が立ってるけど」

「でも、この子の頑張りだけは否定したくない……」

エリーネはイリアの手を握る。



「……ったく、しゃあねえな」

頭を掻きながらベルゼは言う。


「……花摘んできてやるから、お前はイリアの傍にいてくれ」


「……ありがとう」

「……礼を言うのはこっちだ」


「ふふ。なにそれ」


ベルゼが部屋を後にする。


(……起きてるなんて言えない…)

(……余計に起きづらい……)

(……どうしよう……)

まだ続いていた。




-春美月の花畑-


辺り一面が春美月の黄色い花に包まれ、甘い香りが漂っていた。


「……春美月の花畑か……久しぶりだな………」


「……最後は……あいつと一緒にいた時だったか……」


「………」


「……まぁ良いや。さっさと摘んでいくか」



「………流石にガラじゃねえしな………」


-その時だった。


「わああああああ!!」

「!?」


つんざくような叫び声。


その方向を見る。


そこには巨大な蜂がいた。


「げ。キングビーか」

「こいつら、確か花食うよな??」


「……こいつか……?」

春美月をチラッと見る。



「………冗談じゃねえ………」

「…………食われてたまるかよ…………」


スッ………

ブシュウウウウウウウウウウウウ!!!


ブレイクギアが唸る。


ダッ!!


一気に距離を詰める。

「どけ!!」


逃げ惑う人を飛び越え、キングビーの顔面に拳をねじ込む。


ドサッ!!

キングビーはそのまま地面へ叩きつけられる。


「大したことねえな」


-その時だった。


激しい羽音が聞こえる。

遠くを眺めるとキングビーの大群が押し寄せてきた。


「おいおいマジかよ」

「この数は……無理だな……こいつだけじゃ……」




「……あいつ使うか……」




ベルゼは急いで工房に戻る。


「おっ!あったあった!」


出してきたのは巨大な剣型のアタッチメント。

それをブレイクギアに右腕ごと装着する。


「腕いっちまうかもな」

ニヤニヤが止まらない。



ベルゼは外に出る。


「待たせたなクソ虫ども」

「……焼き殺してやるよ……!」


ガガガガガガ!!

ジュウウウウウウウウウウウウウ!!!


剣型のアタッチメントが轟音をかき鳴らす。


次第に剣が真っ赤に染まる。


「流石に全部は無理だろうが……」

「……追い払う分には十分だ」


ベルゼは大きく飛んだ。


真っ赤に染まった巨大な剣を薙ぎ払うかのように振るう。


ゴオオオオオオオオオオ!!!


たちまち炎が湧き上がる。


キングビー達に炎が燃え移る。

「まだだ!!」

再び飛び上がる。

二撃目。

炎の斬撃が群れを飲み込んだ。


焼かれた群れを見て、残りのキングビー達は一斉に逃げていった。


「……ふぅ……」


フシュウウウ……

蒸気を止め、アタッチメントを外す。


「っ!!」

「痛って……」


右腕は酷いやけどを負っていた。

皮膚はただれていて、普通の人間なら痛みに顔をゆがませるほど。


「痛てて……………こりゃ見つかったらどやされるな………」

右腕を見ながら、乾いた笑いを漏らす。


「さて、花摘むか………」

振り返ると、花畑は焼け野原と化していた。


「………………………」


ダッシュでガラクタ丸に戻った。






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