第36話 友達がくれたヒント
-バー 地下訓練場-
「さて、明日で最終日だけど」
「どう?強くなる方法見つかった?」
「…はい!」
「あら、昨日と違う目してるわね」
「…友達がくれたヒントですから」
「友達…ああ…」
ラグネスはふふっと笑う。
イリアはレンチを取り出した。
「…それがヒント?」
「はい!」
「…いいわ。かかってきなさい!」
「…いきます!!」
ダっ!!
イリアは一気に距離を詰める。
その目に迷いはない。
「いいわねえ!肉弾戦ならお好みよ!」
ラグネスも距離を詰める。
近距離戦!
先に手を出したのはラグネス。
「まずは軽く一発よ!!」
拳が飛んでくる。
「っ!!」
なんとかギリギリ躱す。
「甘い!!」
避けた方向にすかさず蹴りが飛ぶ。
「!!?」
避け切れない!
とっさにレンチを握る手に力がこもる。
ガシャアアアア!!
そのまま吹き飛んで壁に激突する。
「いたたた…」
「…あら」
レンチは、盾へと変化していた。
「勢いまではダメだったかぁ…」
イリアはフラフラだった。
「…」
ラグネスは黙る。
「ら、ラグネスさん…?」
「創造魔法の弱点を上手く補ったわね」
「!?」
「…はい!」
「たしかに今までのあんたのやり方は面白いけど」
「距離があると、どうしても発動速度や精度が劣るわ」
「はい。でも武器なら…」
「変化量は制限されますけど」
「その代わり、精度と速度は落ちません」
「…」
「まさか、ホントに自分で導き出すなんて」
「筋が良いわねアンタ」
「!!」
初めて…まともに褒められた!
「だけど惜しいわ」
「…え…?」
「レンチのままじゃ、騎士には対抗できない」
「理由は分かるわね?」
「…魔法潰し…」
「そのとおり」
「だから、道具の延長じゃない――」
「しっかりとした武器が必要よ。あんたには」
「…はい。だから」
魔力を込め、盾が歪む。
金属が軋みながら、細く、鋭く引き伸ばされていく。
やがてそれは――一本の細剣へと姿を変えた。
「基本はこれで行こうと思ってます」
「…レイピアね…いいじゃない」
「はい。騎士と戦う前に変化させておけば、問題ありません」
「それに、レンチじゃなくて、武器を持ち歩く方が怪しまれそうですし…」
「それもそうね」
「アタシには、ラグネスさんみたいなパワーもないし」
「ベルゼみたいに状況をうまく使って戦うことも出来ません」
「でも、これなら魔物はもちろん、騎士が相手でも鎧のスキマを狙うことが出来ます」
「力じゃなく“構造”で壊す…」
「騎士相手にはそっちの方が現実的ね」
(…ベルゼちゃんの戦い方も参考にしたわね…)
「はい…!これがアタシが導き出した壊し方です…!」
「あんた…」
「??」
一歩、ラグネスが踏み出す。
「最高じゃないの!」
「!!?」
むぎゅうううううううう!!!
「あんた!あたしの予想以上の答えを出してくれたわ」
「ぐええええええ!!!」
「いいわよいいわよ!これであんたはまた強くなれるわ!」
「ラ…ラグネス…さん…」
「あ、あらごめんなさい!つい興奮して…」
「だ、大丈夫です…でも、一つ問題が…」
「あら?今の所、良い感じだけど?」
「…アタシ、レイピアの使い方が分かりません…」
「…後であたしの団員を連れてくるわね…」
「武器の扱いに詳しい子をね…」
「…すみません…」
「ま、とりあえず今はレイピアの使い方よりも、武器を使って工夫しながら戦う方法を教えるわ」
「え!?指導してくれるんですか!?」
今まで模擬戦ばかりだったのに…!
「いくら導き出したと言っても、使い方分かんなかったら、模擬戦にもならないわよ」
「それなら、いくつか答えを教えて、その中から自分で工夫した方が手っ取り早いわ」
「ありがとうございます!お願いします!」
「ふふ。ガンガン行くわよ」
それからもイリアは、
武器の変化と戦い方を――容赦なく叩き込まれていった。




