第56話 お爺さんが吹っ飛んだあああああああ!!
―荒野 ガラクタ丸 運転席―
シュッシュッシュッ!
カシュカシュカシュ……!
「………」
「………」
(こいつ……メッチャ集中してるな)
エリーネは運転席にかじりつくようにして、ガラクタ丸を走らせている。
ベルゼはその横から黙って様子を見ていた。
「……おい」
「ひゃああ!!」
キキーーッ!!
驚いて声をあげるエリーネ。
さらに急ブレーキまで踏んでしまった。
「な、ななななに!!??」
「いや、もうちょっと肩の力抜けよ……」
「わ、わわわ分かってるわよ!!」
「……お前、真面目だなぁ……」
再び走らせる。
「………」
「………」
(………ここでビビらせたらどうなるかな?)
ちょっと楽しくなってきたベルゼ。
そんな時だった。
「おーーーい!!そこのどでかい蒸気車やああああ!!」
外から男性の声が聞こえる。
「あ、悪いイリア、そこの窓から対応してくれ」
「うん」
窓を開けて外を見る。
そこには、蒸気車を走らせながらこちらに声をかける老人がいた。
「おおおおおい!!聞こえてるかあああ!!」
「聞こえてるよおおおお!!話聞くから止まってええええ!!」
「おおお!!良かった良かったああああ!!直してほしいもんがあるんじゃああ!!」
「分かったあああああ!!一回止まってええええ!!」
「それで直してほしいもんじゃがなあああああ!!!」
「だから止まってえええ!!危ないよおおおお!!!」
「ああああ!!??なんだってえええええ!!??」
「お爺さん!!!前!!前見てえええええ!!!」
「あああ!!!なんだ………」
ガシャーン!!
老人を乗せた蒸気車は岩にぶつかった。
老人はそのまま吹っ飛んだ。
「きゃああああああああああああ!!」
「ひゃああああああああああああああああああ!!」
キキーーーッ!!
またもや急ブレーキ。
「え!!?え!!?なに!???どうしたの!!??ワタシ人轢いた!!??」
テンパるエリーネ。
「お、おい!!どうした!!?イリア!!」
「お爺さんが吹っ飛んだあああああああ!!」
「なんだそりゃ!!?」
「う、嘘!!??お爺さん轢いちゃったの!!??ワタシ!!??」
カオスになるガラクタ丸車内。
「……ほぇ?」
普通に起き上がる老人。
―ガラクタ丸 リビング―
「がはははは!いやぁスマンのぅ!!」
豪快に笑う老人。
「……」
「……」
「……」
(なんで生きてんだ?)
(なんで生きてるんだろう?)
(なんで生きてるのかしら?)
「昔から体は頑丈での!ほれ、この通りじゃ!!」
身体をブンブン動かす老人。
「……まぁ、ここにも傷の治りが異常に早いヤツいるからね」
イリアがベルゼを見る。
「……そういう体質なんだよ」
「……で、爺さん、直してほしいもんって、まずはあんたの蒸気車からでいいか?」
「そうじゃな!あいつが動かんとまず帰れんしな!!がはははは!」
「そういえば、お爺さん、元々何を直してほしかったの?」
「ああ。昔、婆さんに買ってやったデカい置時計なんじゃが、ここにはないんじゃよ」
「まぁ、置時計っていうくらいだし、家にあるのよね」
「……ますます蒸気車直さなきゃならねえじゃねえか……」
「がはははははは!!」
豪快に笑う老人。
「……とりあえず、蒸気車見てみるか」
「そうだね。直せると良いけど……」
「……まぁ、やるしかねえだろ」
「あんた、この前は技術屋二人と加工屋がいるんだから直せないはずないって言ってなかった??」
「……お前、ここから見てみろよ」
エリーネが窓を覗くと、前がペシャンコになっている蒸気車が見える。
「………」
「あれ、まともに直そうとしたら、結構かかるぞ」
「しかも、今回は爺さん込みだ」
「??どういうこと?」
「……ああ…」
ベルゼがエリーネに耳打ちする。
「!!??」
「イリアの魔法、あんま使えねえんだよ…」
「……そ、そう!!そういうことね!!」
パッと離れるエリーネ。
「……」
それを横目で見てるイリア。
(顔……真っ赤……)
「ねぇ…ベルゼ?」
「どした?イリア」
今度はベルゼとイリアがコソコソする。
「今まで通り、アタシの魔法で壊れた部分は直せばいいんじゃないの?」
「……細かい部品はそれで良いんだけどよ……問題はあの前部分だ」
「……ああ……」
「ああ。あの爺さん、なんとなくだが、多分めっちゃ見てくるぞ……」
「……そういうことか………」
「……まぁ、久しぶりに俺の加工技術が火を噴くかもな」
ちょっとワクワクしてるベルゼ。
「まぁ、細かい部品が壊れてたら頼むわ。ただ、今回は工房にカギかけておけ」
「了解」
「エリーネ」
「何よ?」
「今回、ちょっくら大変だが、付いてこれるか?」
わざと挑発するベルゼ。
「……ふん!やってやろうじゃない!!」
気合を入れるエリーネ。
「がははは!なんか楽しくなってきおったな!!」
豪快に笑う老人。
(てめえのせいだよ!)
(お爺さんのせいだよ!)
(あんたのせいでしょ!)
3人の心が一つになる。




