第17話 その礼がしたいだけだ
ブレイクギア 2-12
「強がりか…力の差は理解したはずだ」
騎士はもう一度剣を構える。
「…性能が上がっても中身はこれか」
ため息交じりで言う。
「今回は時間がねえ」
「仕方ねえか」
そう言ってる時だった。
「何をぶつぶつ言ってる?」
シュウウウウウウウ!!!
騎士がもう一度高速移動で迫ってくる。
ブシュウ!!
ワイヤーが射出。
ガキン!!
フックが天井に引っかかる。
ブシュウウウウウ!!
蒸気音と共に上へと引っ張り上げられる。
騎士とは反対側へ回避。
ブゥオン!!
巨大な剣が空を切る。
再び距離を取る。
「こざかしい。逃げ回ってるだけでは他の騎士が来るぞ」
「…お前が無能だからな」
「…なんだと?」
「こんなネズミに手こずってるんだ。無能だろお前」
騎士が構える。
「無能かどうかは…」
グッと姿勢が低くなる。
「その身を持って確かめればいい」
シュウウウウウウウウウウウウウウ!!!
蒸気音とともに一気に加速する。
「…やっぱ無能だわお前」
ワイヤーを再度射出。
「む!?」
腕にワイヤーが絡む。
ブシュウウウウウウウウウ!!
ワイヤーが高速巻き戻る。
「ぬぁ!!」
加速に身体がついていかない。
「…終わりだ…」
グンッ!!
ワイヤーが引き絞られる。
「ぬぁあああああああああ!!」
勢いを利用し、背後の壁に向かってぶん投げる。
ガシャアアアアアアアアアアン!!!
騎士は制御できずにそのまま壁に激突した。
「…お前じゃ扱いきれねえよ」
「その機構」
上位騎士は動かない。
「ベルゼ!大丈夫!?」
「ああ。それよりも先を急ぐぞ」
訓練場を後にする。
-街の中-
「いたか!?」
「いや、見つからん!」
「くまなく探せ!絶対に逃がすな!」
ダッダッダッ!
「…行ったか」
息を潜めたまま、ゆっくり顔を出す。
街中は騎士が探し回ってる。
脱出は、まだ遠い。
「さて、どうするか」
「この分じゃ出口も封鎖されてるよね」
「ああ。だが」
「?」
「そいつ、やべえ」
「!?」
背負われている魔族の息は浅い。
「そんな…しっかりして…!」
背負ってる腕に思わず力が入る。
「いっそのこと医者の前に放置するか…?」
「でも、この街じゃ…」
「ああ。だが、時間もねえ…」
考えている最中だった。
「あ!」
「!?」
しまった、見つかった!?
「お姉ちゃん!」
「…え」
イリアに抱き着いたのは--先ほどの少女だった。
「ど、どうして…!?」
「あんたたち!早くこっちに!」
混乱している最中にさらに声をかけてきたのは父親だった。
「行くぞ」
「…でも…!」
「悩んでる場合か!」
ベルゼがイリアを強引に連れ出す。
「早く中に!!」
父親の用意した蒸気車の中へ滑り込む。
父親と少女も乗り込む。
「あんたら、この布をかぶってくれ!」
手渡されたのは大きめの布。
「荷物に乗じてここから出す」
「…ど、どうして…」
イリアは父親に問いかけた。
「…あんたは娘と僕を助けてくれた」
「その礼がしたいだけだ」
「!?」
目頭がまた…
何度目だろう…
「こいつを病院に連れていくことは出来ねえか?」
「…この街じゃ無理だ」
「…罪人…だから?」
イリアが恐る恐る問いかける。
「ああ。せめて別の街に行かないと」
「そんな…」
「僕に出来る事はあんた達を外に連れ出す事だけだ」
「…ああ。充分だ」
「…ありがとう」
イリアは静かに礼を言う。




