第60話 5個合うまでだな
―ベルゼたちがバルジの屋敷に来てから1週間―
―バルジ邸 時計部屋―
「ベルゼ、準備できたわ」
「よし、動かすぞ」
時計を動かすベルゼ。
カチッ
「どうだ?」
「……だめ……またズレたわ」
「そっか。じゃあ、1個目からやり直しだな」
「……はぁ……」
「お、大丈夫か?エリーネ」
「……これ……いつまでやるのかしら……」
「5個全部合うまでだな」
「……いつ終わるのかしら……」
「5個全部合うまでだな」
「……同じ答えなのがむかつく……」
「しゃあねえだろ。実際そうなんだし」
「………少し、休んでもいいかしら?」
「あ、そうだな。ぶっ続けでやってるし、休憩すっか」
「ふぅ……」
座り込むエリーネ。
「………」
ぼんやりするエリーネ。
「……今日はやめとくか?お前は」
「……なんでよ?」
「ここ連日付き合って貰ってるしな。流石に疲れただろ?」
「……嫌よ。勉強にならないじゃない」
「……いいのか?」
「それに……ワタシも協力したいわ。この時計の修理に」
「……そか」
少しだけ口角が上がるベルゼ。
「ワタシだって動くところ見たいわ。こんな狂った設計の時計」
「……お前目線でも狂ってるって思うんだな」
「あんたが思ってる時点でだいぶ狂ってんのよ!」
「……ロムドール出身のお前がそこまで言う?」
「あらワタシ、ロムドール出身じゃないわよ?」
「あれ?そうなのか?技術屋に染まってるから、てっきり」
「……染まってるって言い方が気に入らないけど……でも、そうね。ワタシの出身はもう一個の技術屋の街よ」
「……ああ。エルドーラか」
「ええ。そういう意味じゃ、もうすでに子供のころに染まってたのかもしれないわね」
「まぁ、こんな機械に付き合ってんだ。お前も相当な技術屋だな」
「……そりゃどうも」
顔をそむけるエリーネ。
「……ま、結構やったしな。そろそろ昼飯じゃねえかな」
「え!?嘘!?もうそんな時間なの!?」
「……お前もだいぶ集中してたんじゃねえか」
そんな会話をしていた時だった。
コンコンコン
部屋のノックが聞こえる。
「ベルゼ様、エリーネ様、お食事のご用意が出来ました」
「お、噂をすればだな」
ぐぅ~~~~
「んぁ?」
エリーネを見るベルゼ。
「………」
顔が赤くなるエリーネ。
「………」
「………」
「早く行こうぜ」
「分かってるわよ!!」
「なんで怒られてんだ?俺」
―同時刻 バルジ豪邸 ガラクタ丸付近―
「ふっ!ふっ!はぁ!!」
「イリア様、だいぶ型が染みついてきましたな」
「執事さんのおかげです!」
「いえいえ、あなたがこれまで頑張ってきたからですよ」
「へへへ」
イリアは執事にレイピアの稽古を受けていた。
―1週間前―
『よし、イリア。こいつら頼むわ』
ベルゼはイリアに生成して欲しい部品を手渡す。
手渡した部品はひび割れや欠けがひどく、使用できるような状態ではなかった。
ベルゼはイリアの魔法で、それと同じ部品を生成してほしかった。
『分かった』
『で、こいつとこいつ……あとこれも複数作ってくれないか?』
『え?良いけど……なんで?』
『こいつらで調整するんだよ。微妙な違いとかもあるからな』
『??微妙な調整ならアタシの魔法で変えられない?』
『……それも考えたんだが、すげえ細かいんだよ……』
『……え?』
『今のお前の魔法じゃ無理だし、出来たとしても、すげえ集中力使うだろうしな』
『……ってことは、アタシ、これ作ったら……』
『おう。一旦は終わりだ。また頼むかもしれねえけどな』
『…………』
―バルジ邸 ガラクタ丸付近 ―
『……次の仕事来るまで暇になっちゃった……』
『ま、いいや。レイピアの練習しとこっと』
イリアはそう言って、ガラクタ丸の中へ入る。
腰に携えてたレンチを手に取る。
そのレンチに魔力を流すと、形がうねっていく。
そして、みるみるうちにレイピアの形に変化していく。
『……よし、創造魔法の精度も上がってるね』
そう言ってガラクタ丸から出る。
『とりあえず、ラグネスさんの知り合いから教わった基礎練しないと』
ヒュッ!ヒュッ!
イリアがレイピアを学んだのは2か月前。
それも実際に教わったのはたった1日だった。
『んー……これでいいのかな……?』
『ベルゼにはそのままで問題ねえって言ってくれてるけど……』
『んー……』
イリアが悩んでいる時だった。
『イリア様』
『わぁ!!』
背後から執事に声を掛けられた。
『驚かせてすみません』
『い、いえ、こちらこそ、大きな声出してごめんなさい!』
お互い、頭を下げる。
『そ、それで……何か用ですか?』
『い、いえ、イリア様もレイピアを嗜んでおられるのですね』
『あ、いえ、まだ始めたばかりなので、なんとも……』
『ほう。いつ始められたのですかな?』
『えっと……2か月くらい前かな?』
『!!??』
執事は驚いている。
『??』
(どうしたんだろう??)
『……イリア様』
『は、はい!』
『私も実はレイピアを嗜んでいるのです』
『え!!?そうなんですか!?』
『はい。もし宜しければなんですが……私がお教えいたしましょうか?』
『!!?いいんですか!!?』
『はい。イリア様が宜しければ、ですが……』
『そんな!!』
イリアは執事の手を握った。
『!!?』
『アタシの方からお願いしたいくらいです!ぜひ教えて下さい!!』
『……ふふふ』
『??』
『イリア様はとても素直な方なのですね』
『……あ』
パッと手を放す。
『それでは、いつ頃始めましょうか?』
『今すぐにでも教えて欲しいです!!』
『分かりました、それでは何から始めましょうか?』
『……とりあえず、基礎から教えて欲しいです……』
『……かしこまりました。それでは……』
―現在―
「イリア様もこの1週間でかなり上達しましたね」
「い、いえ……そんな……まだまだです」
「……そろそろ一度、手合わせしても良いかもしれませんな」
「え!?執事さんと!?」
「はい。型はもう十分なので、手合わせしてみましょう」
「わ、わかりました!じゃあ、今すぐ……」
ぐぅ~~~~
「……あ」
「…………」
「そろそろお昼ごろですな」
「あはは……そうですね………」
「レイピアの稽古は午後にでも」
「はい!お願いします!!」
イリアと執事は食堂へ向かった。




