第4話 …こちらこそ、いい話が聞けた
「あーあ…考えがまとまりそうだったのに」
外から怒鳴り声が響いた。
「そこのでかい蒸気車!中から出てこい!」
窓から覗くと、蒸気車に乗った騎士が二人。
――昨日の奴ではなさそうだ。
「ふぁあ…こんな所まで騎士さんは大変だねえ」
大きく欠伸をしながら、扉を開ける。
「貴様!こんな荒野で何をしてる!?」
「え?さっきまで寝てたんよ」
「こんな荒野のど真ん中でか!?」
「こいつ見て分かんない?居住も出来るよう改造してんだけど?」
「ふん!怪しいやつめ!」
「そうは言われてもなぁ…」
頭をポリポリかいて、困ったように笑っておく。
とりあえず、これでいい。
「まぁまぁ、整備士のあんちゃん。荒野のど真ん中にこんなもんがあったら誰だって気になんだろ?」
「まぁ…そうだなぁ…」
「そこでだ、ちょっと中を調べさせてよ!なぁにすぐ終わるからさ!」
「…」
こいつら…あいつを探しに来たんじゃないのか…
一瞬、思考が止まる。
「まぁ、良いぜ。なんなら茶でも飲んでけよ。こんなとこまで来たら喉も乾くだろ」
「おお!気が利くね!そうさせて貰うよ」
「お、おい・・?!」
「いいじゃねえか!昨日の魔族は別の捜索隊が見つけたようだし、俺たちはのんびりしようぜ」
「む…むぅ…まぁそうだな」
…ほう
騎士たちはズカズカと中に入った。
「どうするお二人さん?先に茶飲んでくか?」
「そうだな!じゃあ先に貰おうとするか」
「貴様…我々は仕事中で…」
「まぁまぁ。じゃあ、茶持ってくるからここで待っててくれ」
そう言って、準備をするために奥の部屋に向かった。
準備をするのは茶「だけ」じゃない。
ベルゼは「自分専用の武器」を身に付ける。
「…あいつらの装備…」
「…使えるな…」
「おい!!まだか!?」
「落ち着けって。いいじゃねえか、時間かかるほど、ゆっくりできるもんじゃねえか」
「何を言う!俺たちは騎士だぞ!分隊長が魔族を追って不在なら…」
「はいはいスマンね待たせて。おまちどう。」
二人に茶を渡す。
「ゴクゴクゴク…あああ!!生き返る!」
「…すまないな…」
「ところで…さっき魔族がどうのこうのって言ってたけど」
「ああ。つい今朝、魔族の目撃情報があったんで分隊長が向かったんよ」
「おい、こんな一般人に何を…」
「まぁまぁまぁ。このあんちゃんは俺たちを嫌がらずに中に入れて、しかも茶までくれたんだぜ?これくらい教えてやらなきゃ、バチがあたるってもんだろ?」
「む…確かに…」
(こいつ…真面目な割に流されやすいな)
「へー、魔族が。そら怖いな。どの辺?」
「ああ。ここから北の方角に目撃情報があったらしい」
なるほど…
昨日街から離れた時に向かった方角も北。
なるべく街からも離れようとしたわけか…
「ほえー大変だな。お二人さんもそうだが、分隊長さんもこんな荒野まで…それにしても大丈夫なんか?魔族って魔法使うんだろ?」
「なに。分隊長なら問題なく任務を遂行出来るだろう」
「問題なく?」
「ああ、分隊長は強いんだが、けっこう冷てえやつでな…何考えてるか未だに分からねえのよ」
「何を言う!感情に流されず、己を律して任務を全うする…まさに騎士の鏡ではないか!」
…ああ、昨日のあいつの事だな多分…
「それに、俺たちにはとっておきがあんのよ」
「とっておき?」
「魔力拡散装置だ。これがあれば魔族は魔法が使えなくなる」
「いくら魔族つったって、魔法が使えなきゃ俺たち人間と変わらねえからな!」
…ああ
あの”魔法潰し”か。
だが、そんなもん導入するってことは連中ガチだな…
なんで、あんな小娘一人に…
「ふう…そろそろ中を見させてもらうぞ」
「これも仕事なんでね!悪いね!ごっそさん!」
「…ああ」
「…こちらこそ、良い話が聞けた」
シュッ――
ベルゼの右手首の内側から、ワイヤーが射出される。
ドゴッ!!
鈍い衝撃音が響いたと同時に、軽口の騎士が後方に吹き飛んだ。
ワイヤーの先端で、小さな鉄球が揺れていた。
「き、貴様!!何を…!!」
剣を抜いた瞬間――
ガン!!
「な!?」
天井に剣が当たる。
振り抜けない。
「こん中じゃ振れねえだろ。そんなでけえ剣」
「しまっ・・・!」
ベルゼは騎士の顔面に向かって思いっきり殴った。
「がぁっ!!」
真面目騎士は後方に吹き飛びそのまま気絶してしまった。
「…悪いな。装備、使わせてもらうぞ」
剣、鎧、盾を剥ぐ。
「…蒸気車は勘弁してやる」
装備を剥がされた彼らを蒸気車に乗せて、ベルゼはガラクタ丸に乗り込んだ。
「…北か」
「…世話が焼ける」
「…待ってろ」
ガコン…
ゴォン…ゴォン…
ゴォオオオオオ――
ガラクタ丸が、静かに動き出す。
――もう、軽口はない。




