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ブレイクギア ー動く工房の破壊整備士と創造の魔族少女ー  作者: すのもとまさお


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第37話 いってきます


―早朝 ガラクタ丸付近―


「お姉ちゃん…」

「…」

少女の頭を撫でるイリア。

少女は名残惜しそうに下を向いている。


「本当にお世話になりました」

「このご恩は一生忘れません」

少女の父親が頭を下げる。


「そんな…こちらこそ…」


治療、特訓が終わり、マイエルから出る日。


父親と少女はこの街に残るそうだ。


「ラグネスさんが仕事と住処を紹介してくれましたし、これからは娘と二人でこの街に住もうと思っています」

「前の町では…トラブルを起こしてしまいましたから…」

「…ごめんなさい」

「あ!いえ!!あなた方のせいではありません!!それに…」

「??」

「妻を言い訳にして、立ち止まるのもやめようと思ってましたから」

「それなら、いっそ、全部やり直して1から出直そうと思ったんです」

「…お父さん、お強いですね…」

「いえ、これもあなた方のおかげです」

「…本当にありがとうございました」

深々と頭を下げる父親。


「お姉ちゃん…」

「…」

「お姉ちゃんも一緒にいようよ?」

「…ごめんね」

「…!!」

「お姉ちゃん、もう行かなきゃ」

「嫌だ…嫌だよぉ!!」

イリアに抱き着いて泣いてしまった。


「イリス…わがまま言っては…」





「イリスちゃん」



「!!?」


イリスは驚いた。

この時、イリアは初めて名前を呼んだ。


「アタシにも妹がいたの」

「イリスちゃんと同じ名前」

「今はもう会えなくて寂しかったけど」

「イリスちゃんが仲良くしてくれたおかげで、寂しくなくなったよ」

「だから、また帰ってくるから」

「待っててくれる?」


「…」

涙目で頷く。


「ありがとう」

「だから、イリスちゃん」


「??」




「いってきます」



「…いってらっしゃい」


涙を溜めた目で。

それでもイリスは、笑顔で答えた。


「…」

その光景をベルゼは遠目で見る。


「…世話になったな、ラグネス」

「こっちこそ、あんたのおかげで楽しかったわ」

「短い間だったけど」

ウィンクするラグネス。


「ベルゼさん…」

シャロンも名残惜しそうにしている。


「シャロン。次会う時、楽しみにしてるぜ」

親指を立ててニッと笑う。


「はい!目標を改めました」

「改めた?」

シャロンは指を差す。


「ベルゼさん。あなたをいつか超えます!」

「!!」


マジかよ…


…言うようになったじゃねえか。



「…おもしれえ。出来るもんならやってみな」

にやりと笑う。


「やってみせます!」

にっと笑う。


「…あたしも寂しくなるわね」

「また来てやるよ。シャロンの成長も気になるしな」

「そうだけど、それだけじゃないのよ」

「??」


「ベルゼさん」

「んぁ?」


「…私もベルゼさんと同じように」

「この世界を回ってみたいと思ってます」


「!!?」

「仕事はベルゼさんと同じような、さすらいの整備士ですね」

「…マジか…」


「マジです。今は蒸気車も買えないので、大きな機械の整備は無理ですが」

「最初はコツコツ、小さな機械の修理からやってみたいと思います」


「…」

こりゃあ…マジで俺を食うかもな…

俺もうかうかしてられねえ。


「シャロン」

拳を突き出す。


「俺たちは今からライバル同士だ」

「負けねえぞ」


「…負かしてみせます!」

シャロンも拳を出し、突き合わせる。


「ラグネスさあああああん!」

「イリアちゃん!」


イリアがラグネスに抱き着く。

「ちょ、ちょっと!」

突然の事でたじろぐラグネス。


「ラグネスさん!本当にありがとうございました!」

「ラグネスさんとお仕事出来たこと!」

「特訓に付き合ってくれたこと!」

「アタシ、絶対に忘れません!」

笑顔で礼を言うイリア。



「…まぁ最後の特訓でもボロボロだったけどねアンタ」

「あ…はははは」

苦笑いするイリア。


「でも、これからよ」

「…はい!」

「強くなるヒントは与えたわ。これからも頑張んなさいね」

ウィンクするラグネス。


「…もちろんです!」

「まずは、ベルゼよりも強くなってみせます!」

イリアがベルゼに指を差す。


「んぁ?俺?」

「お互いラグネスさんの弟子なんだから、最初は兄弟子を超えるところからでしょ?」

「あー…まぁ、そうだな」

「…いいじゃない。その心意気よ」

「はい!」


「シャロンさん!」

「はい?」

「シャロンさんにもお礼を言わないといけないの」

「…お礼?」

シャロンはキョトンとする。


「アタシ、自分が強くなれる方法を見つけたの」

「これもシャロンさんのおかげ」

「本当にありがとう!」

握手をしようと手を差し出す。


「…それをいうなら」

「私もイリアさんのおかげで自分の考えを改めました」

「え?」

「なので、イリアさん」

拳を出す。


「あなたにも負けませんから!」

「!!」

「…こっちこそ!」

イリアは握手しようとした手を握りこむ。

拳を合わせる二人。


「…こいつら、いつの間に仲良くなったんだ?」

「女の子は早いのよ」

「ほえー」



「そろそろ行くか」

「うん!」


二人はガラクタ丸へ。


「二人ともー!たまには帰ってくるのよー!」

ラグネスは叫ぶ。


シュウウウウウ!!

ポオオオオオオオオオオ!!


ガラクタ丸は蒸気を噴き上げる。


その音は、まるで——

新しい旅の始まりを告げるかのようだった。



「ベルゼさん、イリアさんには話してないんですかね?」

シャロンが、去っていくガラクタ丸を見ながら呟く。


「まぁ、さくっと話せるような事じゃないからねぇ」

ラグネスは小さく笑った。


…本当は、逆なのよねぇ。






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