第47話 ここ、ぶっ壊すぞ
-ガラクタ丸 リビング-
「…」
「…」
夜が明けてもエリーネは帰ってこない。
「エリーネ…」
「…どしたんかねぇ…」
「やっぱ…嫌になったのかな?」
「それはないな」
「え?」
「あいつの目、見ただろ?」
「…うん」
「なら…」
「何かあった…ってこと?」
「俺はそう考えてるぜ」
「エリーネ…大丈夫かな…?」
「…もう一回見に行くか」
「!!そうだね!」
二人は王立蒸気車製作所へ向かう。
-王立蒸気車製作所 正門-
「ほいほいー」
「おはようございます」
守衛の前に二人が顔を出す。
「…昨日の奴らか…何の用だ?」
「これこれ」
ベルゼは名刺を見せる。
「…残念だが…」
「?」
「そいつは昨日で退職している」
「その名刺はもう意味はない」
「…いや、明日来いって言ったじゃん」
「情報が入ったのは今日の朝だ」
「…へぇ」
「そんな…」
イリアが肩を落とす。
「…こいつがどこに行ったか知らねえか?」
「…知らんな」
「中には入れねえのか?」
「言ったはずだ」
「部外者を中に入れることは出来ないと」
「…そうかい」
ベルゼは守衛に背を向ける。
「行くぞ、イリア」
「そんな!ベルゼ!」
「行くぞ!」
「…」
正門から離れた。
-ロムドール 広場-
「エリーネ…どこに行っちゃったんだろ…?」
「…」
顎に手を当てて考える。
「ベルゼ?」
「ああ。今考えてるんだよ」
「居場所を?」
「…居場所っていうより…」
「…違和感…?」
「??どういうこと?」
「あの守衛、露骨すぎねえと思わねえか?」
「露骨?」
「何ていうか…俺たちの事を、絶対に近づかせねえ…」
「そんな風に見えたんだよ」
「…」
「退職した」
「だから居場所も知らん」
「それ自体はおかしくねえ」
「だが…」
「…なんか変だ…」
「昨日は『もう帰った』」
「今日は『居場所は知らねえ』」
「退職したって情報が入ったのも、今朝だって言いやがる」
「一つ一つはおかしくねえ」
「だが、あの守衛の態度…いや、他もどうにも引っかかる」
「…他?」
イリアが首を傾げる。
「昨日、あの施設を見て回った時にな」
「変なとこ、あったんだよ」
ベルゼが顎に手を当て一点を見つめながら話す。
「…変な所?」
「細い廊下の奥に扉があったんだが……」
「外に通じる扉に見えた。でも、あの位置は建物の外壁じゃねえ」
「扉の向こうに、もう一部屋あるはずなんだよ」
「そういう場所がいくつかあった」
「…まさか…監禁部屋…とか…?」
イリアの顔が青くなる。
「分からねえ…だが…」
「このままだと気持ちわりい」
「…」
「イリア」
「なに?」
「今から見に行くぞ」
ベルゼが立ち上がる。
「あの施設に忍び込んでも」
「構わねえよな?」
「…当たり前でしょ」
-王立蒸気車製作所 監禁部屋-
「…」
早くいかなきゃいけないのに…
出られない…
昨日、退職届を出しに行った。
すんなり通るかと思ったのに…
『お前がいなくなったら誰が設計図を描けば良いんだ!』
『そんなの代わりがいくらでもいるでしょ?』
『ワタシが辞めても何も問題ないはずよ』
『あんたたち、いつもそう言ってたじゃない』
『…』
『じゃ、後は好きにして頂戴』
『荷物は処分して構わないわ』
『…』
『そういうわけにもいかねえんだよ…』
『…はぁ?』
ビリッ!!
『!!?』
…あれ?
意識が…
気付けば、知らない部屋に閉じ込められていた。
ドアもびくともしない。
ここで設計図を描けってこと?
…一生?
ここに縛られないといけないの…?
誰か…
誰か助けてよ…
「イリア…」
「ベルゼ…!」
――その時だった。
ガコン!!
「!!?」
いきなり天井から蓋が落ちてきた。
「よっと!」
ダクトから降りてきたのはベルゼ。
「よいしょっと!」
続いてイリア。
「…よくまた正解を見つけたね」
「ま、今回は事前情報があったからな」
「お前も慣れたらいけるって」
「慣れたくないってば!!」
「……」
二人を呆然と見ているエリーネ。
「エリーネ!大丈夫!?」
「…!!」
嘘…
来てくれた…
ワタシなんかの為に…!
ポロポロポロ…
「エリーネ…!」
ぎゅっ!
「もう大丈夫だからね…!」
…
コクッ
「…」
ベルゼは部屋を観察していた。
窓もない。
外れない扉。
山積みの設計図。
――あきらかだった。
「…イリア」
「…エリーネ」
二人の名前を呼びながら、
ベルゼがブレイクギアのベルトを締めなおす。
「…ここ、ぶっ壊すぞ」




