第10話 こいつ…思ってたよりヤバい奴だった…
騎士を尋問したあと、街へ向かっていた。
「やっぱこの近くの街だったな」
「…うん」
ちなみに、あのあと鎧はきちんと壊してた。
「ねえ」
「んぁ?」
「なんで付き合ってくれるの?」
「何が?」
「オルゴールの件。あんたからしてみれば、関係ない話じゃないの?」
「いんや?関係あるぜ?」
「え」
「だって、仕事だろ?」
「でも、お金貰えないよ?」
「関係ねえよ。一度受けちまった仕事は最後までやるもんよ」
「ま、向こうが受け入れてくれるかは知らねえけどな」
キシシと笑う。
「そこだよねぇ…」
「お?見えてきたぜ」
窓を見ると、遠くに石造りの街並みが見えてきた。
高い外壁に囲まれたその街に、あの親子がいるはずだ。
「とりあえず、顔隠しとくか。お互いな」
「そうだね…ごめん。アタシのせいで…」
イリアが申し訳なさそうに謝る。
「これ込みで雇ってんだ。別に大したことねえよ」
イリアは不思議そうにベルゼを見ていた。
どうして魔族である自分を嫌わないのだろうか?
「変なヤツ」
「…何か言ったか?」
「別に」
イリアはからかうように笑う。
「よし。ちと遠いが、ここで止めるぞ」
「うん」
「街に着いたらなるべく目立たないようにいくぞ」
「あれ?そういえば…門番どうするの?」
「いくら顔隠してもバレちゃうんじゃない?」
「問題ねえ。忍び込むからな」
「…は?」
「だから、忍び込むんだよ」
サラッと答える。
「…なんかさ…ベルゼってさ」
「んぁ?」
「こういうの慣れてない?」
「おう」
「肯定!!?」
「まぁ、色々やってるしな」
ニシシと笑う。
「色々って…あんた何かやらかしたの…?」
恐る恐る聞く。
「え?この前見てたろ?」
「な…何を…?」
「騎士とオートナイツ。ぶっ壊したろ?」
「…え?」
「同じような事、前にもしてたんよ」
「な、なんで…?」
「あいつらの装備ってさ、結構良い素材でな」
「…は?」
「節約のために回収してたのよ。あいつらの装備」
「あんた極悪人じゃないの!!」
イリアのツッコミが響き渡る。
「こんなバカでかい相棒に乗ってたら嫌でも声かけられるしな」
「あんまりしつこい連中はぶっ飛ばしてたんよ」
「…オートナイツだけは壊すだけにしてるけどな」
「そんなことしてたら、一部の街じゃお尋ね者扱いしてくるようになったなぁ」
「それ、扱いじゃなくて、しっかりお尋ね者でしょ…」
「ちょっと待って。じゃあアタシが加工してたのって…」
「全部じゃねえけど、ほとんどはあいつらの装備だな」
「…」
(こいつ…思ってたよりヤバい奴だった…)
(…逃げようかな…)
「よし。近くまで来たな」
見上げるほど高い外壁には、無数の配管やダクトがむき出しになっていた。
「ここからどう忍び込むの?」
「そうだな…こういう時は下水道とかが定番なんだけど」
「ぜっっっったい嫌!!!」
断固拒否するイリア。
「えー…じゃあ、正面突破でもするか?」
「バレたらダメなの分かってる!??」
「そんときゃそん時よ」
「無鉄砲にも程がある!!」
「ったく、しゃーねえな。ちょっと他探すか」
「…ほんと大丈夫かな、コイツ…」
外壁を回っている時だった。
「お!あったあった」
「どしたの?」
「喜べ。まともな侵入経路が見つかったぞ」
「そもそも侵入すること自体がまともじゃない」
ベルゼが指さした先には、ダクトがあった。
周りには誰もいない。
確かに忍び込むにはちょうど良いかも。
だけど、人間が飛んで入れるような高さではない。
「あんな高いところどうやって入るの?」
「ん?こいつで」
そう言って見せてきたのは右手に装着したツールギアだった。
ただし、この前のオートナイツとの戦いで使っていた奴だ。
「これって…ツールギアだよね…?」
改めて見るとツギハギだらけで、パッと見は別の機械に見える。
本来はただの整備用装着型ギアなのだが…
「おう。俺が改造して武器にしたんよ」
「それ、ツールギアでやる事?」
「蒸気機関いじって出力ブチ上げてな。ついでに補強もしてある。けっこう面白かったぜ」
「…まぁそれでどうするの?」
「ま、見てろって」
ブシュッ!!
射出されたワイヤーの先端に付いたフックが、ダクトの縁にガキンと引っかかった。
「よし。鉄球からフックに替えといて正解だったな」
「…まさか、それであそこに入るの?」
「?そうだけど?」
「結構高いよ…」
「しゃあねえな。じゃあ待ってるか?」
「それは…」
「んじゃあ、しがみついてろ。登ってくから」
「落ちるじゃん!絶対!」
「大丈夫だ」
「え?」
「お前がクッションになる」
「アタシが大丈夫じゃない!!」
「骨は拾っておいてやる」
「あんた畜生か!!」
「ま、冗談はさておき、さっさとしがみつけ」
「え…ホントに行くの?」
「ここでグダグダやってもしゃあねえだろ?」
「そ、そうだけど…」
「それに」
「?」
「オルゴール、届けるんだろ?」
「…」
「だからもうちょい踏ん張れ」
「…分かった」
イリアはベルゼにしがみついた。
目を閉じて。
力いっぱい。
ブシュウウ!
ギアの蒸気機関が唸り、ワイヤーが巻き戻されていく。
身体が浮いていく。
「ひゃああああ!!」
「…うるせえし…く…」
ぎゅうううううううううううう。
「…ぐるじぃ」




