第25話 ベルゼちゃんとどういう関係になりたいの?
-ガラクタ丸 リビング-
「なんか少し吹っ切れたか?」
「うん。ラグネスさんのおかげでね」
「まだ完全にじゃないけど」
「…そか」
「んー…」
少女が目をこする。
「あ、眠いか。ベッドに行こっか」
「うん。おやすみお兄ちゃん」
「おう」
少女とイリアは寝室へ向かった。
「ふぅ…」
とりあえず、イリアは心配は無さそうだ。
あとは、親子のことだ。
父親はまだ眠っちゃいるが、ラグネス曰く、回復魔法をかけ続けていればじきに起き上がるらしい。
起きてからは、流石にあの街に送ることは出来ねえな。
ここに残ってもらった方が良いか?
まぁ、それはあの親子が決める事だが…
それと…ガラクタ丸を動かせるヤツが欲しい。
こんなバカでかい蒸気車、放置されてたら流石に目立つわな。
街の中に入れれば問題ない。
が、今回みたいな外に置く場合は、移動できるよう、運転手を待機させておきたい。
騎士に見つかると面倒だからな。
まぁ、今まで俺一人だったからあんま気にしなかったが…
…とはいえ、イリアには無理だな…
父親を運転手で雇ってみるか?
…いや、この年式の蒸気車を運転できる奴なんていねえな…
俺と同じような整備士とか、技術屋だな…
…いねえだろ。
そんな都合の良いやつ…
「どうしたもんかねぇ…」
「なんか悩み事?」
イリアが戻ってきた。
「早いな。もう寝たのか」
「うん。色々あったから疲れちゃったみたい」
「そか…」
…少なくとも父親はナシだな。
子供がこんな所にいちゃいけねえな…
「どうしたの?」
「ん?いや、こいつを運転できるヤツいねえかなって思ってな」
「運転?」
「ああ。こいつ古いからな。今の蒸気車とは勝手が違うからな」
「アタシやってみよっか?」
「…」
「…無理かな?」
「…」
「…ごめん、やめとく」
「それが良い」
…運転手…探してみるか…
-次の日-
「よっこいせっと」
工具箱を用意して、ガラクタ丸を出る。
「おはようございます。ベルゼさん」
「おお。早いなシャロン」
「きっとベルゼさんなら、この時間に来ると思ってたので」
「良い心がけだ。あいつにも見習ってほしい位だ」
ベルゼがガラクタ丸を見て言う。
「…あの…」
「ん?」
「イリアさんって…どうなんですか?」
「どうって?」
「あ…えっと…その…整備士としてというか…何というか…」
「??あいつは整備士じゃねえよ」
「え?」
「魔法が便利だから、部品の加工して貰ってんのよ」
「ああ。そういう…」
「安心しろ。お前の腕は、そんじょそこらの奴らよりも圧倒的に上だ」
「なんせ俺が教えてんだからな」
そう言って、シャロンの背中を叩く。
「…はい!」
シャロンの口角が上がる。
頬が赤く染まってるように見える。
――朝日のせいだけでは、なさそうだった。
―2時間後-
「んー…」
イリアが身体を起こし、伸びをしている。
「ようやく起きたわね小娘」
「わぁ!!」
傍にはラグネスがいた。
「あ、あれ?ベルゼは?」
「ベルゼちゃんなら、とっくに店の設備の修理に向かったわよ」
「え…だってまだ…8時くらいじゃ…」
「まぁ、あんたの仕事までは時間はあるわね」
「ってことで、ちょっと付き合いなさい」
「??」
「あたしと特訓よ」
-バー 地下訓練場-
「店の下にこんな設備があったなんて…」
「いくらこの街でも魔法を見られたらマズイのよ」
「この街でも…?」
「…あんた…この街の事、聞いてないの?」
「と、特には…」
「…あのバカ…」
「??」
ラグネスが頭を抱える。
「特訓に入る前に、少しだけこの街の事を教えるわ」
「は、はい」
「まず、この街に騎士はいないわ」
「…え!?いないんですか?」
「ええ。そもそも、何で各街に騎士が配備されるか分かってる?」
「えっと…」
「…分かんないのね…」
「…すみません」
「良いのよ。色々あるけど、一番は治安維持よ」
「ああ。そういえば、ベルゼから騎士の主な仕事は治安維持っていうのは聞きました」
「そう。だけど、この街に騎士がいない。ということは?」
「え…っと…」
イリアは考え込む。
「治安維持が必要ない…?」
「惜しいわね。正確には騎士とは別に治安を維持してる連中がいるの」
「別に…?」
「ま、だからここじゃ割と皆自由に過ごしているわけだけど」
「それでも魔族の偏見ってあるのよ」
「…」
「それであたしらの訓練のために、こういう場所を用意したのよ」
「な、なるほど…」
「さて、本題に入るわね」
ラグネスが真剣な顔つきになる。
「あんた、ベルゼちゃんとどういう関係になりたいの?」
「……………は?」
「だから、どういう関係になりたいのかって聞いてるのよ」
「え…いや、どういうというか…何というか…」
どう答えれば良いんだこれ…
「なんか、勘違いしてるようだけど…」
「え?」
「あんたはベルゼちゃんに守られる存在になりたいの?」
「!」
「それとも、一緒に戦う相棒になりたい?」
「…」
イリアは黙る。
そして大きく息を吸う。
「…一緒に戦う…相棒…です…!」
まっすぐラグネスを見据える。
「なら、今のままじゃダメって分かるわね」
その言葉にコクっと頷く。
「じゃあ、まずは魔法ありきであたしに攻撃しなさい」
「え!!?」
「遠慮はいらないわよ」
「だって」
「相手にならないから」
次の瞬間、視界が揺れた。
気づいた時には、
ラグネスの拳が目の前で止まっていた。
「!!?」
身体が反射的にのけぞる。
「これであなたは1回死んでいるわ」
「!?」
「これで分かったでしょ?」
「全力で来なさい」
「…はい!!」




