第26話 あんたが目指すのは
-バー 地下特訓場-
「はぁ…はぁ…」
ダメだ…
全くかなわない…
「まぁ、大体わかったわ」
ラグネスは汗一つかいていない。
「さて、あんたってさ」
「はい」
「対人戦全くやったことないわね」
「!?」
「ベルゼちゃんについていくようになってから、初めてだったんじゃない?」
「ど、どうしてそれを…」
イリアは驚きを隠せなかった。
「だって、魔法の使い方がてんでなってないから」
「!!?」
「あんたの魔法をおさらいするわね」
「はい」
「まずあんたの魔法は創造魔法」
「物の形や状態を変化させる魔法」
「…それはいいわね」
イリアは頷く。
「あんたの魔法はすごいわ」
「でもやってる事は変形した物をぶつけてるだけ」
「たしかに威力はあるけど、これ対人戦じゃ使えないわよ」
「ど、どうして…」
「やってて分かってるでしょ?」
「あんた、さっき何回当てられた?」
「……一回も、当たってないです」
「それが答えよ」
「…」
心当たりがあり過ぎる。
分かっていた。
分かっていたのに――
何も出来なかった。
「不意打ちならイケると思うけど、それだって“相手が素人なら”の話よ」
「まさか、騎士が素人なわけないしね」
「…」
「それだけじゃないわ」
「え!?」
「あんたの一番のアドバンテージは魔法が使える事」
「それなのに、あたしに一発も当てられてない」
「そんな状態でもし魔法が封じられたら」
「…何も出来ないです」
「そのとおり」
悔しい…
これじゃあ…ベルゼの相棒なんてとても…
まだ…助けられるだけなの…?
「だからあんたが目指すのは」
「魔法に頼らない戦闘スタイルよ」
「魔法に…頼らない…」
「というより…」
「魔法を使えばもっと強くなれるスタイルね」
「そ、そんな方法があるんですか?」
「さぁ?」
「さぁ!!??」
「あたしはあんたじゃないからね。こればっかりは自分で探しなさい」
「…はい」
「さて、これくらいにして仕事まで休んでなさい」
「あ…ありがとうございました!」
頭を下げる。
…自分のスタイル…か…
-バー ボイラー室-
「ベルゼさん。ここの調整はこんな感じで良いですか?」
「どれどれ…」
ベルゼが覗く。
「…上出来だ。後はフタ締めて終わりだな」
「はい!」
シャロンがフタを締め、ボルトで固定する。
「ふぅ…」
「おつかれさん。やっぱ一人で出来るじゃねえか」
缶ジュースをシャロンに渡す。
「いえ、ベルゼさんが見てくれたので」
「見てる限り何も問題ねえよ。もう一人前だな」
「…そうですね…」
なんか、あんま嬉しそうじゃねえな…
「あの…」
「ん?どした?」
「どうして…イリアさんは一緒にいるのでしょうか?」
「ん?従業員だからな」
「それなら、私も従業員にさせてくれませんか?」
「…え?」
「ここで働きたいんです」
「ベルゼさんの下で、もっと学びたい」
「俺の元でか?」
「はい。それに、ここの整備が出来るなら、腕は問題ないと思います」
「…」
シャロンを従業員にか…
確かに、ありっちゃアリだな…
…
「ダメですか…?」
「んー…」
シャロンがガラクタ丸運転出来っかな…?
いや、それこそ俺が教えれば出来るだろうなこいつなら…
だけどなぁ…
「すまねえな。今は募集してねえんだ」
「そう…ですか…」
「それに」
「?」
「お前はもう俺の力は必要ないと思うぜ」
「!?」
「後はその力でどうするか…だな」
「…」
今こいつが俺の傍にいたら、一生俺から離れられなくなる。
…それだけはダメだ。
「…ですが…私は…まだ…!」
シャロンが何かを言おうとした時だった。
――外が、騒がしい。
「おい!!魔物だ!!」




