表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイクギア ー動く工房の破壊整備士と創造の魔族少女ー  作者: すのもとまさお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/52

第35話 なんであの人が、イリアさんを選んだのか


「はぁ…はぁ…」

笑いすぎて息切れをするシャロン。


「だ、大丈夫?」

「大丈夫です。すみません。せっかく来てくれたのに…」

「それは大丈夫だけど…でも」

「?」

「少しだけ元気が出たみたいで良かった」

ニコッと笑う。


「…ご心配おかけしました」

目線を逸らしながら答える。


「シャロンさんも魔族なんだよね?」

「まぁ、そうですが」

「どんな魔法を使うの?」

「あー…私のは…そうだなぁ…」

「??」

「そうだ、このウエスでいいか」

汚れたウエスをテーブルの上に置く。


「見ててください」

シャロンは魔力を込める。


そうすると、汚れたウエスはたちまち綺麗になっていった。

「これって…」

「汚れを綺麗に落とす魔法です。戦闘向きでは全くないですね」

くだらない魔法だ。

皆にも馬鹿にされるし…


「え!?これすごくない!?」

「!!?」

この人、すごいって言った…?


「どんな汚れでも落とせるの!?」

「まぁ、見えていれば基本的には…」

「メチャクチャすごいじゃない!!」

「でも、戦闘向きじゃないですよ?」

だから、私は戦えない…

体も強くないから…


「??戦闘向きじゃないとダメなの?」

「え?」

「これだって、普通にすごいと思うけどな。アタシのいた村には居なかったし」

「そうなんですか?」

「アタシのいた村では生活の為に魔法を使う人がいたけど、戦闘向きじゃない人もたくさんいたよ」

「なんなら、戦えない人の方が多かったんじゃないかな?」

「イリアさんの村って…」

「魔族しかいなかったの。だからみんな魔法が使い放題」

「…羨ましいですね…」

「…」

「あ…ごめんなさい…何か気に障る事を…?」

「ううん。違うの。アタシの村、もうないんだ」

「え…」

「騎士の襲撃にあって…アタシの村は燃やされちゃった…」

「!!??」

「ごめんなさい!!知らなかったとはいえ、何てことを…!」

「あ、良いの良いの!ベルゼや皆のおかげでなんとか立ち上がれたから…」

「…強いんですね…イリアさんは…」

羨ましい。


…私とは違う。


「…そんなことないよ…でも…」

「?」

「アタシも強くなりたい…だから今ラグネスさんに特訓してもらってるの!」

「ああ…聞いてますよ」

「でもてんでダメで…どうしたらいいかまだ模索中なの」

「もうすぐ、この街からも出ることになるのに…」

「お父さんが目覚めましたからね」

「せめてヒントになる物があれば…」

「ヒント…ですか…」

「うん…アタシ戦う事なんて今まで経験してなかったから」

「え」

「ベルゼと出会ってからかな。騎士や魔物と戦うようになったのは」

「…」

「どしたの?」

「……怖くないんですか?」

「え?」

「死ぬかもしれないんですよ?」

「それなのに…」

きっとこの人はそれを克服してるんだ…だから…


「いや、メチャクチャ怖いよ?」

「…はい?」

「いや、だから怖くて怖くて仕方ないんだってば!」

「…ええええ!!!」

「ええええ!!!って何よ!」

「いや、だって…怖いなら逃げれば…」

「…逃げても良いことなかったからさ…」

「え?」


「…」

すう…っと息を吐くイリア。

そして、少しだけ黙り込んだあと、ぽつりぽつりと昔のことを話し始めた。





「…っ」

話を聞いているうちに、息が詰まった。


「…見捨てたんだよ…妹を」

「…辛い事お話させてしまって申し訳ないです」

「ううん。聞いてくれてありがとう」

「え…」

「これ、誰にも話したことないの。ベルゼにもね」

「ベルゼさんにもですか?」

「妹を見捨てた話なんて、出来ないよ…」

「…」

「だから、秘密ね」

「え」

「二人だけの秘密。いいでしょ?」

「というか、話せませんよ…」

「そりゃそっか」

ふふっと笑うイリア。


「シャロンさんの魔法ってあまり目立たないし、普段でも使ったりするの?」

「そうですね…私は設備や道具の汚れを落とすときによく使いますね」

「…道具の…?」

「ええ。使っていればドンドン汚れてきますからね。油とかで」

「そうなの?」

「道具は使っていけば、壊れていきますし、汚れていきます。だから点検は欠かせないんですよ」

「ほー」

「私たち整備士は、道具がないと何も出来ませんから」

「だから工具って、大事にしないとダメなんです」

「…これはベルゼさんの受け売りですけどね」

大事そうにレンチを拭く。


「それなら従業員も大事にして欲しいわ」

「え、ベルゼさんって意外と優しいですよ?」

「アタシには優しくないいいい!」

気付けば普通に会話できていた。


「…」

「道具か…」

イリアがぼそっと言う。


「イリアさん?」

「うん。シャロンさん!ありがとう!!これならイケるかもしれない!」

「何かヒントになれそうな物、見つかりました?」

「うん!シャロンさんのおかげだよ!」

「良かったです!」

「ごめん!ちょっと自主練してくるね!」

「はい。いってらっしゃい」

…なんであの人が、イリアさんを選んだのか、

…理由が分かった気がする。


私に足りないもの…か…


今まであの人と肩を並べる事しか考えてなかった。


…だけど、彼女は違う。

ただベルゼさんに追いつくことだけを、考えてるんじゃない。

最初から、あの人と対等に向き合ってる。


そうか…

私の足りない物って…



「……絶対に超えてみせる…」

「ベルゼさんを…!」


レンチを握る手に、力がこもる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ