第45話 ブレイクギア
-ガラクタ丸 リビング-
「持って来たぜ」
「…なにこれ?ツールギア?」
ベルゼが持ってきたのは、騎士との戦闘で使っていたツールギアだった。
「おう。出力をぶち上げて、ついでに補強やパーツを組み込んで改造したヤツ」
「…いや、いくら出力上げたからって」
「ツールギア程度の出力じゃ大したことないじゃない」
呆れ気味に答えるエリーネ。
「…普通そう考えるよね…機械の事全然分かんないけど、アタシも思ったもん」
遠い目をしているイリア。
「でも、これで騎士ぶっ飛ばしてるぜ?」
キョトンとした表情のベルゼ。
「…え?」
信じられないという表情のエリーネ。
「この前なんてオートナイツもぶっ壊してきたぜ?」
「…犯罪者?」
「場所によっちゃ、指名手配もされてるな」
「…何してんのよあんた達…」
「一応言っておくけど、アタシは好き好んで騎士と関わっているわけじゃないからね」
「いや、実際に手を出してる時点でヤバいじゃない」
「…わざとじゃないもん」
イリアが顔を背けながら答える。
「…流石に話した方が良いかな…」
「な、何よ」
「…エリーネ、アタシ、魔族なの」
「…へぇ、そういうことね」
「…驚かないの?」
「むしろ納得いったわ。何で騎士と対立しているかが」
「ごめん。やっぱ無理かな?」
イリアが視線を下に向ける。
「勘違いしないで」
「え?」
「別に魔族がどうとか興味ないの」
「あんた達が無差別に騎士を襲う連中なら、そりゃ警戒したわよ」
「けど、魔族なら――騎士と対立するのは仕方ないわね」
「エリーネ…」
イリアの目が少し潤んでいた。
「いや?俺から手ぇ出すことも…」
「余計なこと言うな!!」
「…ねえ、イリア…」
「…なに?」
「こいつって結構ヤバいやつ…?」
「…気付いた?」
「…やっぱ…やめようかな…」
「嫌だ!一人にしないでよ!」
「お前ら…俺を何だと思ってんだよ…」
(なんでここまで言われなきゃならねえんだよ…)
「…っていうか、いつの間にかずいぶん仲良くなったな」
「ふふん!もう友達だもんね!」
「!!?」
「…エリーネ?」
「と、友達…」
顔を真っ赤にするエリーネ。
「??」
「!!そ、そういえば、このギアって見せてもらえるのかしら!??」
「あ、ああ。そのつもりだ」
「これもおもしれえぞ」
-荒野-
ブシュウウウウウウ!!
ベルゼのギアが激しい蒸気音を鳴らす。
「よっと」
ドガアアアアアアン!!
岩を殴って粉砕させる。
「こんな感じで、出力ブチ上げると岩も砕けるんよ」
「…」
「…」
「あれ?おーい」
「な、ななななななななな」
「??」
「なんでよ!!!意味わかんない!!!」
「へ?」
「へ?じゃないわよ!!なんでツールギアごときで岩砕けんのよ!!」
「いや、だから出力上げたって」
「いくら蒸気機関だからって、こんな小っちゃい機構でそこまで出力が上がるわけないでしょ!!」
「へへん!そりゃここが良いからよ」
右腕を叩くベルゼ。
「ああ…頭痛くなってきた…意味が分かんなさすぎる…」
「エリーネ。アタシ、機械は分かんないんだけどさ」
「??」
「やっぱ、あれ、おかしいんだ」
「ガラクタ丸を見た時の衝撃を、軽く超えるくらいよ」
「いやぁ」
頭を掻くベルゼ。
「「褒めてない!!」」
「あと、こうやって」
ジャキン!!
「スパイク出したり」
ブシュッ!
「こうやってワイヤーも出せるんだぜ」
「すげえ便利だろこれ」
「…」
「なんだよ?おかしいか?」
「本来の用途をメチャクチャな方向に広げてるのがおかしい」
「いやぁ」
ベルゼが頭をポリポリ掻きながら照れている。
「「だから褒めてない!!」」
「ついでだから聞くけど…」
「おう!」
「これにも名前付けてんの?」
「あ、そういえば聞いたことないねアタシも」
「そういや、別に付けてねえな」
「あら?あんたの事だからまた変な名前付けてるのかと思ったわ」
「別に変な名前付けた物なんて、ねえだろ? 」
「…はい?」
「というか、俺の持ってるもんで名前付けてるのガラクタ丸くらいだな」
「…イリア」
「なに?」
「こいつ…もしかして…」
「うん。自覚ないみたい」
「…」
「?」
「まぁ、せっかくだし、それにも付けたら?名前」
「こいつにか?」
ベルゼがギアをプラプラさせる。
「そうだね。せっかくだし、何か付けようよ」
「そうだなぁ…」
「よし!決めたぞ」
「…嫌な予感がする」
「こいつは『ぶん殴り手袋』だ」
「「却下!!!」」
「はぁ!?何でだよ!!?」
「ダサい!!」
イリアが叫ぶ。
「分かりやすいだろ!?」
「安直すぎるのよ!!」
エリーネが叫ぶ。
「もういいわ!ワタシが付けてあげる!」
エリーネが頭を抑えながら考え始める。
「あ、ちょっと安心かも」
「…何だよ…もう…」
「よし!これだわ!!」
手を叩くエリーネ。
「エリーネ!思いついたの!?」
「ええ!これ以外に考えられないわ!!」
「へえ…お手並み拝見といこうか」
ベルゼが腕を組んで様子を見る。
「それの名前は…」
「蒸気圧縮型多機能ユニットよ!!!」
「「却下!!!」」
「なんでよ!!?」
「長え!!」
ベルゼが叫ぶ。
「機械名なんてこんなもんよ!!」
「言いづらいよ!!」
イリアが叫ぶ。
「いや、やっぱここはぶん殴り手袋で…」
「それはないわね…やっぱワタシの案の…」
「長えし、言いづれえんだよ…」
「それでもあんたよりマシよ!」
「ああ!?んだと!?」
ベルゼとエリーネがケンカをし始めた。
「…あの…」
「なんだよ!?」
「なによ!?」
「それ、騎士の鎧やオートナイツを壊してるよね」
「そらまぁ、そのための機械だしな」
「だからまぁ…アタシも安直だと思うけど」
「ブレイクギア」
「とか、どうかな…?」
「…」
「…」
「あ、やっぱダメかな?」
「ふ…今回は譲るぜ…」
「感謝しなさいね…」
「あ、ありなんだ」




