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ブレイクギア ー荒野を駆ける巨大な蒸気工房ー  作者: すのもとまさお
爺さんと屋敷と大きな置時計

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第67話 ……楽しかったなぁ……あの時計……


―ガラクタ丸 リビング―


「……ねぇ……」

「……はい」

「あんたさ、少しは説明するって気は無いの?」

「……したじゃん」

「……足りないよ……おかげで死ぬかと思ったよ……」

「あー……悪い悪い」

「その謝罪軽っ!!」

「もっと反省しなさいよ!!」

「……はい」

シュン……

二人に怒られて、少し凹むベルゼ。


「……それにしても、あんな無茶したのに、家具とかは無事なのね」

リビングを見渡すエリーネ。


「そりゃ、固定してるからな」

「………固定?……あ……」

エリーネが固まる。


「……エリーネ…………?」

「……お前……まさか……」

「………」


―エリーネの自室―


「あああああああ!!!」

エリーネの叫び声が響く。


エリーネの部屋は、さっきの無茶な運転のせいで、後から持ってきた机や設計図などが散らかり放題になっていた。


「あー……部屋の家具用意した時に固定しておけって言っただろ……」

今度はベルゼが呆れる。


「これは……片づけるの大変そうだね……」

イリアが同情する。


「……この子って意外と振動を吸収してくれるから、後回しにしちゃってたのよ……」

「……いや、こいつ動くんだから、基本やっとかねえとズレるだろ」

「あんたがもっと早く言わないからよ!!」

「だから家具用意した時に言ったわ!!」

「まぁまぁ、二人とも、とりあえず手分けして片づけようよ」


「……そうね。申し訳ないけど、手伝ってちょうだい」

「ああ。じゃあ、机とか固定するから、ちょっと道具取りに行ってくるわ」

そう言って工房へ向かうベルゼ。

「分かったわ。この子、工房あって助かるわ……」














「ちょっと待ちなさい!!何普通にワタシの部屋に入ろうとしてんのよ!!」

工房へ向かうベルゼを追いかけるエリーネ。


「あ?家具固定しなきゃだろ??」

「乙女の部屋に入ろうとすんな!!変態!!」

「……いや、さっきまで普通に入ってたじゃねえか俺……」

「……ベルゼも大変だねぇ………」

とりあえず、ベルゼは締め出された。


イリアとエリーネで部屋を片づけることに。


ベルゼは暇なので、夕飯の準備をしていた。



「イリア、散らばった本を本棚に戻してくれる?適当で良いから」

「分かった」


固定した本棚に本を入れようとした時だった。


(……蒸気機関と機械の応用)

(……機械工学の基本)

(……すごいなエリーネ。本当にたくさん勉強してたんだな……)

ペラ。

思わず中身を見てみる。


(……全っ然分かんない……)

(……って、人の本見ちゃダメでしょ……早く片付けなきゃ)

手に取った本を戻そうとした時だった。


ぺら……

ひらひら……


本の隙間から一枚の紙が落ちてきた。


「あ、ごめん、エリーネ、本から何か落と……」


『あいつがすごい所』

・機械や蒸気機関にすごく詳しい

→むかつく。でも尊敬できる


・教え方が上手い

→めちゃくちゃ分かりやすい。逆に腹立つ


・出来なくても怒らない

→待ってくれる。失敗しても責めない。時間がなくて代わる時は謝る。

悪いのはワタシなのに。


・出来たら、褒めてくれる

→王立製作所だと褒められることなんてなかったから新鮮


目標

→絶対あいつに追いついてみせる!!


(……エリーネ……)

(……ごめん!!……すっごく、ごめん!!見ちゃってごめん!!)


「あら?どうしたの?イリア?」

「な、なんでもないよ!!うん!!なんでもない!!」

「???」


イリアはそっと本にメモを戻しておいた。


(……ベルゼが気付いてないのは、まぁ当然として……)

(……本人も自分の気持ちに気付いてないんだもんなぁ……)

(………絶対やめといた方が良いと思うのに……)


片付けが終わる。


「おーい。飯できたぞー」

ベルゼが部屋の前で呼ぶ。


「あ、ちょうどご飯も出来たね。行こうか」

「ええ、ありがとう。イリア」

「いえいえ」


ガチャ。


「お、部屋は片づけ終わったか?」

「う、うん」

(メモ見ちゃったから、なんか気まずいな……)


「??」

「??」


―ガラクタ丸 リビング―


「ここで3人でご飯食べるのも久しぶりだねー」

「そうだな。今朝までは爺さんの家で食ってたからな」

「……」

ベルゼとイリアが話している時、エリーネは黙っていた。


「??どうした?エリーネ」

「いや、あのさ……なんであんたって普段は雑なのに……」

「開幕からひでえな」


「こんな料理上手いの??」


テーブルに並べられていたのはシーザーサラダ。

野菜の出汁が効いたコンソメスープにバゲット。

そして、メインのサーモンのソテー。


「……まぁ気持ちは分かるよエリーネ」

「何でって言われても……まっとうに上手くなっただけなんだけどな……」

「普段のあんたから想像つかないのよ、こんなしっかりとしたご飯出すのは……」

「寝床と飯は用意するって言ったじゃん」

「そうだけど、ここまでとは普通思わなかったわ。初日に見た時なんて言葉失ったもの……」



………………………………


『おーい。飯だぞー』

『あ、ご飯だってエリーネ』

『…え……あいつが作ったの……?』

(あいつが作ったもの……豚の丸焼き……とか……?)

(……まさか、野草とか虫とか出てこないでしょうね……?)


『ほい。今日のメインはビーフシチューだ』

『………』

『あと、今日はパンを焼いてみた』

『………』

『ついでにパン作り過ぎたから、切って炙ってサラダに乗っけてみた』



………………………………


「初日はビックリし過ぎて固まったわ。しかもちゃんと美味しいのよね……」

「そりゃ昔から自分で作ってたんだから、嫌でも上達するだろ」

「昔から……ね」

「イメージが湧かないよね、エリーネ」

「お前らひでえな」

「アタシも作ってもらってばかりなのは申し訳ないから、交代制にしてるけど、正直ちょっと自信無くすもん……」

「いや、イリアの飯も十分美味えだろ?」

「でもベルゼのはお店みたいなんだもん……」

「十分美味えって。そもそも人が作った飯なんか、お前が来るまで食ってなかったんだ。結構ありがたく思ってんだぜ?」

「……そっか。それなら、まぁいっか」

しぶしぶ納得するイリア。


「……やっぱ料理って出来た方が良いのかしら?」

「まぁ、出来ることに越したことはねえな」

「自分で好きなご飯作れるしね」

「……好きなご飯……かぁ……」

エリーネが遠い目をする。


「そういや、エリーネって何が好きなの?」

「んー……何だったかしら……」

「え、覚えてねえってどういう事だよ?」

「王立で働いてた時は、栄養ブロックやドリンクばっかだったから……」

「「…………え?」」

ベルゼとイリアが固まる。


「……いや、お前、それ飯とは言わねえだろ??」

「そんなんで体持ってたの??」

二人がめっちゃ心配する。


「まぁ、忙しくて自炊する時間も無かったのよ」

「栄養ブロックなら数分で終わるし、ドリンクなんか秒よ秒」

「「…………」」


「だから、こんなしっかりしたご飯食べるようになったのは、ここに来てからね」

「「…………」」





ブワッ!!

二人の涙腺が崩壊。


「!!??」

驚くエリーネ。


「しっかり食べて大きくなるんだよ、エリーネ……」

「年齢的に厳しいわよ!!」

「おかわりもあるからな……」

「なんであんたは親戚のおじさんみたいになってんのよ!!」


ガラクタ丸のリビングが賑やかになる。



「………………あ」

「エリーネ?どうしたの??」

「………そういえば……報酬貰ってなくない??あの時計の………」

「「…………………………………あ」」

今思い出したベルゼたち。


「……まぁ良いじゃねえか。飯の世話になったんだし」

「お菓子も美味しかったよねー」




「嘘でしょおおおおおおおおおおおおお!!」

「あんだけ苦労したのにいいいいいいい!!!」


「まぁ、食費は浮いたんだから良いじゃねえか」

「そういう問題じゃないわよおおおおおおおおおおお!!!」

「それに」



「……それに?」



「……楽しかったなぁ……あの時計……」

ほっこりするベルゼ。


「楽しかったじゃないわよおおおおおおおおおお!!!」

「お前は楽しくなかったん??」


「…………」

途端に黙るエリーネ。


「まぁ、明日からまた頑張ろうよ、エリーネ」

「………うん……」



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