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ブレイクギア ー動く工房の破壊整備士と創造の魔族少女ー  作者: すのもとまさお


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第5話 …破壊する

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「とうとう追い詰めたぞ!魔族の女め!!」

アタシはあの後、騎士に見つかり逃げた。

気づけば崖まで追い込まれていた。


蒸気車で追いかけられたら流石に逃げ切るのは無理だった。


「…今投降すれば楽に殺してやる…」

3人いるうちの騎士の中でも装備がゴツい騎士が蒸気車から降りてそう言った。


声に、妙な間がある。

感情が乗っていない。


「だ、誰が…投降するもんですか!」

地面に手をあて、魔力を流す。


地面を突き上げて、奴らを吹っ飛ばそうとした。


だけど、いくら魔力を流しても魔法が発動しなかった。


「ど…どうして…!?」

あの時と一緒だ…

魔法が…使えない…!?


「無駄だ!魔族相手に何も対策してないと思ってんのかよ!」

蒸気車に乗っている騎士の一人があざ笑う。


「我々は貴様のような魔族対策として、魔力拡散装置を発動している!」

「大人しく投降しろ!」

ま、魔力拡散…!?

それじゃあ、あの時も…


「…貴様が妹を見捨てた時もそうだ」

「!!?」

なんで…そんなことを…


「あんたは…あの時の騎士…?」

「…安心しろ。すぐに妹に会わせてやる…」

こいつ…こいつのせいでイリスが…!!?


「うあああああああああああああ!!!」

腰に携えたナイフを取り出し、突進。

奴の胸を突いた。


金属音が鳴り響く。

関節の隙間から、白い蒸気がわずかに漏れていた。


「…ふん」

「きゃぁあ!!」

無情にも薙ぎ払われる。


そのまま吹っ飛んでしまい、倒れてしまった。

「…どうした?もう抵抗しないのか?」

「うっ…!」

もう動く体力も気力もなかった。


「…そのまま大人しくしていろ」

「…一瞬で終わらせてやる」

騎士が蒸気音と共に巨大な剣を振り上げる。


だめ…

これ以上はもう…


諦めかけたその時--




ドォオオンッ!!

「「ぎゃああああああ!!」」



蒸気車に乗っていた二人が車ごと巨大な鉄の塊に吹っ飛ばされた。


あれは…


「ガラクタ丸!!」

「…」

アタシを殺そうとした騎士はゆっくりと後ろを見た。


「てめえ!!うちの従業員に何してんだ!」

「あ、あんた…どうして…!?」

「…貴様…昨日の…」

「…やっぱりてめえか」


あいつはガラクタ丸から降りて、騎士に指をさす。

「うちの従業員を痛めつけてタダで済むと思うなよ」

「…魔族に肩入れするつもりか…」

「そういうことだ。かかってきな」

そういって構える。


「だめ!逃げて!」

「…逃がさん」

ジュウウウウ!!

と激しい蒸気音を鳴らし、巨大な剣を振り下ろす。


「隙だらけだろ」

そう言い避けた。


「…甘い‥」

そう言うと騎士は剣を捨て、あいつにタックルをかました。


「がはっ!!」

あいつはそのまま吹っ飛んでしまった。


「あああああ!!」

アタシのせいでまた誰かが――


「うぅっ」


騎士の動きが、一瞬ズレた。

「…ガ、ガガ…」


足元が、不自然に引かれる。


次の瞬間――

騎士の身体が、引き倒された。


「全く。足元がお留守だぜ」


よく見るとワイヤーが足に絡まってる…

いつの間に…


「おい!!早く乗り込め!」

その声に押されるように、ガラクタ丸へ飛び込む。


「よし。全力で振り切るぞ」

「そ、それより、あんた、体は大丈夫なの?」

「え?」

素っ頓狂な声をあげる。


「え?じゃなくて!!」

「騎士に吹っ飛ばされて平気だったのかって聞いてんの!!」

「ああ」

その返事と同時に服をめくる。


「いやぁ、あいつらの盾が頑丈で助かったぜ」

そう言いながら盾が落ちた。

どうやら、あらかじめ仕込んでいたようだった。


「その盾どこで…」

「とりあえず、あいつから離れるぞ」


ハンドルをしっかりと握る。


「あんな重そうな鎧着てたらそう簡単に立ち上がれねえだろ」


そう言うと、ガラクタ丸を発進させた。

いくら騎士でもこれなら追いつかないだろう。


そう思っていた時だった。


騎士は人の関節を明らかに無視した挙動を行った。

それは遠目から見ても分かるくらいだった。


「が、っがががが…まぞ…ころ…」


「ねぇ…なんか変な動きしてるんだけど…」

「構うことはねえよ」

そう言いながらも、あいつの視線は鋭かった。


でも、ガラクタ丸はなお全速力で駆け抜けている。

たしかに、これなら大丈夫だろう…

そう安心した時だった。



ダン!!ダン!!ダン!!

地面を叩きつけるような音。

異常な速度で、騎士が迫ってくる。


「……機械か」

ぼそりと呟く。


「制御が死んでやがる」

騎士が追いつく。


巨大な剣が振り下ろされる。

ガキィンッ!!


タイヤが破壊される。

「っ!」


ガラクタ丸の制御が乱れる。

このままじゃ――




「お前は中で待ってろ」

「!?どうするつもり?」

「…破壊する」

破壊・・・?

何言ってるの…?


「・・ガッガガ…マ…コココ…スススススス」

「…もう遠慮する必要はねえな」


首が、不自然な角度でこちらを向いたまま。

「ガアアアアアアアアア!!」


さっきの騎士の様子とは正反対だ。


そのままあいつに飛びかかった。


異常な動きの騎士の巨大な剣があいつに振りかかる。


それに対し、あいつは--


拳を突き出していた。


ガキイイイインッ!!


「ガアアアアアアア!!!」

シュウウウウ!!シュウウウウ!!


騎士の蒸気音が激しくなっていく。

このままじゃ押し切られる!



「…なまくらだな」

ブシュウウウウ!!!


さらに大きな蒸気音。


でも…

騎士の方じゃない…!


「…圧もねえ」


ブシュウウウウウウウウウウウウウ!!!

蒸気音がさらに激しくなる。


「…三流だな」


ギギギギギ・・・!



押し返してる…!?





「が…があああ……!!」

「…」




「砕けろ!」





バキイイイイイイイッ!!!



破壊された…!


あの巨大な剣が…

あいつの拳で…!


その時。

あいつの右袖が焼け焦げ、崩れ落ちた。

露わになった右腕。


「何…あれ…?」


そこには――

異形の機械が、装着されていた。

それは。

まるで生きているかのように、脈打ちながら蒸気を吐き出していた。




「ガガガガ・・・!」

「そんななまくらじゃ壊せねえだろ」


ブシュウウ・・・!!

なおも腕の機械が蒸気を吹き出す。


「…こいつはな」

「ガガガガ!!ギギギギギ!」


騎士は不気味な声を発しながら、突進してきた。

「動きが単調で助かる」


ワイヤーを射出。


ガァアン!!


兜が弾け飛んだ。


カラン…


「…え…?」

「やっぱりな」

そこには――頭部が無かった。


あったのは、むき出しの配管と機構。

そして、音を発するためのスピーカー。


人間が入る余地など、どこにもない。


「……何あれ…?」

「オートナイツ…」

冷めた目。


「…相変わらず趣味が悪い」


機械仕掛けの騎士--オートナイツ。


「…機械や蒸気機関は好きだが」

「…こいつは雑だ」



「さっさと壊すか」


「ギッギギギ!!」

不気味な声がスピーカから発している。

同じ音が、途切れながら繰り返される。


「…うるせえな」


そう発した時。


シャキンっ!

オートナイツの左腕から剣が出てくる。

「ガアアアアア!!!」


切りかかる。

ベルゼは寸で躱す。


「まずはそいつからだ」

ベルゼは右腕で殴る。


ガォゴンッ!!

スピーカーを破壊。


「やっと黙ったな」


ギィイイ…

金属がこすりあう音だけが聞こえる。



構える。

「本番だ」

ダッ!!

今度はベルゼが突っ込む。


ギィイイイイイ

オートナイツは左腕の剣で突きをくり出す。


「邪魔だ」

剣に対して、また拳を突き出す。


ガキイイイインン!!

剣を砕く。


それと同時に懐へ。

右脇下へ拳を突き出す。


ジャキン!!

それと同時にスパイクが射出。


鎧のスキマに通す。


ザシュ!!

シュウウウウウウウウウウウウ!!!


スキマから蒸気があふれ出る。


「これで圧は通らねえ」

オートナイツの右腕がだらんと落ちる。


ダッ!

オートナイツは距離を取る。


「逃がさねえよ」

ワイヤーを再度射出。

左腕に絡みつき、ベルゼに引き寄せられる。


「もう一本」

今度は左脇下のスキマをスパイクで刺す。


シュウウウウウウウウウウ!!


「これで両腕は動かねえだろ」


ギイイイイイ!!

金属のこすれる音と共に、

先ほど圧を抜いたはずの右腕が動く。


「!?」

ギリギリでかわすが、体勢を崩す。

張っていたワイヤーが緩み、外れる。


「ちっ」

「相変わらず管の位置がメチャクチャだ」

「右…潰しきれなかったか…」


左は、動かない。

「……右だけか」


シュウウウウ!!

ワイヤーを圧で引き寄せて回収。

態勢を立て直す。


…右がまだ生きてる。


…めんどくせえ…


……まぁ、いい。



「また壊せばいい」


ブシュウウウ……!!

右腕の機構が唸る。

出力上昇。


ギギギギギ……!!

オートナイツが突進する。

右腕が、振り下ろされる。


――速い。


「……だが」

一歩、内側へ。


巨体の懐に、潜り込む。


振り下ろしは、空を切る。


そのまま――

体勢が、崩れる。


拳を振り抜く。

ドゴンッ!!


左腿に、叩き込まれる。


バキィッ!!

フレームが、歪む。


蒸気が、噴き出す。

支えが、消える。

オートナイツの巨体が、大きく傾く。

ギギギギギ……!!

それでも、動く。


右側だけで、無理やり姿勢を保つ。

「……そら左から崩れるよな」


踏み込む。

逃げ場は、ない。



狙いは――

わずかに、外す。



ドゴオオオオオオオンッ!!

左腹部に、拳が叩き込まれる。



一瞬――

静止。


次の瞬間、


バキィィィッ!!


内部が、弾ける。


左側から、崩壊が走る。

脚部が、巻き込まれるように破断する。


巨体が、耐えきれず――

崩れ落ちる。


ギィィィィ……


金属が軋む音だけが、残る。

右胸だけが、辛うじて形を保っていた。


「おい」

一瞬だけ、視線を後ろへ向ける。


「もう大丈夫だ」

「降りてこい」


少女は困惑しながらも近づいてくる。


「コアはまだ生きている」




「…どうする?」




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