第2話 この魔族を見なかったか
「おえええ・・・・」
「おいおい、だらしねえな」
「仕方ないでしょ・・・あんなにガタガタ揺れてたんだから・・・」
「しゃあないな。俺が街行って食いもん適当に買ってくるから、休んでろ」
「うう・・・ありがとう・・・」
荒野を抜け、街に着いたベルゼは一人で降りた。
「とりあえず、何食うかなあいつ」
街の中を散策していた時だった。
「・・・何か、人少ねえ」
通りが開いてるのに、妙に静かだ。
視線だけがこちらに向いてくる。
しばらく進んだところで
ガシャンと重い音がした。
「止まれ」
声をかけられ振り向くと鉄の鎧。
蒸気を漏らす装甲がこちらを見てくる。
ベルゼは軽くため息をついた。
「なに?」
「質問に答えろ」
騎士は1枚の紙を取り出す。
そこには少女の顔。
そこに名前が書かれていた。
…イリア…か…
「この魔族を見なかったか」
兜の奥から、抑揚のない声が聞こえる。
「いや…?見てないな」
肩をすくめて答えた。
「本当か?」
「こっちは腹減ってて全速力で走ってきたんだ」
「そんなの見る余裕ねえよ」
「…ほう」
その時視線が動く。
ガラクタ丸へ。
「…中を確認しても?」
「別に良いけど、床一つ傷つけたら弁償してもらうぜ」
「…何?」
「商売道具なんでな。当然だろ?」
わずかな間。
騎士はベルゼを、兜の奥から動かずに見据えていた。
「…もういい。怪しい動きはするな」
そう言い、騎士はベルゼから離れた。
「…あいつも大変だな」
-数時間後-
「ふぅ…」
ガラクタ丸に返ってきて一息つく。
「おかえり。どうしたの?」
「いたぞ」
「!?」
「騎士がこの街にいる」
「…アタシを追って…」
「だろうな」
ベルゼは荷物を置き、運転席に向かった。
「悪いが、ここを離れるぞ」
「え…」
「お前が見つかったら厄介だ」
「それなら、アタシ降りるよ?」
「逃げようたってそうはいかんぞ」
「そうじゃなくて…」
「時計と箒代はまだ金額に足りてないんだからな」
「…」
ガラクタ丸は夕日を背に再び走り出した。
追われるように。
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街から全速力で離れ、辺りはすっかり暗くなってしまった。
「…」
「…」
食事中だというのに、二人に会話が無い。
「あのさ…」
「んぁ?」
重い空気を割いたのは少女の方。
「あんたは…なんで旅してるの?」
「別に?何も目的もないぜ」
「そう…」
再び沈黙。
「俺は」
「?」
「ただボーっと放浪してるのが好きなんよ」
「好き?」
「ああ…こいつと旅して、仕事して、またどこかに移る…こういう当てのない旅がな…」
「あんたは…この生活に満足してるんだ?」
「…」
ベルゼは何も答えなかった。
夜が更けったころ、ベルゼは寝ていた。
その姿を少女は見つめている。
「…やっぱり迷惑かけられないよ…」
「短い時間だったけど、あんたと一緒に居れて楽しかったよ」
「…ありがとう」
少女はそう言い、ガラクタ丸から出ていった。
ベルゼは目を閉じながら、動かなかった。




