第19話 もしベルゼがいなかったら…
「…イリス」
父親が手を伸ばし、少女を抱える。
彼らの傍にはイリアが助けた、魔族の女がいた。
「…」
彼らをジッと見つめている。
「そこまでだ!魔族め!」
騎士たちが到着、制圧しようとする。
「おい!早く拡散装置を!」
騎士がスイッチを押そうとした時だった。
「邪魔」
ドォン!!
魔力拡散装置が破裂する。
傍にいた騎士はそのまま吹っ飛んでしまう。
「き、貴様!!」
もう一人の騎士が剣を構えた瞬間。
「…うるさいなぁ…」
ドォン!!
ドォン!!
「ぐあああああ!!」
「ぎゃああああ!!」
今度は騎士たちの鎧が破裂し、二人はそのまま倒れてしまった。
「…さて」
魔族の女は次は彼らをにらみつける。
「ひぃっ!」
父親は怯えるが、それでも少女を離さない。
「…羨ましい」
「な…何がだ…!?」
「私の子供は…」
「死んじゃった…」
「…!?」
「あんたたち人間が、通報したせいで」
「私と夫は強制労働、子供は使えないからって」
「殺されちゃった」
「!!?」
「姿かたちは人間と同じなのにね…」
「ただ魔法が使えるだけで魔族魔族って…」
「…」
「なのにあんた達人間は…」
「被害者ヅラして、今も子供を庇ってるね」
「…」
「あ…」
「あはは…」
「あはははは…ははは!」
魔族の女の笑い声が響く。
「…あんたも味わってみる?」
「や…やめろ…」
「子供を殺された親の気持ち」
「やめてくれ…」
魔族の女が彼らに手をかざした時だった。
ドゴン!!
彼らと魔族の間に地面が壁のようにせり上がる。
「!!?」
「!?」
彼らの傍に、イリアが近づく。
「は、早くこっちに!!」
「す、すまない‥」
違う--
巻き込んだのはアタシだ…
「ベルゼ!!この人たちを」
「…分かった」
イリアは彼らをベルゼに引き渡す。
「あら?あんたはさっきの…」
「…」
「お礼がまだだったわね」
「ありがとう。助けてくれて」
魔族はイリアにニッコリと笑いかける。
「…なんで」
「ん?」
「…なんでこんな事が出来るの…?」
「…」
「こんなことしたって、どうにかなる訳じゃ…」
「どうでもいい」
「…え」
「どうでも良いの。夫も、子供も…こいつら人間に殺された」
「全部…無くなっちゃった」
「だけど…」
「あんたが助けてくれた」
「少しだけ希望が見えたの」
「だから思った」
「全部…壊してやるって」
「!!?」
「あんたも魔族なんでしょ?」
「…」
コクッと頷く。
「なら、手伝って。同じ魔族として人間に復讐しましょう?」
…
彼女は…
アタシだ…
村を滅ぼされた時の…
もしベルゼがいなかったら…
アタシもいずれ、こうなっていたのかもしれない…
「…出来ない」
だからこそ…
「あなたを」
一歩、踏み出す。
魔族のアタシが
「止める!!」




