第24話 やっぱラグネスの娘だわ、お前
「これでよしっと」
「お疲れ様です。ベルゼさん」
ベルゼが任せられた仕事は店の設備の点検だった。
古い設備は、あちこちで軋む音を立てていた。
「ああ…なるほどな。たしかにこれは珍しいパターンだな」
「すみません。ご迷惑をおかけしてます」
「ああ。気にすんな。っていうかシャロンのせいじゃねえだろ」
「でも、私が見れれば…」
「しゃーねーって。下手に自分でいじらねえで、俺を待ってたのは正解だ」
「ま、それに今回は俺の方が世話になってるからな」
「…なにより前回に比べたら圧倒的にマシだしな…」
「私としては、ベルゼさんのあれをもう一度拝見したかったです」
「…あれってなんだよ」
「女装です。ベルゼさんの」
「…」
「…」
「見た目は似てねえけど」
「やっぱラグネスの娘だわ、お前」
「それ、褒めてます?」
「褒めてねえよ!」
後片付けを終え、店に戻ろうとする。
「そういえば、ベルゼさん」
「ん?」
「今回、珍しく焦ってたらしいじゃないですか」
「…ラグネスの野郎…」
「何かあったんですか?」
「別に」
「あったんですよね?」
「ねえって」
「いいえ、あったに違いありません。教えて下さい」
「なんだその決めつけは」
「だって」
「ずっと見てましたから」
「…」
「ったく、ホントに親父似だなお前は」
「今回は褒めてますよね?」
「判断任せる」
「ふふ」
ベルゼはため息をつく。
「ま、お前が今よりも腕を上げたら」
「なんでも話してやるよ」
「言いましたね?」
「おう」
「また頑張る理由が出来ました」
「…そか」
思わず笑みがこぼれた。
店の前に着いた時、ラグネスが立っていた。
「あら?もう終わったの?」
「今日の分はな。明日また別のところ見る」
「悪いわね。機械に関してはあたしはチンプンカンプンで」
「別に構わねえよ。前の仕事に比べたら遙かにマシだ」
「…やっぱりちょっと残念だな…」
シャロンがぼそっと聞こえないように言う。
「まぁ、大抵のことはもうシャロンに任せても大丈夫だ」
「この子がまだ無理だって言うのよ」
「なんだよシャロン。さっきの修理だってお前がいてくれたおかげでだいぶ楽だったぜ?」
「ですが、まだベルゼさんには及びません」
「さっきのヤツだって分かんなかったし…」
「あれは珍しいパターンだ。普通なら場数詰まなきゃ気付かねえ」
「それに気づいた時点で大したもんだ」
「…考えておきます」
プイっとベルゼから顔を背ける。
頬が熱くなるのを感じる。
ラグネスはふふっと笑う。
「おまたせ…ってあれ?」
「みんないるー!」
イリアと少女が出てきた。
「ようやっと出てきたわね」
「あ、遅かった?」
「んーんー、いいタイミングよ」
「??」
「じゃ、イリアちゃん、ベルゼちゃん、明日もよろしく頼むわよ」
「ああ」
「はーい」
「あ、シャロン」
「なんですか?ベルゼさん」
「明日は一人でやってみるか?俺が見ててやるよ」
「…それなら、ぜひ」
「お!じゃあ明日もよろしくな」
「はい。お三方、おやすみなさい」
シャロンは、口元が緩むのを必死に押さえた。
「…全くこの子は」
ラグネスはため息をつく。




