第6話 名前くらい覚えてよね!
「え…?」
「こいつに散々やられたんだろ」
「ケリつけるなら今しかねえ」
「…」
少女は、目を閉じる。
焼け落ちた村。
叫び声。
伸ばした手。
「魔法潰しなら気にするな」
「今はもう使えるはずだ」
――流れる。
魔力が、はっきりと。
「……」
罪は消えない。
妹を見捨てたこと。
忘れることも、許されない。
だから――
少女は、オートナイツの胸に手を置いた。
内部が、軋む。
何かが、ねじ曲がる。
構造が、書き換わる。
――音が、消えた。
「片を付けたか。自分で」
「…うん」
ベルゼは右腕に着けていた機構を外す。
「!!?ちょっと!!」
「ん?」
少女が見たのは右腕のやけど。
ちょうど機構が着いていたところだ。
「火傷してるじゃない!」
「ああ。いつものことだ」
「いつも…?」
「こいつを使うとな」
そう言って見せたのがさっきの機構。
イリアは、その機構を見つめた。
整備士が使う手袋のような装着型工具に似ている。
でも――
ツギハギだらけで
こんな異様な形は見たことがない。
「とにかく、処置するから」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃない!!」
少女は無理やりベルゼの腕を引き、ガラクタ丸の中へ。
「救急箱とかないの?」
「ねえな」
「…今みたいな怪我したときどうしてるの?」
「寝れば大抵の傷は治るしな」
「んなわけあるか!!」
少女は台所へ無理やり連れてくる。
「とにかく!冷やすよ!」
「ちょ…分かったよ…」
大人しく冷水を当てる。
「…貯水タンク持つかこれ…?」
「また街で買えばいいでしょ」
「ったく…しゃあねえなぁ…」
水を当て終わると、少女は手際よく布を腕に巻いた。
「とりあえず、次の街まではこれで我慢して」
「…悪いな」
「何言ってんの?お礼を言うのはこっち」
「…そうじゃねえんだよ」
小さくつぶやく。
少女には、届かない。
「お前はこのまま一緒でいいんか?」
「…行く当てもないからね」
「そっか」
「んじゃあ、改めて」
「イリア」
「ん?」
「雇い主なら、従業員の名前くらい覚えてよね!」
そう言って笑うイリア。
「そうだな」
「これから頼むぜ。従業員一号!」
「名前覚える気あるの!?」
「え…じゃあ、二号の方が良いか…??」
「一号、永久欠番!?」
思わず声を張り上げる。
――が、ふと力が抜けた。
「……はは」
「なんだ、どした?」
「いや、なんか……バカみたいでさ」
「今さらだろ」
「それもそうね」
二人は顔を見合わせて――
笑った。
………
………………
……………………………
荒野の深夜。
イリアは充てがれた部屋でグッスリ寝ている。
ベルゼは一人、ガラクタ丸の屋根の上。
巻いてもらった腕を見る。
無表情で。
しばらく眺めた後
布を外す。
――痕は、ない。
火傷の跡すら。
――まるで、最初から何もなかったみたいに。




