第69話 こんなの……認めない!
-荒野-
「それ、どうするの?エリーネ」
「……解体するわ」
「解体?直さないの?」
「……悔しいけど、ワタシじゃ無理よ……」
「……そうかな?」
「それに、あいつ言ってたでしょ?直せたとしても何するか分からないって……」
「ああ……そうだったね」
「ならせめて、役目を失ったこの子を、キチンと終わらせてあげないと……」
そう言って、エリーネはオートナイツに近づく。
「…エリーネ、ごめん」
「なに?どうしたのよ」
「アタシも好きじゃないんだ…それ」
「あんたは…仕方ないでしょ?」
「…え」
「さっきの顔、見たもの」
「こいつらに何かされたんでしょ?」
「……」
「けど……あいつは許せない」
「機械を差別するなんて……何考えてるのよ……」
「機械に良いも悪いもない……使う人間がどうかなのよ……」
「それを気に食わないの一言で切り捨てるなんて……同じ技術屋として、信じられないわ……」
「エリーネ……」
「それだけじゃない……」
「……え?」
「ここに差別に苦しんでる仲間がいるのよ……」
「機械を差別したら、あいつらと何も変わらないじゃない!!」
「なんで……そんなことも分かんないのよ!!あいつは!!」
エリーネの拳に力がこもる。
「……」
「あ…ごめんイリア…」
「つい、大声出しちゃって………」
「……ううん」
「大丈夫」
「さて、早くこの子を見てあげないと…」
「……イリアは一緒にいなくて良いのよ?」
「大丈夫だよ」
「…無理しちゃダメよ?」
「……ありがとう」
-ガラクタ丸 運転室-
「………」
………たぶん
………いや
確実にあいつは理解する。
オートナイツが作られた理由。
思想。
……役目。
あんな胸糞悪いもん。
誰が作ったか知らねえが……
絶対に技術屋じゃねえ。
……ロムドールん時の電気馬鹿のほうがまだマシだ。
……絶句した。
中身を見た時。
だが今のあいつにはイリアがいる。
だから、大丈夫だ。
……そう、信じてる。
-荒野-
「………何よこれ……」
「誰がこんな機構を……?」
「エリーネ…?」
「圧力計もない……」
「これじゃ負荷が読めない……」
「管が通ってる場所もおかしい」
「これ、整備すること考えられてない……」
「必要なものをただ繋いでるだけ……」
「……いや、その繋ぎ目もなんでこんだけしかないの?」
「これじゃ、交換もしづらいじゃない……」
「でも圧は通る」
「……だから動かせる」
「でも、ただ動くだけ……」
「しかもこれ……」
「安全弁が、これだけしかないの……?」
「これじゃ、限界まで圧が上がったら逃がしきれない……」
「…」
「……え……」
「………まさか………」
「…動けば…いいだけ…?」
「そんな……」
「これじゃあまるで……」
「ただの使い捨て……」
「……嘘よ……」
「この子……最初から……」
エリーネが崩れ落ちる。
「……ふざけないで……」
「え?」
「こんなの……認めない!」
「こんなの……!」
涙があふれる。
「エリーネ……」
ぎゅっ。
「……濡れるわよ」
「……いいよ」
「……あんたも平気じゃないでしょ……」
「……強くなったから」
「……」
「……ワタシ……」
「?」
「……弱いわね……」
「………………でも……」
「?」
「エリーネは優しいよ」
「……」
エリーネはしばらくイリアの胸で静かに泣き続けていた。
-夜 ガラクタ丸 テラス-
「……」
ガチャ
「ベルゼ……」
「……エリーネか」
「……」
「……」
沈黙が走る。
「ベルゼ……さっきは……」
「胸糞悪かったろ」
「!?」
ベルゼがエリーネの言葉を遮る。
「……ええ……あんたの言ってた意味、理解したわ」
「だろうな……」
「……」
「……ベルゼ……その……」
「……言うなって」
「……え?」
「お前がどうするかも」
「俺にキレるのも」
「見て後悔すんのも」
「全部分かってた」
「……」
「それでいて、俺は黙ってた」
「……気にすんな」
エリーネの顔を見ないベルゼ。
「…それなら、教えてくれても良かったじゃない……ワタシ……あんたに――」
「納得しねえだろ」
「え?」
「自分の目で見ねえとな」
「自分の目で……?」
「お前も技術屋だからな」
「!!」
「逆の立場なら、俺も同じだったろうよ」
「……」
「だから気にすんな」
「……あんたさ」
「……」
「……もしかして、あの子たちを壊しているのって……」
「…………」
「………ありがとう」
エリーネはそう小さく呟いて部屋を後にする。
「…礼言うんじゃねえよ…」
「…それは違えだろうが…」




