第48話 ただのビジネスマンだ
-王立蒸気車製作所 監禁部屋前-
ドゴオオオオオオオオオンッ!!!
扉が吹き飛び、轟音と共に煙が噴き出した。
「何だ!」
「あの部屋からだ!!」
警備していた、騎士たちが集まる。
ブシュ!
煙からワイヤーが飛び出てくる。
ガコンッ!
「ぐぁ!!」
ワイヤーのフックがそのまま騎士に命中。
「おらあ!!」
「うわああ!!」
ドゴォ!
煙から出ると同時にベルゼが飛び蹴りを浴びせる。
あとにイリアたちが続く。
「逃がすな!!」
騎士が向かってくる。
「邪魔だ!!」
ブシュウウウウウ!!
ドゴオオオオオ!!
出力を上げたブレイクギアで騎士たちをまとめて吹き飛ばす。
「小娘!そいつを渡せ!」
「!?」
背後から騎士がやってくる。
「イリア!!」
「任せて!!」
あらかじめレンチをレイピアに変形させていた。
「そこ!!」
騎士の鎧のスキマに刺す。
シュウウウウウ!!
管を貫かれ、蒸気圧が一気に抜ける。
「くっ!!動けん!!」
蒸気圧による補助を失った鎧は、ただの重い鉄の塊だ。
騎士は身動きが取れなくなる。
ベルゼに追いつくイリアとエリーネ。
「やるじゃねえか」
ニッと笑うベルゼ。
「この程度、ラグネスさんに比べたら全然遅いよ!」
「…」
(この二人…こんなに強いの…!?)
エリーネは目を見開いていた。
その後も騎士をぶっ飛ばしながら、出口へ向かう。
-王立蒸気車製作所 蒸気機関製作現場-
「昨日見たところか」
「ここを抜ければ、出口までもうすぐよ!」
三人は駆け抜けていく。
-その時だった。
「ぐぁ!!」
青白い光がベルゼに直撃する。
そのまま、倒れる。
「ベルゼ!!」
「困るんだよなぁ…そいつがいなくなるのはさ」
「あ、あんた…!」
出てきたのは昨日エリーネを馬鹿にした中年の男。
「そいつの設計図、なきゃ困るんだよ…」
「エリーネ…アタシの後ろに…」
あの青白い光が何なのか分からない…
「エリーネ。おめえ、言ってたじゃねえか」
「自分の蒸気車を作りたいって」
「だから設計の仕事くれてやったってのに」
「何が不満なんだよ」
「…ふざけないで」
「あんたたちが求めたのは今までの既存の蒸気車ばっか」
「需要があるだけの物ばかり」
「少し変化を加えただけで、却下される…」
「結局ワタシが設計してたのは今までの蒸気車の延長線上でしかなかった…」
「そんなのが作りたかったわけじゃない!!」
「はぁ…」
「何言ってんだよ…」
「売れなきゃ意味が無いんだよ…」
「どれだけ夢を語ろうが、理想を持とうが」
「結局売れなきゃ金にならない」
「金にならなきゃ価値が無い」
「今はそんな時代なんだよ…」
呆れ気味に言う。
「なるほどね」
「!!?」
「ベルゼ!!」
起き上がるベルゼ。
「まぁ、理屈は分かるわ」
「確かにこんなバカでかい工場を維持するには」
「金が要るもんな」
パンパンとホコリを払いながら言う。
「ははは。そこの少年は分かってくれるじゃないか」
「…ベルゼ」
不安が募るエリーネ。
「…つまんねぇ」
「あ?」
「金が必要なのは分かるが」
「自分のやりてえようにもやれねえ」
「そんなの、つまんねえだろ」
「何ガキみたいなこと言ってんだ?」
「結局世の中は金なんだよ」
「金がねえと美味い飯、美味い酒、女」
「どれも手に入らねえだろうが」
「…あのなぁ」
「俺たち技術屋はガキみたいなもんだ」
「機械や作りてえもんに馬鹿みてえに夢中になって」
「技術屋同士で馬鹿みてえに語り合う」
「…最高じゃねえか」
「金を言い訳にして、大人ぶってる方がだせえよ」
「はぁ?」
「お前言ってたよな。効率化って」
「要は同じもんを量産してるだけだ」
「それを重視してるやつは技術屋じゃねえ」
「ただのビジネスマンだ」
「…なんだと!?」
中年男の額に血管が浮き出る。
「なんだ」
「まだ残ってんじゃねえか」
「元技術屋のプライドがよ」
「…見せてみろよ」
「てめえの魔法でな!」
「!!?」
「ま、魔法!?」
「俺が喰らったのは電気だ」
「だが、ただの電気にしちゃ、狙いが良すぎだ」
「電気を自分の好きな場所に打ち出す都合の良い機械なんてねえ」
「それに近くに電気の類もなかった」
「…十中八九、電気魔法だ」
「ちょっと待ってよ!魔法使うってことは…この人って…」
「魔族…!?」




