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ブレイクギア ー荒野を駆ける、破壊と創造の蒸気工房ー  作者: すのもとまさお
爺さんと屋敷と大きな置時計

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第61話 ベルゼが言ってた事って……


―バルジ邸 食堂―


「おお!来たか!!どうじゃ!?時計は合わせられそうか!?」

先に着いていたバルジがベルゼ達に声をかける。


「爺さん、すまねえ。まだ時間がかかりそうだ」

「む、そうか。まぁ気長にやってくれ」

「おう。飯食わせてくれんのは助かるぜ」

「がははは!当然じゃ!あの時計を直そうとしてくれとるのじゃからな!」

「……このご老人が、あのバルジ・グランツィエだなんて、未だに信じられないわ……」

(……でも、見せてもらった論文は本物だったわね……)

(……昔、何度も論文の複製を読んだから、間違いないって確信できるのだけど……)


「がははは!!まぁ、まずは食え!!しっかり英気を養うがよい!」

「おう。まだしばらく世話になるぜ」

「……あの豪快な姿じゃ想像できないわ……」

エリーネが呆れている時だった。


「おまたせー!!」

イリアが食堂に入ってきた。


「お、イリアか。俺たちも今来たとこだぜ」

「イリア、レイピアの稽古はどう?」

「執事さんのおかげで順調だよ!午後からいよいよ手合わせして貰えるんだ!」

「お、ついにか」

ベルゼは執事を見る。


「ええ。イリア様の上達する速さは目を見張るものがありますから」

「がははは!!お前がそこまで言うとはな!イリア嬢、そいつの腕はこの屋敷の中で一番の使い手だぞ!」

「え!!?そうなんですか!!?」

イリアが驚く。


「……旦那様……そもそも、この屋敷で私以外にレイピアを嗜んでいる方などいないではありませんか……」

「ああ……そういう……」

「がははは!嘘ではないだろう」

「まぁ、そうですけど……」

執事は困ったように答える。


「あははは!バルジさんってお茶目な所があるんですね!!」

イリアが笑う。


「!!??」

エリーネがイリアの態度に驚愕する。


「ま、全員揃ったことだし、さっさと食おうぜ」

早く食べて作業に戻りたいベルゼ。


そのまま全員で昼食を取ることになった。


「ベルゼ様」

「んぁ?」

食事中、執事がベルゼに声をかける。


「イリア様にレイピアをお教えになったのは、ベルゼ様ですか?」

「いや、俺じゃねえな。俺の知り合いが教えてたんだよ」

「ほう……」

「つっても、1日だけだけどな。あとはこいつの独学だ」

「!!??」

「まぁ、俺も手合わせで相手することはあるけどな」

「手合わせ?ベルゼ様も剣術をお使いに?」

「いや、素手だぜ、俺は」

「す、素手……?」

「剣はあんまし得意じゃねえんだよ」

「……でも勝てないんですよねぇ……」

イリアがぼやく。


「!!???」

執事が混乱している。


「……この二人に常識をあてはめないほうが良いですよ?」

エリーネが執事にそっとつぶやく。


「そ、そのようですね……」

「??」

「??」


「がははは!!面白い話してるな!!」


和やかなムードのまま、昼食の時間は過ぎていった。



―バルジ邸 広場―


「それではイリア様、さっそく始めましょう」

「よろしくお願いします!」

頭を下げるイリア。


「ふふふ。そんなかしこまらないで下さいませ。気楽にいきましょう」

「は、はい!」

「では、イリア様、こちらのレイピアを」

手渡されたのは、刃がついておらず、先端も丸くなっているレイピアだった。


「こちらなら、実戦用のレイピアよりも安全ですので、これで手合わせいたしましょう」

「……わかりました……!」


スッ……

スッ……


お互いに構える。

しばらく、どちらも動かない






ダッ!!

先に動いたのはイリアだ。


「はぁあああ!!」


キンッ!キンッ!

ガキンッ!!


執事は全ての攻撃を捌く。


「くっ……!」


ダッ!

イリアは横に回り込む。


執事はイリアから目を離さない。


「やぁあああ!!」

渾身の突きを執事の顔めがけて放つ。


ガキンッ!!


「!!?」

執事はこれも弾く。




弾くと同時に、流れるような動きで執事のレイピアがイリアの顔前へ迫る。


ピタッ……!

「…っ!?」


「……勝負ありですな」

「……はい」


執事はレイピアを下す。


「ありがとうございました」

一礼する。


「あ、こちらこそ!ありがとうございました!」

イリアも一礼する。


「ふむ。なるほど……」

「えっと……どうでしょうか?」

「……これは正直に申した方が良いですかな?」

「……はい!お願いします!」

イリアは覚悟を決める。


「……では……」

「ゴクッ……」



「まず、突きの速さと命中精度。どちらも目を見張るものがあります」

「……え?」

思っていた以上に高評価で驚くイリア。


「あの連続の突きであそこまで狙いを定められるのは大したものです」

「え……あ……」

(ラグネスさんにはあんまり褒められたことないから、こんな時どう反応すれば良いんだろう??)


「――ですが……」

「……っ!?」


執事がニコッと笑う。


「イリア様ご本人に似て、攻撃が素直過ぎますな」

「……素直……過ぎる?」

「はい。さらに申すならば、私、身体能力ではイリア様に劣ります」

「え……でも……さっき……」

「……あなたを捉えられたのは私の技術の方が上だったからです」

「!?」


「そして、全ての攻撃がさばけたのも、あなたの攻撃がどこに来るのか、手に取るように分かったからです」

「………それじゃあ、どれだけスピードを上げても……」

「……このままでは、見抜かれてしまいますな」

「な、なるほど……」

(この人……全部教えてくれるんだ……)

(……そういえばベルゼにも……)


……………


『……よっと!』

スッ!

ベルゼの貫手がイリアの首元でピタリと止まる。


『あああ!!また勝てなかったあああ!!』

『くくく!!まぁスピードまた上がってんじゃねえか』

『上がってても勝てないんじゃ意味ないよおお!!』

『お、分かってんな』

『……嫌味??』

『そうじゃねえよ。そうだな……』

『??』

『そこまで出かかってんなら、てめえで見つけた方が良いかもな』

『……え?』

『じゃ、俺は工房に籠ってるからな』

『え…?どういうこと!?どういうことおお!?』


……………


(……あの時ベルゼが言ってたことってそういう事??)


「今のイリア様は基礎が十分にできております」

「なので、ここからは私が使っている技をご紹介しますね」

「は、はい!!お願いします!」


それからもイリアのレイピア指南は続いた。

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