第31話 人間も魔族も大して変わんないのよ
「うううヴううヴヴうヴヴうううう」
「…」
帰ってきたイリアに父親が起きたことを伝えたら、リビングで号泣中。
「よがっだああああああよがっだああああよおおおおお」
「お前…そろそろ泣き止めよ…」
「むりい…無理い…!」
「はぁ…」
かれこれ10分ほど泣いている。
「とりあえず、親子は疲れてるから明日な」
「うん!あの子とお父さんの邪魔じだぐないいいい!!!」
「そういやさ」
「うぇ??」
「お前、何でイリスのこと名前で呼ばねえの?」
「…」
「まぁ、別に無理に呼べってわけじゃねえけど」
「色々あるのおおおおおお!!」
「…そか」
もうそっとしておくか…
「とりあえず、お前も部屋で休め」
「グス…うん…」
「明日、親子と会う時そんな面してんじゃねえぞ」
「分かってるわよおおお…!」
イリアはそう言って、部屋に戻る。
「…ふぅ…」
山場を一つ越えたか。
命に別条がないとはいえ、意識が戻ってなによりだ。
さて、父親の方はもうちっと回復魔法が必要だな…
まだまだラグネスの世話になるな…
あとはイリアがどこまで強くなれるか…だな…
強くなれば、大抵のことは何とかなる。
(……大抵、はな)
「…」
今は、それしか出来ねえ。
少しだけ視線を落とす。
「俺と違って…あいつは変われる」
『……ゼ』
『…ルゼ』
『ベルゼ!』
『!?』
『何ボーっとしてんだ?』
『昨日眠れなかったんでしょ?』
『どうせまた本読んで寝てねえんだろ!』
『ベルゼって興味持つとホントにそれしか見ないんだもん』
『…うるせえなぁ。魔物討伐だろ?早くいくぞ』
『おいおい。お前がボーっとしてたんがイケないんだろ?』
『ま、待ってよー』
「………」
窓から差し込む朝日が、部屋を照らす。
いつのまにか寝てたか…
…久しぶりに出たな…
ベルゼは胸に手を当てる。
――ま、消えるわけねえか…
-ガラクタ丸 客室-
「うん。傷も残ってなさそうね」
「ありがとうございます」
客室でラグネスが父親の容体を見ていた。
「いいのよ。こっちはその間良い労働力がいるし」
「でも、念のため、あと3日はここにいて頂戴。回復魔法をかけるから」
「…魔法って素晴らしい物なんですね…」
ボソッと呟く。
「急にどうしたの?」
「僕たちは王国の言う事を真に受けていました」
「まぁ、そういう世の中だから仕方ないわね」
「ですが、僕の事を助けてくれたのは魔族とその魔法です」
「騎士たちは、魔族というだけでかなり敵視しています」
「魔族と関われば、それだけで罪になるくらいに…」
「ホント、難儀な世の中よねぇ…」
「ま、ハッキリ言っちゃえばね」
「はい?」
「人間も魔族も大して変わんないのよ」
「魔法使えるかどうか、そのくらい」
「あとは同じよ」
「…」
「それに魔法は道具や機械と同じよ」
「同じ?」
「包丁だって、人殺せるでしょ?」
「でも本来は料理するためのもんよ」
「魔法もそれと一緒。使い方次第よ」
「…」
「王国は、それを極端に怖がってるだけよ」
「ホントもうやんなっちゃうわ」
ため息交じりで答えるラグネス。
「…あの人たちには悪いことをしてしまいました…」
「大丈夫よ。大して気にしてないだろうから」
「特にイリア…あの女の子は未だに泣いて喜んでるから」
ラグネスはふふっと笑う。
「…会ってそんなに経ってないのに、なぜそこまで…」
「あの子も責任を感じてるからよ」
「責任?」
父親は首をかしげる。
「あなた達を巻き込んでしまった。だからこそ」
「あの子は強くなろうとしてるわ」
「もう誰も傷つけないように」
「あんたも、もし反省してるなら、どうすれば良いか、考えたら良いんじゃないかしら?」
「…そうですね」
「はい!今日はこれで終わりよ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、出歩いては良いけど、散歩程度にしてね」
「はい」
「じゃ、お大事に~」
ラグネスは客室から出た。
「どうすれば良いか…か」
父親はしばらく考え込んだ。
――あの少女の顔が、浮かぶ。




