第3話 『逃げて』
辺りは暗く、照らすのは月明りのみ。
この時間なら例え騎士が近くにいても見つかりにくいはず。
とにかく遠くへ。
ガラクタ丸から出来るだけ離れないと…!
あいつにこれ以上は迷惑かけるわけには…
とにかく走らないと…!
暗くても進まなきゃ!!
…………………………………………………………
…今どのあたりだろ…
流石に疲れた…
巨岩に手をかけ、魔法を掛けた。
すると巨岩に穴が開いて、人が入れるくらいのサイズになった。
「…ここで休もう…」
岩の中で息を潜めて休息を取ることにした。
『……ちゃん』
『…えちゃん!』
『お姉ちゃん!!』
『イリス!!』
妹が瓦礫に埋もれていた。
早く助けないと火が回ってしまう。
アタシの村は火に包まれていた。
焼け落ちる音。
崩れる家。
そして――あの鎧。
騎士だ。
『この村の魔族はことをあろうか!われらの貴族に手を出した!よって、この村の魔族どもを処刑する!』
お父さんもお母さんもいない。
だからアタシがイリスを助けないと!
瓦礫をどかそうと、創造魔法を使おうとした。
だけど、発動しない。
どうして…!?
『イリス!今引っ張るから!!』
妹の手を引こうと手を握った瞬間だった。
『いたぞ!!魔族だ!!』
『!!??』
どうしよう・・!見つかった!!
『イリス!!もうちょっとだから頑張って!!』
何とか引っ張ろうとしてもビクともしない。
早くしないと騎士が…騎士が…!!
『お姉ちゃん!!逃げて!!』
…え?
『もういいよ!!お姉ちゃん!!』
『そんなことできるわけないでしょ!!』
怖い
早く逃げないと!!
『お姉ちゃんお願い』
だめ!!妹を…
たった一人の妹を…!!
『生きて』
……
私は
妹の手を
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「イリス…」
少女は、震える手で自分の胸を押さえた。
・・・・
いくら寝ようとしても、あの日の事が夢に出てくる。
そうして、寝れぬまま、朝を迎えてしまった。
もしかしたら、騎士が近くに来るかもしれない。
急いで離れないと!
――逃げないと。
頭の奥に、あの光景がよぎった。
「……っ」
今は、考えるな。
アタシは、振り払うように荒野を走り出した。




