第39話 な?変だろ?この街の連中
「見えたぜ。ロムドールだ」
「…ついに着いてしまった」
門も問題なく、通過できた。
「この辺で良いか」
ガラクタ丸を適当な広場で止める。
「運転手ってどんな人が良いの?」
「そうだなぁ…こいつを理解できる技術屋が良いんだが…」
「そんな都合よくいるもんかねぇ…」
「きゃああああああああああ!!!」
「!?ベルゼ」
「ここでこんな叫び声なんて珍しいな」
「呑気に言ってる場合か!!」
急いで降りてみたものの、広場に魔物も騒ぎもない。
誰かが襲われている様子もなかった。
その代わり…
「移動式蒸気機関工房《いどうしき じょうききかん こうぼう》B-GT型!!何でこんなところに!!」
「こんなの!博物館に持ってけるレベルじゃないのよ!!」
「ふふふふふ…こうなったら、持ち主に見つかる前にこっそり…」
身長の低い、金髪セミロングで眼鏡を掛けた少女が、イリアと目を合わせた。
「…」
「…」
「あの…」
「きゃあああああ!!ごめんなさいごめんなさい!!」
眼鏡の少女は土下座をし始めた。
「え?え?」
「つい出来心なんです!まだ何もしてないです!!見てただけです!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「あ…?え…?」
早口で何言ってるか分からない…
「何騒いでんだよ…?」
「きゃああああああああああああ!!!」
「!?」
「つい出来心なんです!まだ何もしてないです!!見てただけです!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
「…」
「お前…こいつに何したん?」
「アタシは何もしてない!」
-ガラクタ丸 運転席-
「きゃああああああああああああ!!!」
「何でこんなに綺麗に整備されてるの!!」
「まだ現役で動かせる!!なんでなんで!!?」
「すごいすごいすごい!!これは歴史的大発見よ!!」
「…」
「な?変だろ?この街の連中」
「想像の10倍くらい…」
ベルゼは彼女をガラクタ丸に乗せていた。
「っていうか、なんでアンタも普通に乗せてるのよ…」
「興味あるってんだから仕方ねえじゃねえか」
文句を言いつつも、嬉しそうに答える。
「…あんたも技術屋なんだねぇ…」
「何を今更」
「はぁ…はぁ…」
「お、落ち着いた?」
「ええ。悪いわね…まさか、こんなレアな蒸気車が現役で動いてるなんて思わなかったから…」
「そんなに古いの?これ」
「蒸気機関が使われるようになったころに出たのよこれ」
「…え?」
「そういや、これ買った時、そんなこと言われたっけな」
「あんた!!どこで買ったの!!??」
「え?覚えてねえ」
「くそ!!レアな蒸気車があったかもしれないのに…!」
この人、初対面なのに結構ぐいぐい来る…
「ただ、一つ気に入らないことがあるのよねぇ…」
「…なんだよ」
ベルゼが睨む。
「何でリビングとか寝室があるのよ!?」
「改造したからに決まってんだろ」
「なんで改造してんのよ!」
「便利だからに決まってんだろ」
「それじゃあ、重量上がって蒸気機関に負荷がかかるじゃないの!!」
ベルゼに怒りをぶつける眼鏡の少女。
「…そんな事か」
「そんな事って何よ!負荷がかかり続ければ、どんな機械だって…」
「こっち来な」
「え…」
「お前みたいなヤツは実際に見せて説明した方が早いだろ」
「…」
-ガラクタ丸 蒸気機構室-
「…何で…」
眼鏡の少女は唖然としている。
「ここに余った圧を逃がす管に、あるんだが」
「ただ逃がすだけじゃもったいねえ。そこで、この部品を中継させて、補助管も繋げる」
「そうすれば圧が勝手に調整されて、負荷も偏らねえ」
「それどころか、全体に効率よく圧が回るようになる」
「だから機関への負荷は減る。その上で、出力は逆にブチ上がる」
「さらに補強も入れてる」
「無茶させても、簡単には壊れねえようになってんよ」
「…意味が分かんない…」
「だが、問題なく動いてる」
「…こんなの理論的じゃない…」
「…はぁ?」
「本来なら、こんなことしても逃がす圧なんて大した量じゃないから、出力が上がる訳ないのよ!」
「それなのに、何で問題なく動かせたわけ!?」
「ああ。本来ならな」
「??」
「もう忘れたか?こいつの型式」
「!?」
「ようは今の蒸気機関の構造とは違うんだよ」
「…そんなのどの本にも載ってなかった…」
「そりゃ、こんな古臭い機構、今の本に書かねえだろ」
「…」
「だが、おもしれえだろ?」
「…悔しいけど…」
「…面白い…」
「そうだろそうだろ」
ベルゼは嬉しそうに笑ってる。
「でも!」
「…まだ言うか…」
「まだ一つ気に入らないのよ!」
「なんだよ」
「何よ!!”ガラクタ丸”って!」
「え!?そこ!?」
イリアがツッコミを入れる。
「正式名称は”暴君ガラクタ丸”だけどな」
ドヤッ!
「…ダサ!!」
「良い名前だろ?」
「ダサいって言ってんのよ!!」
「わぁ!意外と意見が合う人だぁ!」
イリアが喜んでいた。




