第16話 上出来だ…前見たやつよりも仕上がってる
「待って…!」
「どした?」
「他に捕まってる魔族がいるの」
イリアが指を向ける。
「…で?」
「助けなきゃ」
「ダメだ」
「!?なんで!!?」
「他人にかまってる暇はねえ」
「だけど…このままじゃこの人も!!」
「…おい」
「え…」
「俺たちもギリギリなの理解してるか?」
「そ、それは…」
「そいつを助けようとしたら、逃げ切れる保証は無え」
「それでもやるか?」
「…」
イリアは黙ってカギを拾った。
扉を開け、うな垂れている魔族を背負った。
「…はぁ」
「ダクトはもう無理だな」
ボソッと呟いた時だった。
「おーい!さっきの魔族はどうなった?」
廊下から別の騎士の声が聞こえる。
「イリア」
「…なに?」
「魔法潰しが発動してる今、お前は戦えねえ」
「…」
「その代わり」
「そいつはお前が責任持て」
「!!」
「…道は」
「開けてやる」
「おい!どうし…」
騎士がドアを開けた瞬間だった。
ブシュウウウウウウウ!!
激しい蒸気音と共に騎士を殴り飛ばした。
ガシャアアアアアアン!!
詰め所に轟音が鳴り響く。
「駆け抜けるぞ!」
「う、うん!!」
イリアは魔族を背負ってベルゼに着いていく。
「何だ!?どうした!!」
騎士達が集まってくる。
「おらぁ!!」
ガゴン!!
やってくる騎士たちを次々と殴り倒していく。
ブシュウウウウウウ!!
噴き出す蒸気が止まらない。
「あれ?思ったより楽勝じゃん」
「あいつら、まともに戦えねえからな」
「ど、どうして?」
「こんな狭い所で武器振り回せるかよ」
「…それなら最初から…」
「それでも数が多い。なにより」
「なにより?」
「めんどくせえ」
「ええ…」
「このまま一気に行くぞ」
駆け抜けていくと広い部屋に出た。
床には無数の傷跡が刻まれている。
騎士たちの訓練場だ。
そして重装備の上位騎士がいた。
「ここから先は通さん」
「大人しく投降すれば楽に殺してやる」
辺りを見る。
訓練道具が置いてあるだけで罠らしきものはない。
「…どうするの?」
「壊せば良い…と言いてえところだが」
「…時間がねえ」
ダッ!!
一気に距離を詰めようとする。
が
「ふん!!」
ブォン!!
騎士が巨大な蒸気剣で薙ぎ払う。
間一髪で避ける。
バキィ!!
訓練道具が枝のように折れる。
距離を取る。
「すばしっこいネズミだ」
オートナイツの方がまだ楽だ…
ただ壊すだけで良いからな。
「…だりぃな」
辺りをもう一度見回す。
「よそ見をしてるとはずいぶんと余裕だな」
シュウウウウウウウウウ!!!
上位騎士の足元から蒸気が吹き出し、一気に距離を詰める。
「!!」
蒸気による高速移動からの逆袈裟切りのような薙ぎ払い。
「ぐっ!!」
ガキィ!!
まともに入ってしまった。
ガシャアアアアアアアアアア!!
そのまま壁に激突してしまう。
「べ、ベルゼ!!」
騎士はイリアを睨みつけるように向く。
「どうだ?貴様は大人しく投降するか?」
「…くっ!」
せめて、この人だけでも-
「…はははは」
笑い声が聞こえる。
「見入っちまったぜ…その足の機構」
「上出来だ…前見たやつよりも仕上がってる」
崩れた瓦礫がガラリと落ちる。
ギシ、と何かが軋む音。
その奥で、ゆっくりと影が立ち上がった。
流れる血にかまわず、口元は笑っている。




